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【特集】【緊急特集】 日銀会合は「現状維持」、綱渡りの政策運営と株式市場の行方

日本銀行

―日経平均は一時670円超高と急伸、ゆがみ大きく再修正は時間の問題の声も―

 日銀は17日から18日に開催された金融政策決定会合で「現状維持」を決定した。この発表を受け、急激な円安が進むとともに東京株式市場は買い先行となり、日経平均株価は一時670円超高と急伸した。日銀の決定に対して、市場ではさまざまな憶測が飛び交っている。市場はこの決定にどう反応したのか。

●為替は131円台の円安に振れる、自動車株など上昇

 市場の関心を一身に集めた日銀金融政策決定会合は18日、「現状維持」の結果が発表された。12月に続く政策再修正の思惑も強かっただけに結果発表を受け、為替市場では1ドル=131円台まで急激な円安が進行。株式市場でも、自動車株などに買い戻しが流入し、日経平均株価は600円を超える急騰を演じた。今回の日銀の決定に関して、市場関係者からは「12月に続いて今回も修正を行うと、2カ月連続となる。金融緩和政策が出口に近づいているとの見方に弾みをつけることになり、それは避けたかったのだろう。今月修正がなかったとすると、4月に任期満了を迎える黒田総裁の在任期間中は政策の修正はないのではないか」(金融アナリスト)との見方が出ている。

●展望レポートの物価上昇率見通しは2%以下にとどまる

 日銀は12月の日銀会合で長期金利の変動許容幅を従来の0.25%程度から0.5%程度に引き上げた。ただ、この金融政策の修正は「市場機能の改善に焦点を当てたもので、金融引き締めでは全くない」と黒田総裁は強調した。長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の政策には変更はないとされた。

 事実、1月の日銀会合での決定でも全員一致で現状維持が決まった。また、同時に発表された「展望レポート」での消費者物価指数(除く生鮮食品)の上昇率見通しは、2023年度は中央値1.6%、24年度は同1.8%とされた。2%物価目標には達せず大規模金融緩和の枠組みは維持される姿勢が示された。

●インフレ懸念到来で遠からず再修正の観測

 ただ、市場からは「金融政策の修正は時間の問題だろう。日本にもインフレの波は到達してきている。タイミングが延びただけで、金融緩和政策の修正は黒田氏の後任に任されたということだ」(金融アナリスト)との声は少なくない。すでに10年債の利回りは上限の0.5%を上回ることが頻発している。国債購入が膨らむなか、日銀の国債保有率は5割を超えている。資本市場からは社債の発行を見送る動きが伝わるなど、企業活動にも影響は出始めている。

 次回の日銀会合は3月9~10日に予定されており、黒田総裁にとっては最後の会合となる見込みだ。国債市場で海外投資家からの売りが膨らむ状況が続きそうだが、「それでも、米国の金利が再び大幅に上昇するなど大きな状況の変化がない限りYCC政策などの大枠は当面維持されるのではないか」(市場関係者)ともみられている。

●当面は輸出株と銀行株の綱引き状態も

 強弱観が対立するなか今後の展開に対する見方は分かれるが、いずれにせよ市場に日銀金融政策の修正思惑がくすぶり続けることは間違いない。当面は今回の金融政策の維持を評価して、円安期待からトヨタ自動車 <7203> [東証P]や日産自動車 <7201> [東証P]など自動車株を中心に輸出株を買い戻す動きと、中長期的視点から三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]や三井住友フィナンシャルグループ <8316> [東証P]など銀行株を買う動きとの綱引き状態が続くとみられる。

 目先的には20日に発表される12月全国消費者物価指数(CPI)の結果が注目される。展望レポートが示すように、来年度にかけ日本の物価上昇率が2%以下に落ち着くのか、日本がインフレ状態に入るのは、まだ当分先なのかが焦点だ。日銀による綱渡りの金融政策に金融市場が一喜一憂する展開はなお続くだろう。

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