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【市況】明日の株式相場に向けて=目先底入れ、ディープバリュー株に照準

日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
 きょう(4日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比776円高の2万6992円と急騰。全体の97%の銘柄が上昇するという滅多に見られない買い一色の展開だった。

 前日の当欄でクレディ・スイスの財務不安の思惑が浮上したにもかかわらず、株式市場の動揺が少なかったことについて触れた。売り方にとっては少なからず違和感を覚えたはずであるし、買い方にとっては10月のカレンダーに変わった途端、一条の光明が差し込んだ瞬間だったかもしれない。きょうの急騰相場はその続編である。市場関係者によると「(クレディ・スイス経営難の思惑については)本来であれば売り方の最終兵器的なネガティブ材料としてのインパクトを持つ。しかし若干タイミングがずれ、メディアの俎上に載るにしても時期尚早だった感が強い。ショートポジションがパンパンに膨らんだ状態の売り方にすれば、逆に足もとをみられる弱みとなり踏み上げ相場のスイッチが入ってしまった」(中堅証券ストラテジスト)とする。どういうことかというと、この問題は根が深い可能性はあるが、株式市場の見地から短期的には悪材料出尽くしのメカニズムが働いたということだ。

 欧州はエネルギー供給問題に伴うインフレ高進と、景気の急減速によっておそらく不良債権が急増傾向にあることは想像がつく。そうした中で、クレディ・スイスのCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の保証料率が過去最高水準に跳ね上がったとなれば、それは確かに事件である。しかし、時間的にはまだ余裕がある。たとえ火のないところに煙は立たずであったとしても、「今月とか来月にクレディ・スイスの経営が立ち行かなくなるほど酷い状態であるとは考えにくい」(同)。逆に、今の段階で世界的な大手金融機関の経営の厳しさにスポットが当たったことによって、世界の中央銀行がこれまでのように連鎖的に金融引き締めを強化して“利上げドミノ”を加速させることに躊躇するムードが芽生えた。思わぬ方向に波紋が広がり、結果的に株式市場にはプラスの思惑が働いたのである。

 そうしたなか、きょう日本時間昼過ぎに豪中銀の政策金利が発表され、マーケットの視線を釘付けにした。結果は0.25%の引き上げである。利上げは当然として、注目すべきはその幅である。もはや世界的に中銀の利上げは0.5%もしくは0.75%が当たり前という風潮にあって、通常モードの0.25%であったことが驚きを与えた。

 「クレディ・スイスのCDSとは直接的な関係性はないとはいえ、タイミングとしては暗示的であり、最近の各国中銀の過剰な利上げに翻意を促すかのような印象を与えた」(同)とする。そして、これには伏線があった。前日のウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、UNCTAD(国連貿易開発会議)が、FRBと他の中央銀行が利上げを継続することによって世界景気の後退を招くとし、事実上停止を要請したという趣旨の報道があった。そもそもFRBもECBもリセッション懸念は承知のうえで利上げを加速させる姿勢をみせているのだが、もし豪中銀に続く動きが今後相次ぐようであれば潮の流れは変わる。その可能性は高いとは言えないが、いずれにせよ、きょうは豪中銀の政策金利発表を受けて日経平均は後場一段高となった。上げ幅は770円強に達し、ほぼ高値引けで2万7000円台を指呼の間に捉えた。そして今回の下げ相場も一服となり、若干のオーバーシュートはあっても2万6000円を下限とするボックス圏往来のリフレイン相場は続く形となった。

 きょうは文字通りの全面高となったが、ここから個別に何を買っていくかは結構悩ましい。日経平均が2万7400円近辺を横に走る75日移動平均線を上抜くことを見込むのであれば、主力株の追撃でいい理屈だ。しかし、ここは下値リスクに対する防御的なスタンスも必要であろう。その場合はPBRが超割安圏にあるディープバリュー株の中から銘柄を探ってみたい。電子機器用ワイヤーハーネスのトップ企業であるオーナンバ<5816>、EV関連の一角であるカワタ<6292>、フジクラ系工業用品メーカーの藤倉コンポジット<5121>、アパレルOEM大手のマツオカコーポレーション<3611>、上下水道機器専業の前澤工業<6489>などは解散価値を大きく下回っており水準訂正余地が意識される。

 あすのスケジュールでは、10月の日銀当座預金増減見込みが朝方取引開始前に開示される。海外ではニュージーランド中銀が政策金利を発表する。9月のADP全米雇用リポート、8月の米貿易収支、9月のISM非製造業景況感指数などに市場の関心が高い。また、ボスティック・アトランタ連銀総裁が講演を行う予定。(銀)

出所:MINKABU PRESS

最終更新日:2022年10月05日 05時37分

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