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【特集】DXはバックオフィスから営業支援へ 「デジタルセールス」でバズる株 <株探トップ特集>

DXが話題に上り始めて久しいが、コロナ禍で直接対面を避ける傾向から営業支援を目的としたDXの導入が加速している。大手企業だけではなく、中堅・中小企業にも広がりをみせている。

―中堅・中小企業にも徐々に浸透、直接対面からデジタル技術を活用した営業スタイルへ―

 デジタルトランスフォーメーション(DX)が話題に上り始めて久しい。2018年9月に経済産業省の「DXレポート ~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」で提言されたことをきっかけに大企業を中心に導入が加速したDXだが、普及当初は中小企業は体力がないこともあって導入には消極的だった。ところが、新型コロナウイルスの感染拡大で従業員の出社がままならず、顧客への訪問が難しくなるなか、新しい仕事の仕組みを導入せざるを得なくなり、中堅・中小企業でもDXの導入が加速している。

 企業におけるDXの導入は、当初はコスト削減につながるようなバックオフィス系の利用が中心だったが、その流れが徐々に変わりつつある。前述のように、コロナ禍で顧客への訪問が難しくなったことに加えて、中堅・中小企業の貴重な商談の機会だった展示会が軒並み中止となったことから、リモート商談やバーチャル展示会など営業を支援するDXが増えている。

 こうした流れは、新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着きを見せ始め、ウィズコロナを迎えるなかでも変わらず、営業のDX化が加速している。セールスのデジタル化に関連する銘柄は今後もビジネスチャンス拡大が続きそうだ。

●コロナ禍で営業DX導入が加速

 営業のDX、いわゆるデジタルセールスとは、文字通りデジタル技術やITツールなどを活用して営業活動を行うマーケティング手法のこと。

 以前の営業スタイルは顧客の元へ足を運んで直接対面し、商品・サービスの説明や提案などをする方法が一般的だったが、インターネットをはじめとするデジタル技術の進歩や、コロナ禍で対面するのが困難になり、ZoomなどのWeb会議ツールが普及した。こうしたデジタルツールは、顧客のデジタルリテラシーの問題や、画面越しでは相手の反応がわかりづらいといった点が指摘される一方、上手に取り入れた企業からは移動時間がなくなったことや、情報が提供・共有しやすくなったことで効率が上がったという声も聞かれる。導入するツールもZoomだけではなく、CRM(顧客関係管理システム)やSFA(営業支援システム)、MA(マーケティング・オートメーション)など多岐にわたるようになり、更にはインサイドセールス(非対面で行う営業活動)などの活用も広がっている。

 特に、足もとはコロナ禍で急速に悪化した業績が回復に向かうなか、中堅・中小企業もコスト削減から販売拡大へと軸足が移る可能性が高い。デジタルセールスは、まだ新しいビジネスであることから、個々のツールではなく、デジタルセールスそのものの国内の市場規模を示す具体的なデータはないが、急速に市場規模が拡大するのは間違いなさそうだ。

●デジタルセールスの注目銘柄

 デジタルセールスにおいて注目したい銘柄は、Sansan <4443> [東証P]だ。法人向け名刺管理サービス「Sansan」が主力だが、コロナ禍により名刺交換機会が減少するなかにあって22年5月期の売上高は前の期比26.2%増の204億2000万円に増加した。サブスクリプション型のビジネスモデルでストック収入が増加していることなどが要因だが、同社の強みは名刺管理サービスから営業を支援するデータサービスを提供する営業DXサービスへ転換を図っているところにある。今年6月からは帝国データバンク社との連携強化、8月からはメール接点情報の可視化なども始まり、更なる強化を実施。前期は成長投資により営業減益となったが、23年5月期は調整後営業利益で前期比25.5~76.3%の大幅増益を見込む。

 ブリッジインターナショナル <7039> [東証G]は、日本におけるインサイドセールスのリーディングカンパニーの一つ。以前は、インサイドセールスといえば新規顧客の開拓から見込み顧客との関係の醸成が主な業務だったが、コロナ禍でオンラインによる商談が普及したこともあり、クロスセルやアップセルなども行うケースが増え、市場が拡大している。同社でもインサイドセールス事業が2ケタ成長を続けており、6月中間期の営業利益は前年同期比47.8%増の5億4500万円に伸長。22年12月期通期では同6億7200万円(前期比4.3%増)を見込む。

 アイドマ・ホールディングス <7373> [東証G]は、自社開発の営業DXツールを活用し、営業戦略の立案からマーケティングまでを提供する営業支援サービスが主な事業。顧客企業へのヒアリングをもとに営業先リストや営業トークを作成した後、同社が電話営業などを代行、効果の高い営業手法を検証し、顧客に納品する。足もとでは、オンラインセールスの手法を必要とする多くの中堅・中小企業からの発注を受けて前期第3四半期累計(21年9月~22年5月)の受注件数は前年同期比48.5%の増加となり、営業利益は14億7400万円(前年同期比2.1倍)に拡大。22年8月期通期業績予想も上方修正され同15億5000万円(前の期比86.8%増)を見込む。

 ナレッジスイート <3999> [東証G]は、中堅・中小企業の営業活動を支援するクラウドサービス「Knowledge Suite」が主力製品。同サービスは、営業活動における商談管理のためのSFA、顧客管理のためのCRM、社内コミュニケーション活性化のためのグループウェアを、シームレスに統合したクラウド型統合ビジネスSaaSで、契約企業件数が順調に増加。KPI(重要業績評価指標)の一つである新規月次経常収益も8月は220万円(前年同月比13.3%増)と順調に推移しており、22年9月期営業利益は1億1700万~1億3600万円(前期1億800万円の赤字)を見込む。

 イノベーション <3970> [東証G]は、企業のIT担当や人事・総務担当が必要な製品・サービスを検討できるWebサイトを運営するほか、掲載企業へ見込み顧客情報を提供するITソリューション事業を展開する。主力のMAツール「List Finder」は20年3月期より、それまでのアカウント数拡大戦略から収益力強化に向けた顧客満足度最大化戦略に転換したことで、顧客単価の上昇による売り上げ、利益の拡大に成功している。23年3月期は営業利益8億3000万円(前期比6.7%増)と最高益更新の見通しだ。

 このほか、MAツール「SHANON MARKETING PLATFORM」を展開し、最近では子会社のジクウの展開するメタバースイベントプラットフォーム「ZIKU」も注目されているシャノン <3976> [東証G]や自社で運営するコンタクトセンターでの電話受発信、直接訪問、Webコンタクトなどを通じて顧客企業に代わってセールスを行うダイレクトマーケティングミックス <7354> [東証P]などにも注目したい。

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