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【特集】OPECプラスの価格抑制力は減退、問われるその将来像 <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司
 今週は3日に石油輸出国機構(OPEC)プラスの閣僚会合が行われる。コロナショック後に始まった過去最大規模の協調減産の巻き戻しが8月で完了することから、9月以降の生産調整の枠組みのほか、OPECプラスの今後、米国の増産要請に応えるのかどうかなど、注目点は多い。

●実質的効果がない生産目標

 OPECプラスの実際の生産量は目標水準に対して日量300万バレル程度未達となっており、生産目標を調節するこれまでのやり方は既に形骸化している。世界的な投資の矛先は再生可能エネルギーに向いており、上流から下流まで投資が不足し石油市場が縮小に向かう公算であるため、増産が困難な国はさらに増えていくだろう。

 努力目標でしかない生産目標を引き上げても実質的な生産量が増えないことは明らかであり、主要産油国が軌道修正する可能性はある。ただ、あまり意味のなくなっている生産目標を引き上げ、努力する姿勢を示すだけでも、不平不満をもらす消費国をなだめる効果はあり、形骸化している生産目標を維持する意義は残されている。

 米国の増産要請に対する当たり障りない対応として最も無難なのが、生産目標の引き上げである。実質的な生産量がどれだけ増えるのか不透明だが、努力はしましょうという応じ方だ。ほぼ口先だけで米国の要求をかわすことができるなら、産油国にとって容易い仕事なのではないか。報道によると生産量の据え置きか、小幅な増産で主張が分かれているようだ。

 市場参加者はOPECプラスの増産余力があまりないことを知っている。8月のサウジアラビアの生産枠は日量1100万バレルであり、この水準に到達したのは過去2回しかない。消費国におもねるかどうかが協議の焦点となっている一方、形式的な生産枠すら引き上げる余地はあまりない。OPECプラス全体で、日量200万バレル程度が実質的な増産の限度だろう。また、生産余力がある産油国はサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)、クウェートなどごく一部であり、これまでのようにOPECプラスに参加しているすべての産油国の生産目標を引き上げることに意味はないが、それでも従来のやり方を繰り返すのだろうか。

●存在意義が薄れゆくOPECプラス

 最も注目したいのは、OPECプラスの将来像である。脱炭素社会の実現に向けて再生可能エネルギーへの投資が拡大するなかで石油市場への投資は細っており、 石油価格の安定というOPECプラスの課題は達成困難となっていくに違いない。再生可能エネルギーを軸とした社会経済が出来上がるまで、供給不足による石油価格のさらなる上昇は避けられず、価格安定の番人であるOPECプラスの存在意義は薄れていくのではないか。

 ただ、化石燃料は再生可能エネルギーに取って代わられる運命にあるのかもしれないが、西側が中心となって目指すクリーン・エネルギー社会は実現性が不透明だ。既に石油価格が高騰し、景気が悪化している。消費者の不満が高まり、不安定化する国が少なくない。OPECプラスの価格抑制能力は失われる一方だが、過渡期にあるエネルギー市場で、カルテルはどこに存在意義を見出すのだろうか。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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