【市況】明日の株式相場に向けて=米株高もドル円相場に死角あり
日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
世界の耳目を集めたFOMCだったが、政策金利の0.75%引き上げは読み筋通りでほぼ100%に近い形で市場は織り込んでいた。問題は会合後のパウエルFRB議長の記者会見だったわけだが、これがややハト派的というか、秋口以降に利上げをペースダウンさせる可能性が示唆されたとの見方で、米国株市場はハイテク株を中心に大きく買い優勢に傾いた。ナスダック総合株価指数は4%を超える上昇で今年最大の上昇率を記録、再び1万2000の大台を回復した。更に、半導体銘柄で構成されるフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)に至っては4.8%近い上昇率でナスダック指数のそれを大幅に上回った。
こうなると、きょうの東京市場でも2万8000円大台ラインを通過点とするビッグウェーブに思いを馳せるところ。ボックス上限突破にチャレンジする好機にも見えたが、残念ながらそうは問屋が卸さなかった。朝方に2万8000円をわずかに上回ったが、そこで推移していたのはわずかに3分間。踏み込めず片足を乗せた程度で終わり、その後は漸次下値を切り下げる展開で午前10時を境に急降下、あっという間にマイナス圏に沈んだ。
外国為替市場でドル売り・円買いの動きが加速し、これに連動する形で日経平均も下値を試す展開を余儀なくされた。昨今の東京市場は米株市場とのデカップリングが取り沙汰されているが、その代わりにドル円相場とは鉄壁の連動性を持っている。きょうは為替の円買いとほぼ同じ時間軸で日本株売りのスイッチが入っており、AIアルゴリズムによる典型的な売り仕掛けの色が濃い。「米国の長期金利が頭打ちの状態で、これ以上は日米金利差が広がらないというシナリオでドルが売られ、日本株もボックス上限付近で売りやすかった」(中堅証券ストラテジスト)とする。ただ、ドル円相場は1ドル=135円台を下回ることなく反転し、日経平均も歩調を合わせてバランスを立て直した。アジア株市場が総じてしっかりした動きをみせていたことも幸いした。
個別株物色の方向性としては、全体指数がボックス上限近辺で上値が重くなることを想定すれば、中小型材料株に資金が向く可能性が高まる。最近のマザーズ指数の動きにも、目を向けるべき方向が暗示されている。旧マザーズ銘柄は信用評価損益率の実態をみても分かるように過熱感は皆無といってよいが、マザーズ指数の方は戻りトレンドが鮮明で、直近では25日・75日移動平均線のゴールデンクロスがほぼ達成された形だ。旧マザーズ銘柄に特化する必要はないが、主要株価指数と連動性の低い中小型株に照準を合わせるほうがチャンスをつかみやすい。いうまでもなく、決算発表シーズンは決算開示直後のギャップアップ・ギャップダウントレードに関心が集中する傾向があるものの、売りも買いも反射神経で勝負するような“居合抜きトレード”は参加者も限定的で、ケガをする確率も高くなる。
目先マークしておきたいところでは、新型コロナウイルス関連の一角であるPHCホールディングス<6523>やイメージ ワン<2667>。また、同じくコロナ関連で今月上旬にも取り上げたアゼアス<3161>は、直近にきて荒い値動きながら800円まで急騰する場面があり、引き続き着目したい。このほかIT人材関連で今期収益の急拡大が見込まれているハイブリッドテクノロジーズ<4260>が強い足。また、6月以降複数回取り上げた高田工業所<1966>も原発やパワー半導体など材料性豊富で好チャートを形成中だ。
あすのスケジュールでは、日銀の金融政策決定会合の主な意見(7月20~21日開催分)、6月の失業率、6月の有効求人倍率、6月の商業動態統計、6月の鉱工業生産(速報値)、6月の住宅着工統計、6月の自動車輸出実績、7月の消費動向調査など。なお、東証グロース市場にエアークローゼット<9557>が新規上場する。海外では4~6月期台湾GDP、4~6月期独GDP、4~6月期ユーロ圏GDP(いずれも速報値)、7月のユーロ圏消費者物価指数、7月の独失業率、6月の米個人所得・消費支出、7月の米消費者態度指数(ミシガン大学調査・確報値)など。国内主要企業の決算発表ではデンソー<6902>、商船三井<9104>、コマツ<6301>、富士通<6702>、日立製作所<6501>、ソニーグループ<6758>、三井住友フィナンシャルグループ<8316>、JR東日本<9020>など(銀)
出所:MINKABU PRESS