【市況】明日の株式相場に向けて=2000年のITバブル崩壊に似た景色
日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
米国株市場では日々乱高下が当たり前のようになっている。前日はNYダウが一時500ドル強の下げをみせたが、その後は例によってショートカバーでマイナス幅を急速に縮小、小幅ながらプラス圏で着地した。しかし、ハイテク株への売りは執拗であり、リバウンドはあっても単発的で下降トレンドからの脱出は今のところイメージできない。
2000年のITバブル崩壊に似た景色にも見える。前日に投資家心理を不安に陥れたのは、SNSのスナップ<SNAP>が明らかした業績見通しと、その後のマーケットのヒステリックな反応だ。4~6月期の売り上げが会社側の計画に届かない可能性が高いと発表したことが嫌気され、売りの集中砲火を浴びた。時間外で売られていたのでその分ショックは緩衝されたはすだが、それにしても1日で43%の暴落というのは驚かされる。ちなみにスナップの株価は昨年9月につけた高値から、8カ月あまりで85%の下落、時価総額は6分の1以下に減少した。このほかでも、例えばビデオ会議プラットフォームのズーム<ZM>は、この日は反発に転じていたものの、“コロナ特需”でつけた20年10月の高値から直近安値まで87%の下落で、ほぼスナップと並ぶ苛烈な下げを強いられている。
では、GAFAMは別なのかと言えば決してそんなことはない。この日はスナップ暴落にツレ安し7.6%安に売られたメタ・プラットフォームズ<FB>だが、やはり昨年の9月に最高値を形成しており、今はそこと比較して半値以下となっている。アマゾン・ドット・コム<AMZN>は昨年の7月と11月にダブルトップを形成し、年初から急降下、時価は高値から46%の下落とやはり半値水準に近い。市場では「GAFAMに象徴される成長株に怒涛の投資マネーが流れ込んだ経緯は、1970年代のニフティ・フィフティ相場の再来と言われた。しかし、今年になってそれが崩壊したことは疑いようがない」(ネット証券アナリスト)という声が聞かれる。
ネット関連株は世界的なデジタルシフトの流れのなかでモンスター化し、軒並み時価総額を膨張させた。株価の急騰も「収益が伴っているからバブルではない」という論調が大手を振ったが、借金をして成長投資や自社株買いに充てる、いわば「高ROE礼賛」的なモデルは超低金利環境ががっちりと脇を支えていたからこそ成立していた。しかし、FRBやECBなど世界の中央銀行の行き過ぎた緩和政策が規格外のインフレというモンスターを生み落とし、それを駆逐するために今は待ったなしで180度の政策転換を余儀なくされている。ニフティ・フィフティが金利上昇局面で霧消した記憶が今、米国株市場を震撼させている。空売りのショートカバーによるリバウンドは随所で繰り返されると思われるが、引き潮には違いなく、依然として長期で資金を寝かせておくような相場環境にはない。
東京市場でも、大きく買われた銘柄はほぼ確実に売り仕掛けの対象となる。Shinwa Wise Holdings<2437>のような外資系証券経由の空売りで乱気流に揉まれながら、下値を切り上げるような稀有な銘柄もあるが、基本的に強い銘柄については今は観賞用にとどめておく方が無難である。当面は“巨大仕手株”である東京電力ホールディングス<9501>の動向に注目。同社株が25日移動平均線をサポートラインに、ロングランの上昇相場を形成できるかどうか。材料株相場の行方を占う試金石となりそうだ。
あすのスケジュールでは、4月の企業向けサービス価格指数が朝方取引開始前に日銀から開示されるほか、午前中に40年物国債の入札も予定される。海外では、韓国中銀の金融通貨委員会の結果発表、トルコ中銀の政策金利発表、1~3月期の米実質GDP改定値、4月の米仮契約住宅販売指数などが注目される。また、中国電子商取引最大手のアリババ集団<BABA>の1~3月期決算発表にもマーケットの関心が高い。なお、インドネシア市場とスイス市場は休場となる。(銀)
出所:MINKABU PRESS