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【市況】明日の株式相場に向けて=市場の思惑映し出す、東電HDの突発人気

日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
 週明け11日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比164円安の2万6821円と反落。なかなか一筋縄ではいかない地合いである。きょうは朝安後に下げ渋り、一時は日経平均がプラス転換して2万7000円にワンタッチする場面もあったが、そこが戻り限界となった。東京市場は、3月中旬から下旬にかけて目の覚めるような“三空”形成の大出直り相場を演じたわけだが、買い戻しが一巡したことで4月新年度相場では思いのほか上値が重くなっている。

 既に三空のうち3月22日と23日に開けた2つのマドは埋めてしまった状態で、25日移動平均線との上方カイ離も解消した。行き過ぎた振り子は戻るのが道理だが、仮にここから25日線を下抜け、3月17日に開けたマドを埋めに行くところまで振り切るような展開となった場合、投資家の脳裏に大底としてインプットされていた3月9日のザラ場2万4681円の安値も再び視界に入りかねない。4月後半はひとつの正念場である。

 個別銘柄では東京電力ホールディングス<9501>が大商いで大陽線を立て、マーケットの注目を浴びた。岸田首相が電力需給の逼迫を回避するために、脱炭素の効果が高い電源として再生可能エネルギー原発 を挙げており、これが思惑を呼ぶ形となった。市場関係者によると「柏崎刈羽原発6号機と7号機の再稼働がシナリオとして現実味を帯びていることで、東電HDは売買代金を見ても分かるように電力株の中でも注目度が高い。ただし同社の場合は、無配企業で賠償特損もあり、合理的に考えればファンダメンタルズへのアプローチから買える対象ではない。そこら辺は百も承知で個人投資家を中心とした投機資金が流れ込んでいる」(ネット証券マーケットアナリスト)という。

 このほか中部電力<9502>、関西電力<9503>などきょうは電力株が一斉高で、業種別上昇率でも群を抜いていた。メガソーラーを中心に再生可能エネ関連株にも物色の矛先が向き、ウエストホールディングス<1407>やレノバ<9519>などが強い動きを示したが、「再生可能エネ関連はいったん大相場を出してしまった後で、当面は戻り売りニーズが強い。本音は原発に対する思惑が株価の材料としてもインパクトが大きいとみられている」(中堅証券ストラテジスト)という声も聞かれる。

 原発関連株では木村化工機<6378>、助川電気工業<7711>に物色の矛先が向いているほか、日本製鋼所<5631>も買い人気を集めた。このうち助川電気は直近、核融合関連でも人気となった経緯があり、業績変化率が高い点を考慮して中期的にも注目できそうだ。

 もう一つ今の相場で投資マネーを吸引しているのがゴールド関連、いわゆる金市況の上昇を原動力とする銘柄群だ。金はインフレヘッジとしての役割に加え、ウクライナ情勢など地政学リスクが強く意識される世界で「有事の金」としても脚光を浴びやすい。特に最近ではウクライナ有事に絡むロシアへの制裁で、バイデン米大統領がロシアの中央銀行が持つドル建て資産を事実上凍結することを発表、これが中国など米国と対立関係にある国がドルを金に換えるという投資行動を誘発しているようだ。政治的な思惑からも金が買われる土壌が醸成されており、株式市場でも改めてテーマ買いの一翼を担う可能性がある。

 この流れに乗るならば、一番分かりやすいのが金のETFで、WisdomTree 金上場投資信託<1672>、SPDRゴールド・シェア<1326>、純金上場信託(現物国内保管型)<1540>などがあるが、いずれも同じような波動で高値圏をまい進している。この中で、市場関係者のお薦めは純金上場信託で、「国内の金先物価格から評価した現在の理論価格を示しているが、海外ではなく国内の金とリンクさせているということが安心感につながる」(ネット証券マーケットアナリスト)という。今の株式市場は、突っ込み狙いの吹き値売りが実践的な手段として求められるが、金のETFについては中長期ホールド前提の順張りが基本戦略となる。

 あすのスケジュールでは、3月の企業物価指数、5年物国債の入札など。また、IPOが1社予定されており、グロース市場にサークレイス<5029>が新規上場する。海外では、4月のZEW独景気予想指数のほか、3月の米消費者物価指数(CPI)、3月の米財政収支などにマーケットの注目度が高い。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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