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【特集】ウクライナ危機で原油急騰、第3次石油ショックのシナリオを探る <株探トップ特集>

原油価格急騰で1970年代に起こった石油ショック再来を懸念する声も出ている。市場には当面は原油価格高止まりを予想する見方が多く、石油関連株に投資妙味が膨らんでいる。

―WTIは100ドル前後で高止まりの公算、エネルギー安保でLNG関連注目―

 原油市場の動向に市場の視線が集中している。ウクライナ危機を背景に、 米原油先物相場のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)価格は一時1バレル=130ドル台まで急騰した。米国のロシア産原油の禁輸を契機に原油価格は急伸したが、その後はいったん調整局面に入ったものの、足もとでは再び高値圏に切り返してきた。市場からはウクライナ危機の展開次第では「第3次石油ショックも起こり得る」と警戒する声も聞こえる。原油市場の動向を探った。

●米国によるロシア産原油禁輸観測で13年8ヵ月ぶり水準に上昇

 足もとで原油相場の強調展開が続いている。21日の米原油先物相場はWTIの4月限が前日比7.42ドル高の1バレル=112.12ドルと上昇した。昨年末時点に70ドル台半ばで推移していた原油相場は今月6日には130.50ドルと2008年7月以来、約13年8ヵ月ぶりの高値水準に上昇。同年同月に記録した史上最高値の147.27ドルに接近した。

 原油価格は、米国などでの新型コロナウイルス感染者数のピークアウトによる経済再開に伴う需要増の期待と需給引き締まり観測からもともと年初から強含んでいた。そこに石油大国のロシアがウクライナに軍事侵攻したことから、原油価格は一気に急騰。特に、米国によるロシア産原油の禁輸観測を契機に原油価格は130ドル台まで上昇した。

 ただ、その後、原油価格は米シェールオイルの増産観測やアラブ首長国連邦(UAE)がOPEC加盟国に増産を促しているとの報道もあり一時93ドル台まで下落した。しかし、21日には、欧州連合(EU)がロシア産原油の禁輸措置を発動するかを検討すると報じられたこともあり、WTI価格は112ドル台まで値を戻すなど激しい値動きが続いている。

●第1次・第2次石油ショックとの類似性も

 ロシアは原油で世界3位の生産量を誇る。その石油大国を巡り原油価格が急騰する動きは、1970年代に発生した第1次と第2次の石油ショックを彷彿させている。第1次石油ショックは第4次中東戦争、第2次石油ショックはイラン革命を契機に発生したが、今回の原油急騰はロシアによるウクライナ侵攻を背景としており類似性が見て取れる。果たして、第3次石油ショックはあるのか。

 フィリップ証券の笹木和弘リサーチ部長は「今後のウクライナ情勢の行方など動向次第では原油価格は一段の上昇もあり得る。しかし原油価格の上昇はロシア以外の産油国の増産を誘発することも予想される。ここから一段の原油高はあり得るが長続きはしないのではないか」と予想する。

 また、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの芥田知至主任研究員も「基本的に原油価格は高止まりが予想される」と指摘。「EUの経済制裁などの動向次第では一時的に147ドルの史上最高値を超えることもあり得る。しかし、年後半にかけては値を下げてウクライナ侵攻前より少し高い水準の100ドル前後で推移するのではないか」とみている。

●ロシアによる報復措置などあれば200ドル近辺まで上昇も

 第3次石油ショックのリスクに関して、現在は70年代と異なり石油に対する経済の依存度が低下している。このため足もとの原油価格はまだ石油ショックと呼ぶまでには至っていない。ただ「リスクシナリオが現実化した場合、WTIが200ドル近辺まで上昇し石油ショックが再来する可能性もある」と芥田氏はいう。

 そのリスクシナリオとは何か。「現時点では可能性は小さいが、ひとつはロシアと米国が全面対決するような展開となること。もうひとつはウクライナに敷設されている石油・天然ガスのパイプラインが破壊されるようなこと。最後のひとつは、欧米に対する報復措置としてロシアが天然ガスや石油の輸出禁止措置を打ち出すことだ」と同氏は指摘する。今後、このような展開から石油ショックに向かう恐れがないかを注視しておく必要がある。

●INPEXなどに業績増額期待が膨らむ

 原油関連での当面の注目イベントは、24日のバイデン米大統領の訪欧、31日のOPECプラス会合などとなる。不透明要因は多いが、いまのところ原油価格が大きく下落する要素は少なく、高止まりする公算が大きい。その場合、まず注目されるのはINPEX <1605> や石油資源開発 <1662> など産油株だ。例えば、INPEXの22年12月期業績増額期待は強く、株価は2000円乗せを期待する声が強い。ENEOSホールディングス <5020> や出光興産 <5019> 、コスモエネルギーホールディングス <5021> など元売り大手にも増額期待が出ている。

 また、エネルギー安全保障の観点から脱ロシア依存を進める欧州を中心に、LNG(液化天然ガス)絡みの需要が増えることは確実視されている。LNGプラント関連の日揮ホールディングス <1963> や千代田化工建設 <6366> [東証2]、東洋エンジニアリング <6330> 、日本郵船 <9101> や商船三井 <9104> 、造船の三菱重工業 <7011> や川崎重工業 <7012> 、LNGタンクのトーヨーカネツ <6369> 、それにLNG船関連のサノヤスホールディングス <7022> などが注目されそうだ。


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