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【市況】【植木靖男の相場展望】 ─大型バリュー株復活の兆しみえる!

株式評論家 植木靖男

「大型バリュー株復活の兆しみえる!」

●2つの悪材料で警戒ラインを一気に下抜ける

 激動の1年を示唆するような新春相場である。昨年の大納会に向けて掉尾の一振がみられず市場は冷え込んでいたが、大発会は予想だにしない日経平均株価500円強の急騰で一挙に投資意欲が覚醒したかにみえた。

 だが、その後、米国の早期QT(量的引き締め)が警戒され週末にかけて急落し、大納会の安値をも下回ってしまった。

 ところで、一昔前までは経験則から年明け後3営業日の騰落が3日連続高、あるいは2勝1敗ならその年は陽線となるとされた。その確率は85%以上といわれていたが、新年は辛うじて2勝1敗となった。果たしてどうか。

 さて、いま市場の材料は2つ。1つは米国QTすなわちFRB(米連邦準備制度理事会)のバランスシート縮小、もう1つはオミクロン株の急激な拡大である。前者はインフレへの警戒もあって米国ではFRBがテーパリング(量的緩和の縮小)をこの3月にも終了し、その後は利上げを実施するといったシナリオだが、問題はいつQTを始めるのかだ。株価への影響を小さくするために1~2年時間をかけるのか、またその内容もどういう形をとるのか、まだはっきりしないことが多い。

 市場が最も嫌がるシナリオは、テーパリングの終了と同時に利上げかつQTが開始されることだ。これはFRBが極度にインフレを警戒しているケースだ。このシナリオでは、その時点から金利が急変するはず。その影響として、ドルを大量に借りている新興国の市場が打撃を受ける。そして、世界的に株式市場も動揺することは必至だ。

 一方、オミクロン株だが、欧米ではさらに感染が拡大しても「経済は別」と割り切ることもできるが、日本の場合はそうはいかない。結果として、景気への影響から株価にとって大きなマイナスとなる。

 現在、マーケットを覆っている暗雲である米国QT、オミクロン株の影響を株価が吸収するには1~2カ月が必要だ。この間はそれらへの思惑で一喜一憂することになる。

 いずれにしても、ここへきて一挙に警戒ラインを下に抜けた株価だけに、戻りに入るのは容易ではない。今回の下げに対する戻りの肝となる水準は結構高く、2万9100円処だ。この辺りが目先の戻りの限界か。

 当面は基本的には2万8500円を巡っての売り方、買い方の攻防戦が続くと予想される。あえて、今後の株価のパターンを予測すると、仮に下値があっても、1~2カ月先にはまた
いまの水準に戻っているとみたい。つまり、この間の最安値がひょっとして23、24年における最安値になる可能性もあろう。大胆すぎる予想かもしれないが、期待したい。

●好業績&増配期待の大型バリュー株に着目

 さて、当面の物色だが、昨年後半からじわりと主役の交代が進んでいるようにみえる。明確ではないが、金利上昇につれて成長株の上昇ピッチが鈍くなり、逆にバリュー株がじわじわと水準を高めつつあるのが見て取れる。特に年替わりからその傾向が強まっている。例をあげると、週末7日にはファーストリテイリング <9983> が11日連続安となる一方、三菱重工業 <7011> がこの乱高下相場の中で4日連続高となっていることが象徴的といえよう。

 ということで、今回は大型バリュー株から、まず日立製作所 <6501> に注目したい。PER11.8倍と割安で、22年3月期の連結営業利益は前期比46%増と大幅増益へ。次いで三井化学 <4183> もPER6.2倍、利回り3.4%で、22年3月期連結営業利益は86%増、10円増配を見込む。最後に三菱重工業だ。22年3月期は連結経常利益が2.8倍に拡大し、15円増配の見通しで、PER9.9倍、利回り3.1%。

 これらはいずれも大型バリュー株で、三井化学と三菱重工は今期増配としている。日立は未定としているが、10円増配の115円配を予想する向きもある。先行き不透明な環境下でも増配するのは経営に自信のある証しだ。

2022年1月7日 記

株探ニュース

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