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【特集】2022年コモディティ市場を展望する <新春特別企画>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行

―原油は景気回復期待を追い風に堅調も、金は金融引き締めが圧迫要因に―

 2022年のコモディティ(商品)市場は、景気回復見通しが強まり、各国中銀が利上げに動くことから、逃避買いが入っていたが弱気に転じ、工業用需要の多い 原油 プラチナが堅調に推移すると予想される。

 2021年後半は、新型コロナウイルスの感染拡大によるロックダウン(都市封鎖)や制限措置を受けて景気の先行き不透明感が広がった。しかし、オミクロン変異株は感染力が強いが、入院や重症化のリスクが低下したことで先行きに対する楽観的な見方が強まっている。ワクチンや承認された飲み薬などが効力を発し新型コロナがインフルエンザ並みになるようなら、景気回復期待はさらに強まるとみられる。

 ただ、半導体不足や労働者不足、サプライチェーン(供給網)の混乱による高インフレは続く見通しであり、これらがリスクとして意識され金が買い直される場面もあるとみられる。また、地政学的リスクも焦点である。中国の海洋進出による各国との衝突の行方、ウクライナを巡る西側諸国とロシアの対立、イラン核合意の再建交渉の行方などを確認したい。

●コロナ弱毒化で景気回復期待強まる

 南アフリカと英国の研究でオミクロン株はデルタ株と比べて入院や重症化のリスクが低いことが示された。英国は新たな制限措置は導入しないとしており、今後、ワクチンや飲み薬でオミクロン株を抑え込めるようなら、先行きに対する楽観的な見方が強まるとみられる。ただ、感染拡大は続いており、各国の制限措置の行方を引き続き確認したい。

 制限措置が解除され景気回復期待が強まれば、コモディティの工業用需要が増加し、原油の買い意欲が強まるとみられる。ただ、オミクロン株の感染拡大で欧州の新規感染者が過去最多を更新し、当面は航空会社の欠航などで供給過剰が予想されている。石油輸出国機構(OPEC)は増産を抑制しているが、景気回復が確認されれば増産追加を決定し、上値を抑える要因になるとみられる。一方、プラチナは供給過剰見通しが上値を抑える要因だが、半導体不足が緩和され、自動車生産の増加につながると、堅調に推移することになろう。

 米連邦準備理事会(FRB)は昨年12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で量的緩和の縮小(テーパリング)加速を決定し、今年3月に終了する見通しとなった。また、年末までに0.25%ポイントの3回の利上げを実施するとしている。欧州では欧州中央銀行(ECB)が資産買い入れを継続し、景気を支援する方針を示したが、イングランド銀行が利上げを実施しており、各国の中央銀行は金融引き締めの方向にある。利上げや金利上昇を受けて金ETF(上場投信)から投資資金が流出すると金の圧迫要因になる。

●地政学的リスクの行方も焦点

 地政学的リスクでは中国、ウクライナ、イランが焦点となる。中国の海洋進出に対し、米軍が南シナ海で「航行の自由作戦」を実施した。また、中国の新疆ウイグル自治区の人権侵害を受け、米国でウイグル強制労働防止法が成立した。中国は香港で民主化運動を弾圧しており、台湾への圧力を強めれば、西側諸国との対立が強まるとみられる。

 ロシアは北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大をけん制するため、ウクライナ国境付近で軍を増強した。ただ、米国と協議する見通しであることが伝えられ一部兵士を撤収させており、ウクライナ侵攻のリスクは低下した。

 イラン核合意の再建交渉も当面の焦点である。欧州は数週間で妥結を目指すとしている。また、イランは交渉が不調に終わってもウラン濃縮度を引き上げることはないとしており、懸念が高まることはなさそうだ。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)


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