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【特集】EVシフト恩恵を享受、国策買いで「充電設備」関連株は本格発進 <株探トップ特集>

カーボンニュートラル実現に向けEVシフトが加速しているが、更なる普及拡大のカギを握るのが充電設備の整備。このほど閣議決定された補正予算案に導入促進補助金が盛り込まれたこともあり、今後増設が本格化しそうだ。

―政府がインフラ整備を後押し、ガソリン車並みの利便性実現へ―

 新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の感染拡大が景気を下押しするとの懸念から、世界の株式市場が不安定な動きとなっている。この日の日経平均株価は値ごろ感が意識されるかたちで反発したが、米国の早期利上げ観測などもあって相場の先行きには不透明感が漂う。ただ、こうした局面は長期的な有望テーマに関連する銘柄を仕込む好機で、日産自動車 <7201> が今後5年間で電動車開発に約2兆円を投じる方針を打ち出すなど電気自動車(EV)シフトの潮流は変わらない。そこでEVの更なる普及拡大に不可欠な 充電設備にスポットを当ててみた。

●導入促進補助金を閣議決定

 経済産業省は11月26日、同日に閣議決定された2021年度補正予算案に375億円の「クリーンエネルギー自動車・インフラ導入促進補助金」が盛り込まれたことを明らかにした。実際の制度実施には国会での補正予算案の可決・成立が必要となるが、EVで最大80万円、プラグインハイブリッド車(PHEV)で最大50万円、燃料電池車(FCV)で最大250万円を対象車の購入者に交付し、「グリーン成長戦略」で掲げた35年までに乗用車新車販売で電動車100%とする政府目標の達成につなげたい考えだ。

 EV及びPHEV向け充電インフラの導入補助では、「急速充電器の設備費について、充電口が3口以上の機器に対応した補助枠を新たに設ける」ことや、「50キロワット以上の急速充電器を設置する際に必要となる高圧受電設備について、付帯設備の経費として工事費を増額」、「補助金申請が可能な上限基数を緩和」、「集合住宅などで複数導入する際、施設の電力需給量と充電量の調整を可能とするディマンドコントロール機能のある充電器や付帯設備への補助額を拡充」することが示された。政府は充電インフラを30年までに15万基設置し、ガソリン車並みの利便性を実現するとしており、新たな支援によって整備を加速する。

 英国ではジョンソン首相が11月22日に、新築の住宅や商業施設などの建築物にEV充電設備の設置を義務付ける方針を表明している。今後はEV普及に欠かせない充電設備の増設が国内外で本格化するとみられ、関連銘柄に目を配っておきたい。

●充電器関連株に熱視線

 EV用充電器を手掛ける主な企業は、平河ヒューテック <5821> 、モリテック スチール <5986> 、豊田自動織機 <6201> 、シンフォニア テクノロジー <6507> 、東光高岳 <6617> 、ダイヘン <6622> 、日東工業 <6651> 、ジーエス・ユアサ コーポレーション <6674> 、新電元工業 <6844> 、菊水電子工業 <6912> [JQ]、ニチコン <6996> など。

 また、急速充電ステーションの最適配置に関する解析調査で実績のある構造計画研究所 <4748> [JQ]、二次電池温度検知用センサーを手掛ける大泉製作所 <6618> [東証M]、急速充電器の開発評価を行うHIOKI <6866> も関連銘柄として挙げられる。

 このほか、東京ガス <9531> は11月8日、EV充電サービス「EVrest(イーブイレスト)」を開始すると発表した。このサービスは遠隔制御ユニットやQRコード、スマートフォンアプリを用いることで、認証・計測機能がない充電設備でも個別の充電実績管理を可能にするもの。EVユーザーが契約している駐車スペースに専用の充電設備を設置することで、充電のための移動や順番待ちのない、利便性の高い充電環境が実現できるという。

 ENECHANGE <4169> [東証M]は11月1日、EVユーザーの利便性向上及びEV充電器の設置を通じた駐車スペースの価値向上を目的とした「エネチェンジEV充電サービス」の提供をスタートすると発表した。これは自動車の駐車スペースに初期費用無料、月額利用料のみでEV普通充電器を設置し、EV充電器利用により発生した売り上げの一部を駐車スペースのオーナーに還元するサービス。今後はEVステーションオーナー向けの管理システムや、EV利用者向けアプリなどの開発を進め拡販を図るとしている。

●期待される走行中給電

 カーボンニュートラル実現に向けて自動車の電化需要は高まる傾向にあるが、その一方でEVの普及を妨げる課題のひとつが充電時間の長さ。この解決策として早期の実用化が期待されているのが走行中給電だ。

 大林組 <1802> 、ダイヘン、関西電力 <9503> はこのほど、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が行う「脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム」で、EVの走行中給電システムに関する技術開発を提案し、助成事業に採択された。走行しながらの給電を可能とすることで、走行距離の延長と充電の利便性向上を目指すという。

 大日本印刷 <7912> は8月に薄型・軽量・低コストのワイヤレス充電用シート型コイルを開発したと発表しているほか、三井不動産 <8801> と東京大学は10月にEVへの走行中給電の実証実験に成功したことを明らかにしている。

 また、東京大学、ブリヂストン <5108> 、日本精工 <6471> 、デンソー <6902> 、ローム <6963> が共同で20年12月に設置した「SDGsを実現するモビリティ技術のオープンイノベーション」社会連携講座は、走行中給電システムや車両運動制御、それらを組み合わせたシステムが第1の研究テーマだ。

 これ以外では、 ワイヤレス給電で使用される厚膜超大判フレキシブルフェライトシートを展開する戸田工業 <4100> 、京都大学とワイヤレス給電技術を活用したトンネル内のインフラ点検の実証実験を行った実績のあるミネベアミツミ <6479> 、コイルユニットなどワイヤレス給電に関連するさまざまな製品を取り扱うTDK <6762> 、ワイヤレス給電の伝送効率測定を手掛けるエヌエフホールディングス <6864> [JQ]、ワイヤレス給電に関する技術開発を進めるキョウデン <6881> [東証2]に注目したい。

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