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【特集】COP26直前で人気再燃、新ステージへ駆け上がる「アンモニア」関連株 <株探トップ特集>

開催が間近に迫ったCOP26は、温室効果ガス削減目標をどれだけ引き上げることができるかが焦点のひとつ。そこで燃やしてもCO2を排出しないアンモニアへの関心が再び高まっている。

―温室効果ガス削減の切り札、政府はアンモニア発電の開発に700億円投入へ―

 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で1年延期されていた第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)が10月31日から11月12日まで英国のグラスゴーで開かれる。この会議では各国の2030年までの温室効果ガス削減目標をどれだけ引き上げることができるかが焦点のひとつとなりそうで、「13年度比46%削減」を掲げている日本も更なる上積みが求められる可能性がある。そこで燃やしても二酸化炭素(CO2)を出さず、既にある輸送手段や貯蔵施設を使えるなどのメリットが多い「アンモニア」に改めて着目した。

●エネルギー基本計画で重要性を強調

 経済産業省は6日、燃料アンモニアの利用拡大に向けた初めての国際会議をオンラインで開催した。このなかで同省はアンモニアだけを燃料にして発電できる設備を40年代に実現する目標を表明し、安定的に発電するための技術開発に 脱炭素技術の開発や普及を促す国の基金から最大で700億円を投じるとしている。

 また、政府が22日に閣議決定した第6次エネルギー基本計画で、30年度の電源構成にアンモニアによる発電が新たに位置づけられた。背景には脱炭素社会の実現に向け、火力発電所から大気に排出されるCO2を実質ゼロにするという火力政策の抜本的な転換を進めることが必要となることが挙げられる。火力発電は電力の供給を支える重要な供給力であるとともに、再生可能エネルギーの変動性を補う調整力の役割を持つことから、その機能をいかにして脱炭素電源に置き換えていくかがカギとなり、そのため燃料をアンモニアに転換させることが求められている。燃料アンモニアについては、複数の発電事業者が火力発電への混焼を計画しており、30年に年間約300万トン(水素換算で約50万トン)、50年には年間約3000万トン(同約500万トン)の国内需要が予想されている。

 今後アンモニアの利用が拡大することを考えれば、市場価格の高騰を防ぎつつ安定的に必要量を確保することが不可欠であり、各企業は新たな市場形成とサプライチェーン(供給網)の構築に取り組んでいる。

●日立造、レノバはNEDO事業に採択

 日立造船 <7004> とレノバ <9519> はこのほど、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が実施する「21年度エネルギー消費の効率化等に資する我が国技術の国際実証事業 実証要件適合性等調査」で、「ラオスにおけるグリーンアンモニア製造・供給事業を実現するための高圧PEM型電解装置の実証研究」が採択された。この調査は、ラオスで生じる未利用の再生可能エネからグリーン水素を製造し、これを東南アジア諸国連合(ASEAN)圏のエネルギー開発方針及び日本の脱炭素政策に適うグリーンアンモニア(再生可能エネによって製造された水素から合成したもの)へと転換する技術開発と事業化を目的に取り組むもの。両社はそれぞれの知見を生かし、開発技術の適合性や事業性、普及性といった調査や評価などを行うという。

 このほか直近では三井物産 <8031> が、飯野海運 <9119> が韓国の現代尾浦造船で建造するアンモニア運搬船の定期用船契約を締結した。この船は世界的な船級協会である米ABSによるアンモニア燃料船化の基礎認証を受けて設計・建造される世界初のアンモニア運搬船で、23年12月竣工、運航開始を予定している。また、同社は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と西オーストラリアでアンモニア生産の事業化を見据えて、CO2の回収・貯留に関する共同調査を実施することで合意している。

 Jパワー <9513> は、オーストラリアのエネルギー大手であるオリジン・エナジーと再生可能エネを用いたグリーンアンモニア事業開発の共同検討に係る覚書を締結した。オリジンがタスマニア州で計画するグリーンアンモニア製造事業に参画することが目的で、同事業の知見を得るとともに、将来的に必要となる燃料アンモニアを安定的かつ安価に調達するための検討を行うことで、アンモニア混焼の実用化に向けた取り組みを加速させたい考えだ。

 東京電力ホールディングス <9501> と中部電力 <9502> が折半出資するJERAとIHI <7013> は、JERAの碧南火力発電所(愛知県碧南市)で燃料アンモニアの小規模利用試験を始めた。両社はNEDOの助成を受け、大型の商用石炭火力発電機での燃料アンモニアの大規模な利用を行う実証事業に取り組んでおり、24年度に計画する大規模混焼に向けたステップを着実に進めている。

 出光興産 <5019> はアンモニアサプライチェーン構築に向けた共同検討について、JERA及びノルウェーのヤラ・インターナショナルと覚書を締結した。3社は出光興産の徳山事業所(山口県周南市)を拠点としたアンモニアの国内物流構築、同拠点を活用したアンモニアバンカリング(船舶向け燃料)事業及び需要開拓、国内向け燃料アンモニアの海上輸送の最適化について検討するという。

●日揮HD、東洋エンジなどにも注目

 これ以外では、日揮ホールディングス <1963> と旭化成 <3407> が共同で再生可能エネ由来の水素からアンモニアを生産する実証実験に乗り出しているほか、東洋エンジニアリング <6330> と伊藤忠商事 <8001> などは東シベリアと日本間のブルーアンモニア(化石資源を原料として製造されたアンモニアで、その製造プロセスで発生するCO2の排出が回収・貯留技術などによって抑制されたもの)バリューチェーン事業化調査のフェーズ2を開始している。

 また、アブダビ国営石油会社とクリーン・アンモニアの売買契約を結んでいるINPEX <1605> 、アンモニアを燃料とする工業炉の実用化を目指している中外炉工業 <1964> 、ヒートポンプ式アンモニア回収装置を手掛ける木村化工機 <6378> 、アンモニア発電で独自技術によるソリューションを提供する東亜ディーケーケー <6848> 、アンモニアを原料にして水素を製造することでCO2フリーの水素社会実現に取り組んでいる澤藤電機 <6901> 、アンモニアの舶用燃料利用の早期実現を目指す協議会に参加している伊藤忠エネクス <8133> 、ドイツ企業が開発中のアンモニアを主燃料とした船舶用主機関発注に向けて基本協定書を締結した商船三井 <9104> などに注目したい。

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