【市況】米国株式市場見通し:ジャクソンホール会合に注目
FRBの年内の金融緩和縮小開始の思惑が強まるなか、26日から始まるカンザスシティ連銀主催の経済シンポジウムで、パウエル議長が果たして金融緩和縮小の時期などを巡りヒントを示すかどうかに注目だ。緩和縮小の道筋を明らかにすると見られるが、デルタ株の感染状況などの条件付きとなる可能性がありそうだ。デルタ株の流行で、例年はワイオミング州ジャクソンホールで開催される会合も本年はバーチャル式に変更された。早期の緩和縮小観測に加えて、季節的に利益確定売りが増えるほか、参加者が減り取引量も低迷し、引き続き荒い展開になりそうだ。ただ、低金利は長期にわたり維持されることを考慮すると、押し目は良い買い場になるだろう。
2013年にFRBのバーナンキ元議長が資産購入の段階的縮小を検討中だと言及したことをきっかけに、「テーパータントラム」、相場の混乱に繋がった経緯があることから、この会合はFRBが金融政策の転換方針を示す大事なイベントのひとつとして市場の注目度も高い。FRB高官の間では9月に緩和縮小計画を発表し、年内にも開始するとの方針が固まりつつあるとの報道もある。縮小の完了までには8カ月から10カ月間を費やし、2年ほど費やした金融危機後のペースを上回る可能性が強いという。ただ、秋・冬にかけ、新型コロナウイルスのデルタ株感染が予想以上に拡大し、景気に影響を与える可能性も除外できない。感染件数は、7月にFOMCが開催された時期に比べ急増。死者も6カ月ぶり高水準に達した。早期の金融緩和縮小の必要性を主張していたタカ派メンバーも、デルタ株感染動向次第では、考えを修正するとタカ派姿勢を和らげた。
感染拡大を受け、企業は従業員のオフィス復帰や雇用、生産を遅らせている。消費にも影響を与え、8月の外食、旅行や他のサービスに影響を及ぼしていると警戒される。実際、航空会社も例年需要が高まる夏の観光シーズンでピークとなる8月にキャンセルが増え、予約ペースが鈍化していると、悲観的な報告を発表している。8月のミシガン大消費者信頼感指数は予想外にパンデミックが始まった昨年3月の水準を下回り、10年ぶり低水準に落ち込んだ。7月の小売売上高も予想を下回った。エコノミストも年内の成長見通しを下方修正している。政府の財政支援により国民の貯蓄率は依然高く、余剰資金は大きいが、消費マインドが悪化、消費につながっていない。議長が予想外に金融緩和の縮小に慎重な姿勢を繰り返すと、株式の買い戻しに繋がるだろう。
経済指標では、7月シカゴ連銀全米活動指数、8月製造業・サービス業PMI速報(23日)、8月リッチモンド連銀製造業指数、7月新築住宅販売件数(24日)、7月耐久財受注(25日)、新規失業保険申請件数、4-6月期GDP改定値(26日)、7月前渡商品貿易収支、7月卸売在庫、7月PCEコアデフレーター、8月ミシガン大消費者信頼感指数(27日)、などが予定されている。特に、PCEコアデフレーターはFRBがインフレ指標として最も注視しているため結果に注目だ。
企業決算では、高級住宅建設会社のトール・ブラザーズ、百貨店のノードストーム、小売りのアーバンアウトフィッター、暗号通貨ブロックチェーン事業会社、ライオットブロックチェーン(24日)、企業向けソフトウェア開発のセールスフォース、ソフトウェア会社のスノウフレーク、電化製品小売りのベストバイ、化粧品小売りのアルタ・ビューティ、台所・家庭用品の小売り販売、ウィリアムズ・ソノマ、スポーツ用品販売会社のディックス・スポーティング・グッズ(25日)、ITのVMウェア、ディスカウント小売りのダラー・ゼネラル、在宅フィットネス事業を展開するペロトン・インタラクティブ、衣料小売りのバーリントン・ストアーズ食品会社のJMスマッカー、化粧品会社のコティ(26日)、などが予定されている。
住宅建設会社の決算は需要が依然強いものの、建築材料の高騰、人手不足により供給が抑えられており、業績はすでにピークを付けた可能性が警戒される。さらに、見通しにも注目だ。小売り全般では店舗の客足回復を背景に、業績回復が期待できそうだ。化粧品関連も引き続き好決算に期待したい。パンデミックによる在宅勤務が進んだことにより需要が急増し業績が大きく拡大したペロトン・インタラクティブは、経済活動の再開により減益が警戒される。
(Horiko Capital Management LLC)
《FA》
提供:フィスコ