【通貨】為替週間見通し:ドルは底堅い値動きか、経済正常化への期待持続
米ドル/円 <日足> 「株探」多機能チャートより
【今週の概況】
■ドル下げ渋り、安全逃避的なドル買い強まる
今週のドル・円は下げ渋り。8月16日に発表された中国の7月小売売上高と7月鉱工業生産は市場予想を下回る伸びにとどまったこと、新型コロナウイルス変異株の感染拡大、中東の地政学的リスク増大を意識して、リスク回避的な円買いが観測された。しかしながら、一部で安全逃避的なドル買いも観測されており、ドル・円は下げ渋った。米連邦公開市場委員会(FOMC)の7月会合議事要旨で、「ほとんどの参加者は年内に債券購入の段階的な縮小を開始することが適切と主張」との記述も注目され、ドル買い材料となった。19日の取引でドル・円は110円23銭まで買われた。
20日のニューヨーク外為市場でドル・円は、109円65銭から109円88銭まで買われた。量的緩和策の早期縮小の可能性は残されており、リスク選好的なドル買いが一時優勢となった。ただ、米ダラス地区連銀のカプラン総裁が「新型コロナウイルスデルタ株の感染拡大が需要を減速させた場合、緩和縮小に関する見解を修正する可能性がある」との見方を伝えたことから、ドル買いはやや縮小。109円77銭でこの週の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:109円11銭-110円23銭。
【来週の見通し】
■ドルは底堅い値動きか、経済正常化への期待持続
来週のドル・円は底堅い値動きか。8月26-28日、米カンザスシティ地区連銀主催の年次経済シンポジウムが開催される。米連邦準備制度理事会(FRB)議長が資産買入れの段階的縮小(テーパリング)に言及するか、注目される。米国経済の正常化期待は継続し、リスク回避的なドル売りがただちに拡大する可能性は低いとみられる。経済シンポジウムの今年のテーマは「不均衡な経済におけるマクロ経済政策」。新型コロナウイルス禍から世界経済が回復するなか、主要中央銀行の緩和縮小論議が焦点となる。
米FRBは金融緩和策を将来的に縮小する方向で調整を進めているが、足元の経済指標は強弱まちまちとなっている。直近の雇用統計は、力強さが示された半面、小売売上高などは弱さが目立ち、一部で減速懸念も広がる。高水準のインフレに関しFRBは「一時的」との見解だが、連邦公開市場委員会(FOMC)の一部メンバーは来年の利上げを主張している。7月開催のFOMC議事要旨によると、年内に債券購入ペースを弱めることが可能との見解でおおむね一致したが、債券買い入れ額の段階的な減額(テーパリング)の開始時期やペースについて当局間で見方は分かれる。
雇用統計は改善しているものの、いくつかの理由を挙げてパウエルFRB議長は従来通り慎重姿勢を維持する可能性がある。しかしながら、米国経済の正常化に向け来年のテーパリング開始への市場の期待は根強く、リスク回避的なドル売りが大きく広がる可能性は低いとみられる。
【米・4-6月期国内総生産(GDP)改定値】(26日発表予定)
26日発表の米4-6月期国内総生産(GDP)改定値は、1-3月期からほぼ横ばいの6%台を維持できるか注目される。市場予想を下回った場合、米国経済の早期正常化への期待は低下し、ドル売りの要因となりそうだ。
【年次経済シンポジウム】(26-28日開催予定)
米カンザスシティ地区連銀主催の年次経済シンポジウム。オンライン形式で行われることになった。注目はFRB議長による債券買入れ規模の段階的縮小(テーパリング)への言及。量的緩和策の早期縮小について慎重な姿勢を示した場合、リスク回避的なドル売りがやや強まる可能性がある。
予想レンジ:108円50銭-111円00銭
《FA》
提供:フィスコ