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【市況】景気懸念が広がるなかでの年内テーパリング観測/後場の投資戦略

日経平均 <1分足> 「株探」多機能チャートより

日経平均 : 27394.43 (-191.48)
TOPIX  : 1909.70 (-14.27)


[後場の投資戦略]

 本日の日経平均は海外株安が嫌気され、3ケタの下落で前場を折り返した。個別・業種別では、一昨日と同様に市況関連セクターが軟調。日本製鉄などの日足チャートを見ると足元の軟調ぶりが際立っている。海運業も買いが続かず失速する展開。一方、新型コロナ治療薬・ワクチンを巡る材料から医薬品が堅調だが、内需・(景気変動の影響を受けにくい)ディフェンシブセクターへの投資資金シフトも感じる。東証1部上昇率上位を見ても、ヘルスケアのSMS<2175>などが顔を出している。ここまでの東証1部売買代金は1兆円あまりと低調。決算発表の一巡、それに26日からの米経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」を前にした様子見ムードから積極的な売買は期待しづらい。

 新興市場ではマザーズ指数が+0.71%と続伸。前日の朝方、昨年8月以来およそ1年ぶりに節目の1000ptを割り込む場面があったが、その後強いリバウンドを見せた。一昨日の当欄で示唆したとおり、決算発表通過で追い証(追加担保の差し入れ義務)発生レベルの急落銘柄が減ったことは安心感につながっているだろう。QUICK社の算出する信用評価損益率は13日申し込み時点で-10.24%と4週間ぶりに改善した。これまでの下落による値ごろ感に加え、マクロ経済の影響が相対的に小さいとみられる点なども新興株の買いを誘いそうだ。もっとも、マザーズ指数も前場中ごろに本日の高値を付けると伸び悩み。株式相場全体の地合いに抗うほどの強さまでは感じられない。明日は3週間ぶりのIPO(新規株式公開)があるため、その動向からも個人投資家のセンチメントを探りたい。

 さて、前日のNYダウは引けにかけて下げ幅を広げ、日足チャートで長めの陰線を付ける格好となった。まだまだ「高値圏での調整」と捉える向きが多い一方、シクリカル(景気敏感株)、グロース(成長株)、ディフェンシブが揃って売られるなど引け味の悪さを懸念する声も聞かれた。「長期金利は比較的落ち着いている」との指摘はあるが、ミシガン大学の8月消費者態度指数が発表された先週末以降、株式が堅調な場面でも一貫して低下(債券価格は上昇)してきたためだろう。7月小売売上高の発表後に下げ渋る場面も見られたものの、反騰の兆しは見られない。原油先物相場の下落などからも世界経済の減速懸念が強まっていることが窺える。

 実際、7月の米住宅着工件数が3カ月ぶりに減少するなど、このところ市場予想を下回る経済指標が目立つ。また、米バンク・オブ・アメリカ(BofA)が公表した8月の機関投資家調査では、世界の景気見通しを示す指数(「強くなる」から「弱くなる」の回答を引いたもの)が+27%と前月比20pt低下し、昨年4月以降で最も低い水準になったという。一方で、7月のFOMC議事要旨では年内にもテーパリングを開始する可能性が示唆された。年内のテーパリング開始観測自体は以前からあったが、むしろ足元で広がるのは「テーパリング開始時には既に景気後退局面入りしているのでは」という「政策エラー」への懸念だろう。

 ちなみに前述の調査結果に絡んでかどうかは定かでないが、前日の先物手口ではBofA証券が東証株価指数(TOPIX)先物を売り越していた。短期筋のものとみられるクレディ・スイス証券の日経平均先物、TOPIX先物買い越しも観測されたが、景気減速懸念から米長期金利が伸び悩む局面で海外勢が日本株のエクスポージャー(投資残高)を高めるとは考えにくい。今秋の衆院解散・総選挙や、それに先立ち期待される経済対策による日本株持ち直しシナリオを描く市場関係者も多いが、筆者は懐疑的にみている。「日本株は割安」との主張も、見方を変えればそうと言えない。紙面の都合でこのあたりの詳細はまた後日説明したい。

 さて、足元で香港ハンセン指数の下落率は1.5%前後まで拡大してきた。根強い押し目買いが入っているとはいえ、後場の日経平均も引き続き軟調な展開になるとみておきたい。(小林大純)
《AK》

 提供:フィスコ

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