【特集】1Qロケットスタートで脚光! 12月期「増額有望」の躍進株選抜 <株探トップ特集>
21年12月期の上期決算発表シーズンが7月下旬からスタートする。ここでは、第1四半期に絶好のスタートを切り、通期計画に対する進捗率が高水準な上方修正候補を7銘柄選出した。
―上期決算発表シーズン迫る、上方修正“先回り候補”を7銘柄リストアップ―
12月期決算企業の上期決算発表が来月下旬から本格化する。21年12月期は新型コロナウイルス感染拡大の影響で大打撃を受けた前期からV字回復を見込む企業が多数を占める。第1四半期(1-3月)から好決算を打ち出す企業が相次いでおり、上期決算発表シーズンでは通期計画の上方修正に踏み切る企業が多くみられそうだ。今回は第1四半期に絶好のスタートを切った企業のなかから、第1四半期経常利益の通期計画に対する進捗率が高水準で、業績上方修正が期待できる銘柄を探った。
●1-3月期は製造業を中心に7割超が増益
21年12月期の第1四半期業績を振り返ると、前年同期と比較可能な444社のうち、経常利益段階で増益(黒字転換と赤字縮小を含む)だったのは322社と全体の7割以上に上る。自動車や半導体など世界的な需要回復が追い風となった製造業を中心に収益が大きく改善した。業種別で特に伸びが目立った電気機器と機械は、9割超の企業が増益となり、経常利益の合計額は前年同期の3倍強に膨らんだ。好決算を受けて早くも通期計画を増額修正する動きもみられたが、業績予想を据え置く向きは多く、上方修正余地は大きい。
通期計画に対して進捗率が高く業績上振れが期待される銘柄は、決算発表の接近につれて先回り買いの動きが増えることから、決算発表シーズン前に見直しておきたいところだ。以下では、時価総額1000億円未満の12月期決算企業を対象に、(1)第1四半期(1-3月)経常利益の通期計画に対する進捗率が35%を超え、かつ同進捗率が過去5年平均を10ポイント超上回っている、(2)第1四半期の経常利益が前年同期と比べ50%以上増益、といった条件を満たす銘柄を、上方修正先回り候補として7社リストアップした。
●I-PEXは業績絶好調で一段の上振れに期待
コネクターを主力とする精密部品メーカーのI-PEX <6640> は、テレワークの普及で活発化するノートパソコン向けの旺盛な需要を取り込んでいる。また、自動車生産の持ち直しを受けて車載用センサーやコネクターの販売が回復基調にあるほか、半導体の需給逼迫を背景に半導体製造装置の引き合いも強い。第1四半期の経常利益は前年同期比3.9倍の23億6400万円と絶好調で、上期の同利益予想を37億5000万円(従来は11億5000万円)へ大幅上方修正した。一方、下期計画は据え置いており、一段の業績上振れに含みを持たせている。株価は約1年ぶりの高値圏にあるが、予想PERは12倍近辺にとどまり指標面に割高感はない。
●オプテクスGはグローバルニッチの強み発揮へ
オプテックスグループ <6914> は屋外用防犯センサー、自動ドアセンサー、画像検査用照明で世界トップシェアを誇るグローバルニッチトップ企業。第1四半期業績は、設備投資需要が活発な中国を中心に変位センサーの販売が好調だったほか、半導体関連向け画像検査用照明などの引き合いも旺盛だった。また、昨年12月に買収した産業用コンピューターを製造するサンリツオートメイションの業績も加わり、売上高109億7400万円(前年同期比24.7%増)、経常利益15億8200万円(同2.6倍)と業績高変化を遂げた。経常利益は上期計画(11億5000万円)を既に上回り、対通期計画(32億円)でも進捗率が5割近くに到達している。
●ソフトMAXは医療デジタル化を追い風に最高益続く
ソフトマックス <3671> [東証M]は病院向けウェブ型電子カルテや会計システムを主力とする医療情報システムの開発会社。政府がオンライン診療をはじめとする医療分野のデジタル化を推進するなか、開発からサポートまでの一貫体制を強みに需要を捉えている。今期は経常利益の過去最高益を3期連続で更新する計画だ。第1四半期は前期から持ち越した案件の売上計上があったことに加え、ハードウェア仕入れや外注費などのコスト削減も寄与し、売上高13億7700万円(前年同期比27.6%増)、経常利益3億円(同2.5倍)といずれも四半期ベースの過去最高を記録した。第1四半期経常利益は通期計画(5億1000万円)に対し6割近い進捗率となっており、業績上振れは濃厚とみられる。
●カルタHDはネット広告回復で想定以上の進捗
CARTA HOLDINGS <3688> は2019年にアドネットワーク事業を展開するVOYAGE GROUPと電通グループ <4324> 傘下のインターネット広告会社サイバー・コミュニケーションズが統合して発足。VOYAGEが有する高い技術力と電通グループの強固な顧客基盤を武器にインターネット広告領域でのシェア拡大を目指す。第1四半期業績は、コロナ禍で一時的に減退したネット広告需要が運用型広告を中心に回復し、パートナーセールス事業の収益が伸びた。経常利益は第1四半期実績だけで通期計画の過半を超える好調な進捗をみせたが、アップル<AAPL>のiOSアップデートや広告審査体制の強化による売上高への影響を考慮し、業績予想の修正は見送った。4-6月期の動向次第では上振れの可能性がありマークしておきたい。
●星光PMCは8月に上方修正の確率高い
製紙用薬品で首位級のシェアを持つ星光PMC <4963> の第1四半期業績は、売上高75億1100万円(前年同期比13.6%増)、経常利益10億5400万円(同77.7%増)と2ケタ増収増益を達成した。主要販売先の製紙業界と印刷インキ業界の需要が減少し、厳しい経営環境が続いたものの、製紙用薬品は差別化商品や中国・東南アジア向けの販売が増勢だったほか、樹脂事業では粘着剤や印刷インキ用樹脂が伸びた。同社は業績予想を保守的に算出する傾向が強く、過去5年のうち3回も8月に上方修正した経緯がある。第1四半期経常利益の通期計画に対する進捗率は36.9%と高水準で、上方修正期待が高まっている。
●日華化学は第1四半期だけで通期計画の5割超に到達
日華化学 <4463> は繊維加工を中心とする界面活性剤と化粧品のメーカー。コロナ禍で経営環境が大きく変化するなか、環境、健康・衛生、先端材料の3領域に軸足を置いた事業構造へのシフトを進めている。第1四半期決算は経常利益が8億2700万円(前年同期比4.9倍)と急増した。化粧品事業でヘアケア剤の大口顧客向け新商品を増産したほか、手指消毒剤が引き続き好調だった。また、化学品事業では自動車分野などが回復をみせ、コスト削減を継続したことも利益拡大につながった。第1四半期実績だけで、通期計画(15億円)に対する進捗率が50%を超えており、業績上振れが有力視される。
●大倉工業は積極的な株主還元姿勢も注目
合成樹脂フィルムを主力とする大倉工業 <4221> の第1四半期業績は、新規材料事業で大型液晶パネルやスマートフォン向け光学フィルムの販売が好調だった。また、合成樹脂事業は売上原価の減少や好採算品の販売増加で採算が大きく改善し、経常利益は前年同期比2.1倍の19億3600万円に膨らんだ。既に上期計画の18億5000万円を上回る好調ぶりを示しており、業績上振れは確実とみられる。また、健全性の高い財務基盤を背景に配当は前期まで11期連続で減配なし(記念配当を除く)と安定配当を続けている。今期配当は前期と同額の60円を見込むが、増額修正することも多く、株主還元の切り口でも注目したい。
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