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【特集】安田倉庫 Research Memo(4):物流事業は成長事業、不動産事業は安定収益事業(2)


■事業概要

(3) ITキッティングサービス
IT機器の各種設定や動作確認のほか、保管やキッティング※作業、運用管理作業、保守までのサービスをワンストップで提供している。かつて大手PCメーカーの取り扱いが多かったことから、PCやタブレット、スマートフォンなどのカスタマイズ作業から、POS端末やATM端末の保管から設置まで、大型サーバーの移設、回収した商品の廃棄やデータ消去などのサービスまで手掛けており、IT機器に特化した物流ソリューションとして定評がある。

※一般に「キッティング」とはPC導入時に実施するセットアップ作業を指すが、安田倉庫<9324>の場合、同社の倉庫で機械のボディに回路基板を組み込むなど高度な作業もしており、より範囲の広いセットアップメーカーに近い概念だと思われる。


なかでも、IT機器のキッティングについては、都心エリアに複数のキッティング専用施設を有し、専門エンジニアによる高品質なサービスを提供している。具体的には、コンビニエンスストアなどに設置されるATM端末の保管・キッティング作業・配送・設置・動作確認作業、また、閉店時の引き上げ、リファービッシュ(引き上げた中古機器を新品に準じる状態に仕上げ再利用すること)といった「ITキッティングサービス」を中心に、新規導入や故障時の代替機配置、回収機器のデータ消去・返却など「LCMサービス※」、データセンター移設などに伴う「サーバー機器移設サービス」、コールセンター対応など「IT機器保守物流サービス」など、専門性の高いサービスを提供している。

※LCM(Life Cycle Management)サービスとは、IT機器のキッティング・運用・保守から、不要となったIT機器の回収、データ消去、再利用もしくは廃棄までの一連の業務をワンストップで提供するサービス。


(4) オフィスサポートサービス
顧客のオフィス空間を快適にする様々なメニューを取り揃え、文書の安全な保管・検索・管理から、引越や引越に伴うレイアウト設計・内装工事まで、オフィスにおける様々なニーズにきめ細かくワンストップで対応している。なかでも文書保管サービスでは、書類や各種メディアを耐震性に優れた専用室で保管し、24時間体制のセキュリティで機密保持にも万全を期している。預かった書類は、ファイリング整理から書類の電子化、情報検索・配信、廃棄まで各種サービスを一貫して請け負うことができ、顧客の文書管理の効率化とオフィスの省スペース化をサポートしている。また、独自のWeb在庫照会システムを利用することで、保管してある文書の在庫状況をリアルタイムに確認、倉庫への文書箱の入出庫指示なども簡単に行うことができる。文書リサイクル処理サービスでは、保管期限を過ぎた文書や不要になった文書などを破砕・溶解処理によって紙製品へとリサイクルし、機密保持と資源の有効活用を同時に実現している。

(5) 海外・国際物流サービス
アジアを中心に独自のネットワークを構築しており、日本発着の国際輸送やそれに伴う通関業務など、顧客の国際物流と海外展開をサポートしている。国際海上輸送では顧客の貨物特性に応じたサービスを用意しており、アパレル輸送ではハンガー納品(工場出荷のハンガーに掛けたままの状態での納品)に対応、独自の断熱ハンガーコンテナに収納することで輸送中のシワ防止や到着後のプレスなどの作業軽減を可能にしている。大型機械や鉄鋼・建材などの大型の重量物・長尺貨物の輸送については、事前に綿密な打ち合わせをすることで在来船への適切な積載方法などを調整している。また、酒類・飲料などの液体輸送については、同社保有のタンクコンテナを利用して輸送することができる。同社の関係会社である芙蓉エアカーゴでは、越境EC※関連航空貨物を取り扱っており、近年、取扱量が増大している。

※EC(Electronic Commerce):インターネット通販のこと。


通関業務では、複雑な税関申告手続や食品衛生法・動植物検疫をはじめとする法令関係手続の申請などをサポートしている。また、同社は「AEO(Authorized Economic Operator)通関業者(認定通関業者)」の認定を受けており、通関手続きを簡素化・迅速化することができる。航空輸送は混載ネットワークにより迅速かつ最適な方法でサービス提供しており、成田空港や関西国際空港などでは関係会社の芙蓉エアカーゴと連携して通関サービスや航空輸送サービスを展開している。中国や香港、ベトナム、インドネシアの自社拠点と海外代理店ネットワークを結ぶことによって、日本を経由しない三国間輸送サービスも提供している。

また、同社の関係会社である安田物流(上海)では、上海市内の大型自社物流センターを中心に、高品質・高付加価値なサービスを提供している。具体的には、品質検査・セット組み・ラベル貼りなどの作業や商品保管、中国全土への配送といった倉庫業はもちろん、中国EC販売のサポートや物流コンサルティングまで幅広く対応している。

3. 不動産事業
同社は、不動産開発や不動産賃貸、ビルメンテナンスなどの不動産事業も積極的に展開している。都市化による環境変化に合わせて、既存物流施設を顧客のニーズに合った好立地なオフィスビルや多目的用途ビル、ホテル・商業ビルなど快適な賃貸不動産へと再生・再開発している。また、リニューアル時には、免震・耐震改修により安心安全な空間を作り出すとともに、LED照明などを積極的に採用するなど環境負荷低減にも注力している。今後も、施設の更新時期や周辺の環境変化に配慮しながら再開発に取り組み、所有不動産の有効活用を積極的に進めていく方針だ。

不動産開発と対を成すビルメンテナンス事業については、関係会社の(株)安田エステートサービスのきめ細かく質の高い専門技術力を生かし、グループの資産価値を維持するだけでなく、グループ外の物件管理も行っている。設備管理では、建物の電気、空調、給排水設備といった各種設備機器について日常的に運転及び監視し、定期点検をすることで安定した稼働を実現している。そのほか、清掃は室内や窓ガラスのクリーニングから外壁のメンテナンスまで行い、警備は人的警備と機械警備を併用して24時間の防犯・防災に生かしている。工事は一級建築士などによる建物の設計から施工、内装、間仕切り工事、電気工事、住宅リフォーム、そして解体など建築工事全般に対応している。こうしたメンテナンスを総合的に管理する「トータルコストミニマム管理」によって、顧客のコスト削減を推進している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)

《YM》

 提供:フィスコ

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