市場ニュース

戻る
 

【特集】藤商事 Research Memo(4):「Pとある魔術の禁書目録」は稼働週で25週を上回るロングヒットに

藤商事 <日足> 「株探」多機能チャートより

■藤商事<6257>の業績動向

2.パチンコ・パチスロ遊技機の販売動向
パチンコ遊技機の新機種に関しては「Pリング 呪いの7日間2」(2020年4月発売。以下同)、「P遠山の金さん2 遠山桜と華の密偵」(2020年7月)、「Pとある魔術の禁書目録」(2020年10月)、「P FAIRY TAIL2」(2021年1月)、「P戦国†恋姫 Vチャージver」(2021年2月)、「P緋弾のアリア ~緋弾覚醒編~」(2021年2月)を市場投入したほか、その他シリーズ機種などを投入した。

「Pリング 呪いの7日間2」については、ゲーム性を高める「遊タイム」機能※を搭載した同社初の機種でゴールデンウィーク明けを狙って拡販を進めていく予定であったが、パチンコホールの休業期間と重なった影響で販売台数は11.9千台にとどまった。ただ、ホールでの稼働そのものは好調だったようで、商品力の強さは維持しており、「遊タイム」機能付きの新機種についても積極的に投入を進めた。シニア層を中心に前機種が好評だった「P 遠山の金さん2 遠山桜と華の密偵」については7月に投入したものの、コロナ禍でシニア層のホールへの客足の戻りが鈍かった影響で稼働率も低迷し、販売台数は6.7千台と計画を若干下回ったものと見られる。

※「遊タイム」とは、低確率時に規定回数まで大当たりしなかった場合に「時短モード」に突入する機能で、時短モードに入ることで、遊技者は一定回数分の大当たり抽選を、保有玉をほぼ減らすことなく行うことが可能となる。


また、10月に若年層をターゲットに投入した新規大型タイトルの「Pとある魔術の禁書目録」については、若年層に人気の高いコンテンツであったことに加えて、初心者でも楽しめるゲーム性や演出を取り込んだ機種に仕上げたこと、SNSでの積極的なプロモーション施策を展開したことなどにより、稼働週で25週を突破するなど想定を上回る人気を集め、販売台数で26.6千台(第3四半期で17千台、第4四半期に9.6千台)となった。ここ数年では「リング」に次ぐ販売台数となる。そのほか、「P緋弾のアリア」についても販売台数はライトミドル機のため8千台と少ないものの、稼働力も高くホールでの評価も良好な結果となった。両機種ともにライトノベルからアニメ化された人気コンテンツであるというのが特徴で、アニメ系ジャンルの機種投入で若年層を中心とした新規ファン層の取り込みに成功したと言える。

同社ではヒット機種や新規ジャンル創出のため、2019年以降、全国のパチンコホールを回り、遊技者目線でのニーズや評価を徹底的に調査し、それらをベースに一から開発を行い、その成果が新機種のヒットにつながったと見られる。従来の「ホラー系」「時代劇系」「萌え系」に続く新ジャンルとして「アニメ系」での主力タイトルを育成できたことにより、商品ラインナップも今まで以上に拡充されたことになる。

一方、パチスロ遊技機については、前述した通り新機種の投入はなかったものの稼働力向上に向けたスペック・ゲーム性のさらなる追求を図った新規種の開発に取り組んでおり、2022年3月期において到来する旧規則機からの入れ替え需要に対応した販売ラインナップの構築を進めていく予定となっている。


無借金経営で手元キャッシュは180億円超え、財務の健全性は高い
3.財務状況と経営指標
2021年3月期末の総資産は前期末比4,137百万円増加の50,795百万円となった。主な変動要因を見ると、流動資産は現金及び預金・有価証券が3,035百万円減少した一方で、期末にかけて売上が伸長したことで、売上債権が5,412百万円増加した。また、固定資産では有形固定資産が117百万円、投資有価証券が2,247百万円それぞれ増加し、繰延税金資産が435百万円減少した。

負債合計は前期末比3,311百万円増加の9,962百万円となった。流動負債で仕入債務が2,082百万円、未払法人税等が405百万円、未払金が358百万円それぞれ増加したことによる。また、純資産は同827百万円増加の40,833百万円となった。配当金の支払1,119百万円があったものの、親会社株主に帰属する当期純利益122百万円の計上と、保有株式の時価上昇に伴い、その他有価証券評価差額金が1,654百万円増加したことによる。

財務指標を見ると、自己資本比率は前期末の85.7%から80.4%に低下し、流動比率も同様に631%から400%に低下したが、いずれも期末にかけての売上伸長に伴う債権債務の増加が要因であり、また、手元キャッシュも前期末の212億円から186億円に減少したとはいえ依然高水準で、無借金経営でもあることから財務の健全性は確保されているものと判断される。当面の課題は収益の回復となるが、前述したように2021年3月期は黒字転換を果たすなど、収益力も回復の兆しが見え始めており、今後も魅力的なヒット機種を継続的に投入していくことができれば、収益性も上昇していくものと予想される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《AS》

 提供:フィスコ

株探からのお知らせ

    日経平均