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【特集】行政DX時代に脚光、オンライン本人確認「eKYC」でブレークする株 <株探トップ特集>

昨年9月に発覚した不正引き出し事件を受けて、本人確認の重要性が増している。DXの進展でその傾向は更に強まるとみられ、オンライン上で本人確認を行うeKYCが注目されよう。

―口座開設やチケット購入などで利用広がる、デジタル庁創設で普及は更に加速へ―

 デジタル庁の9月創設などを盛り込んだデジタル改革関連法が5月12日、国会で成立した。コロナ禍で行政のデジタル化の遅れが指摘されたが、同法の成立でデジタル化が前に進むことが期待されている。

 ようやく進もうとしているこうした行政のデジタル化や、それに先行して進む企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)だが、ここで重要となってくるのがデジタル上での本人確認だ。例えば行政のDXが進み、転出の届け出や税・社会保障の手続きをスマートフォンでこなせるような社会では、なりすましがあってはならず、本人確認が必要不可欠となる。2020年9月には、ドコモ口座と金融機関の口座連携を悪用した第三者のなりすましによる不正引き出し事件が発覚したが、この件は本人確認がいかに重要かを認識させる事件となった。

 これを防ぐためには、 eKYCと呼ばれるオンラインで行う本人確認を導入する必要がある。DXの進展で今後重要性を増すeKYC関連には引き続き注目が必要だ。

●eKYCとは

 eKYCは、オンラインによる本人確認のことで、本人確認(Know Your Customer)を電子的に行うことから、「electronic Know Your Customer」を略してそう呼ばれている。

 例えば、eKYCを導入する以前は、銀行や証券で口座を開設する際に、申請はオンラインでできても本人確認書類の写しを郵送し、金融機関側が本物かどうか、また本人のものかを確認した上で、申請者の住所に転送不要郵便や本人限定郵便で書類を送ることで本人確認を行っていた。ただ、これでは申請から口座開設までに数日から数週間かかることになり、その改善が求められていた。

 そこで18年6月にまとめられた「未来投資戦略2018」では、本人確認手続きのオンライン化に向けた法改正などが決定。これを受けて、同年11月には「犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯罪収益移転防止法)」で「オンラインで完結する自然人の本人特定事項の確認方法」が追加されることになり、これがeKYC普及の裏付けとなった。

●利用場面は拡大中

 eKYCには、利用者がスマートフォンなどで撮影した顔写真と本人確認書類の顔写真を照合して本人確認を行う方法や、顔写真と運転免許証などに埋め込まれているICチップ内の情報を照合させる方法、運転免許証などの本人確認書類の撮影と銀行APIを利用した顧客情報の照会を組み合わせた方法などさまざまあり、それぞれ一長一短がある。また、利用場面も銀行や証券の口座開設などから、シェアリングサービス利用時や中古品の売買、スポーツやコンサートのチケット購入などへと広がりつつある。

 これら以外にも、eKYCを導入することで手続きの簡素・迅速化や見込み顧客の離脱抑止などの効果が期待できることから、今後も利用場面は増加するとみられている。更に、行政手続きのオンライン化を進める行政DXやデジタル庁の設置がこれに拍車をかける可能性が強い。eKYC関連サービスを手掛ける企業のビジネスチャンスはこれまで以上に拡大しそうだ。

●ショーケース、ガイアックスなどに注目

 関連銘柄で注目されるのは、ショーケース <3909> だ。同社では、スマートフォンのブラウザを通して本人確認作業を行う SaaS型のeKYCソリューション「ProTech ID Checker」を提供している。同サービスでは、ユーザーはスマートフォンのカメラで本人の容貌や運転免許証などを撮影し、事業者は管理画面を利用して目検で最終確認を行う。事業者は、ページ内にタグを埋め込むだけで、簡単にeKYCを利用できるほか、SaaS型のため安価でサービスを導入できるのが特徴で、同サービスのほか、運転免許証と本人画像を一緒に撮影し、人工知能(AI)で自動判定まで行う「ProTech ID Checker Type S」も提供されている。

 ガイアックス <3775> [名証C]は、グループ会社でKYC/eKYC専業のTRUSTDOCKが、デジタル身分証アプリとeKYC/本人確認APIサービス「TRUSTDOCK」を展開。システムによるチェックと専門センターでの目視確認を連携させることにより、高精度でスピーディーな本人確認を24時間365日提供している。また、TRUSTDOCKは金融庁、総務省、経済産業省などの省庁や関連協会と連携しているほか、さまざまな業界団体や行政のワーキンググループに参画し、eKYCの規格化や標準化に携わっている点にも注目したい。

 TIS <3626> は、グループ会社のネクスウェイがクラウド形式で「ネクスウェイ 本人確認サービス」を提供している。同サービスは、本人確認書類と顔の写真撮影で本人確認を行うeKYCソリューションに加えて、反社チェック・書類審査・転送不要郵便の発送・確認記録の保存まで本人確認業務で必要な工程をワンストップかつ必要な部分だけ利用できるBPOサービス。eKYCはブラウザ版・アプリ版の両方に対応しており、入退館管理や監視カメラ、アクセス制御の設備を搭載したBPOセンターで対応しているのも特徴という。

 GMOグローバルサイン・ホールディングス <3788> は、子会社GMOグローバルサインが「GMO顔認証eKYC」を提供している。同サービスは、本人確認書類と顔の写真撮影で本人確認を行うeKYCソリューションで、スマートフォンなどで撮影された本人確認書類は基準を満たすかなどをAIが判定。また、実在する人物による申請であるかを検知する。API経由で接続する方式で運営中のサービスへの組み込みが可能なほか、初期費用がなく、利用頻度に応じた課金制のため、利用回数が少ない場合でも導入しやすいのが特徴で、着実に導入実績を伸ばしている。

 NEC <6701> が展開しているeKYCサービス「Digital KYC」は、精度世界トップクラスの顔認証エンジンを搭載しているのが強みだ。運転免許証などを持ちながら顔と一緒に撮影して本人確認する方式で、ライブネス判定を行い、撮影している人物が実在していること(事前に撮影された静止画でないこと)を確認し、なりすましなどの不正利用を防止している。SDK(ソフトウェア開発キット)形式で提供するため、既存アプリにも組み込みやすいスキームで、NTTドコモなどに導入されている。

 このほか、SMSをユーザーに送信して、そこに記載した確認コードを入力してもらうことで、eKYCによる本人確認に進むといった2段階認証を行うケースも増えていることから、アクリート <4395> [東証M]、AI CROSS <4476> [東証M]、fonfun <2323> [JQ]、エイジア <2352> などにも注目したい。

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