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【特集】バフェット流・高クオリティ戦略で、「ストレス卒業・億トレ昇格・早期リタイア」達成
第13回 強い投資家はどんな人~日本株投資家3900人調査で解明!(ケーススタディ編)
登場する銘柄
自分の投資は、果たしてこのままのやり方でいいのだろうか? そんな悩みや迷いを抱えている投資家もいるのではないか。
今回登場するベルさん(ハンドルネーム)も、その一人だった。それまで10年以上も取り組んできた投資に違和感を持ちつつ、リーマン・ショックをプラスで乗り切るなどし、100万円で始めた元本を、資金追加しながら8800万円まで膨らました。
しかし、転機は2015年に訪れた。そのとき集中投資していた帝国繊維<3302>が、1~2月にかけて30%以上の下落に巻き込まれて、8800万円が5800万円になるというドローダウンを食らう。
実は大きなヤラレはこのときが初めてではなかった。2006年のライブドアショックでも資産を2~3割減らす経験をしている。
この失敗を契機にこまめに利確や損切りを意識し、それが奏功して、リーマン・ショックは乗り越えたものの、
「いつも自分は値動きにびくびくしている」
「そもそも需給を読んで売り抜けるのが苦手だ」
という思いを抱えながら投資を続けていた。そこに再び帝国繊維株での失敗を食らうことになり、投資スタイルの抜本改革を断行した。
アベノミクスの追い風がなくなっても資産は4倍近く増加
その決断が奏功、新たに築いた投資スタイルでは、2015年後半以降というアベノミクスの追い風も消えた局面に関わらず、資産は順調に拡大。気がつけば、5800万円に凹んでしまった資産は、2億円までに膨らんでいた。
3年前の2018年には、「新たに身に付けた投資法に自信が持てた」とサラリーマン生活に別れを告げ、専業投資家に転身。
現在は、愛車の「フーガ」で日本全国にドライブに出掛け、国内1200カ所近くあると言われる「道の駅」のうち1000カ所までを制覇した。また投資している会社の株主総会や説明会が開催されるときは、旅行がてら愛車で出向くという。
今は長期保有する銘柄の配当収入が年400万円ほどになるという。しかし、ベルさんの現在の投資スタイルは配当狙いではない。
では、「億トレ」「早期リタイア」という個人投資家の憧れの称号をベルさんにもたらした現在のスタイルとはどんなものか。そして、当初の投資スタイルとはどのようなものだったのか。
蛹(さなぎ)から蝶へと脱皮した成功体験を振り返っていこう。
保有銘柄は、自身の目が届く範囲にとどめる
ベルさんが現在保有する主な銘柄が以下になる。
■ベルさんが保有する銘柄の例
注:株価は21年5月25日終値
上の5銘柄だけでも、足元の運用額は1億5000万円、運用額全体の4分の3を占める。今の保有株数と購入開始当初の株価を掛け算した運用額と単純比較すると、6000万円以上のリターンを生み出していることになる。
保有銘柄は、自身で管理できる数にしており、現在は14。その中でも投資額が大きいのが上の5銘柄になる。「集中投資のほうがより高いリターンを見込めるため」(ベルさん)だ。
これらの銘柄を選んだのは、いわゆる高クオリティ銘柄と踏んだからだ。
銘柄選定にあたっては、まず定量面で候補銘柄を絞り、さらにビジネスモデルや社長のリーダーシップなど定性的な面も加味して、最終選抜する。
4つの指標で、「お値打ち価格の高クオリティ銘柄」を抽出
定量面で注目するのは、次の4つの指標になる。
ROE(自己資本利益率)
BPS(1株当たり純資産)
自己資本比率
PBR(株価純資産倍率)
――だ。
これら4つの指標を重視するのは、
効率よく利益を稼ぎながら安定成長するクオリティーを持つ銘柄を、
それほど割高になっていない段階で仕入れ、
長期でホールドする
――ことを原則としているからだ。
それぞれの指標の具体的な基準は以下の通りになる。
① ROE20%前後が10年続いている
② BPSが過去9年で4倍以上に増加、且つ直近1年で10%以上の伸び
③ 自己資本比率が50%前後で推移
④ PBR3倍以下
バフェットの銘柄選択術を援用
この4つを採用するにあたっては、カリスマ投資家であるウォーレン・バフェットの銘柄選別について紹介した『バフェットの銘柄選択術』(日本経済新聞出版)を参考にした。
その中で書かれていた「高ROEの企業に投資することは、高い利回りの債券に投資するようなものだ」という考え方に、「これこそが、自分の求めている手法だ」と取り入れることにした。
もちろん、本で紹介されていることをそのまま踏襲して、成功を手にできるほど現実は甘くない。ベルさんは、米国株に比べて、日本株は平均ROEが低いことなど、様々な違いを考慮して、上の4つの基準を設けた。
これに加えて、数値では現しきれていない何かを見逃さない工夫を取り入れた。定量面で選抜した銘柄を、次の2つの定性面からのチェックを入れて、最終判断する。その2つとは、
⑤ ビジネスモデルが強固で安定的なのか
⑥ 社長のリーダーシップは信頼できるのか
――になる。
⑤と⑥は過去のIR(投資家向け広報)資料などを参考にしている。保有後も、できる限り株主総会や個人投資家向けの説明会などに出向いている。
その場でトップが発言する際の口調や身振りなど、五感を通じて得られる情報を駆使して、まだ保有を続けても大丈夫そうなのか、それとも少々警戒を強めるべきなのかといった判断などに採用している。
利確も基準を設けて断行
そして利確や手放す基準は以下の通り。
Ⅰ. ROE推移が10%に近づいている
Ⅱ. PBRが5倍を超えようとしている
これによって新スタイルで6000万円の運用資産を2億円にすることに成功した。
ただし上の2つはあくまで基準。仮に満たしていなくても、それを補完するプラス材料があれば保有するケースもある。
では、これから具体的な投資事例を見ていこう。
※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。
...
登場する銘柄
取材/真弓重孝・高山英聖、編集・構成/真弓重孝(株探編集部)
ベルさん(ハンドルネーム・40代・男性・専業投資家) | ||
---|---|---|
日本株運用資産 | 2億円 | |
累積投資元本 | 5000万円 | |
累積リターン | 1億5000万円 | |
投資スタイル | クオリティ重視 | |
主な保有期間 | 3年以上 | |
保有銘柄数 | 10銘柄前後 | |
投資開始年 | 2001年 | |
他の投資対象 | なし | |
自身の性格分析 | 安定志向 | |
好きな言葉 | 人のやらないことをやる | |
ベルさんとは:元会社員の専業投資家 新卒入社して4年目に日本株投資を開始。当時は元手100万円。 祖母から教わった基礎知識をもとに実践を積み重ね、2015年に5800万円まで拡大。 資産をそれなりに増やすも「今の投資法は自分に合わない」と感じ、これまでの我流を改め バフェット流スタイルに抜本的にシフト。 そこからは、アベノミクス相場の勢いを失った中で、運用額は2億円まで膨らますことに成功。 投資開始以来の累積リターンは1億5000万円になる。18年に専業に転身。 今は愛車「フーガ」で全国にある道の駅のスタンプラリーを楽しみながら投資に勤しむ。 |
自分の投資は、果たしてこのままのやり方でいいのだろうか? そんな悩みや迷いを抱えている投資家もいるのではないか。
今回登場するベルさん(ハンドルネーム)も、その一人だった。それまで10年以上も取り組んできた投資に違和感を持ちつつ、リーマン・ショックをプラスで乗り切るなどし、100万円で始めた元本を、資金追加しながら8800万円まで膨らました。
しかし、転機は2015年に訪れた。そのとき集中投資していた帝国繊維<3302>が、1~2月にかけて30%以上の下落に巻き込まれて、8800万円が5800万円になるというドローダウンを食らう。
実は大きなヤラレはこのときが初めてではなかった。2006年のライブドアショックでも資産を2~3割減らす経験をしている。
この失敗を契機にこまめに利確や損切りを意識し、それが奏功して、リーマン・ショックは乗り越えたものの、
「いつも自分は値動きにびくびくしている」
「そもそも需給を読んで売り抜けるのが苦手だ」
という思いを抱えながら投資を続けていた。そこに再び帝国繊維株での失敗を食らうことになり、投資スタイルの抜本改革を断行した。
アベノミクスの追い風がなくなっても資産は4倍近く増加
その決断が奏功、新たに築いた投資スタイルでは、2015年後半以降というアベノミクスの追い風も消えた局面に関わらず、資産は順調に拡大。気がつけば、5800万円に凹んでしまった資産は、2億円までに膨らんでいた。
3年前の2018年には、「新たに身に付けた投資法に自信が持てた」とサラリーマン生活に別れを告げ、専業投資家に転身。
現在は、愛車の「フーガ」で日本全国にドライブに出掛け、国内1200カ所近くあると言われる「道の駅」のうち1000カ所までを制覇した。また投資している会社の株主総会や説明会が開催されるときは、旅行がてら愛車で出向くという。
今は長期保有する銘柄の配当収入が年400万円ほどになるという。しかし、ベルさんの現在の投資スタイルは配当狙いではない。
では、「億トレ」「早期リタイア」という個人投資家の憧れの称号をベルさんにもたらした現在のスタイルとはどんなものか。そして、当初の投資スタイルとはどのようなものだったのか。
蛹(さなぎ)から蝶へと脱皮した成功体験を振り返っていこう。
保有銘柄は、自身の目が届く範囲にとどめる
ベルさんが現在保有する主な銘柄が以下になる。
■ベルさんが保有する銘柄の例
銘柄 | 主力事業 | 購入 開始時期 | 購入時の 株価 | 現在株価 | 保有株数 |
---|---|---|---|---|---|
eBASE <3835> | 商品情報データベース ソフトの開発・販売 | 2015年9月 | 134円 | 893円 | 2万株 |
WDBホールディングス <2475> | 技術系人材派遣 | 2015年9月 | 1318円 | 2505円 | 1万4000株 |
JCU <4975> | メッキ薬品 | 2016年5月 | 842円 | 3675円 | 6000株 |
シノケングループ <8909> | アパート建築 | 2018年11月 | 900円 | 1220円 | 4万株 |
クイック <4318> | 専門職の 人材紹介・派遣 | 2019年3月 | 1284円 | 1278円 | 2万3000株 |
上の5銘柄だけでも、足元の運用額は1億5000万円、運用額全体の4分の3を占める。今の保有株数と購入開始当初の株価を掛け算した運用額と単純比較すると、6000万円以上のリターンを生み出していることになる。
保有銘柄は、自身で管理できる数にしており、現在は14。その中でも投資額が大きいのが上の5銘柄になる。「集中投資のほうがより高いリターンを見込めるため」(ベルさん)だ。
これらの銘柄を選んだのは、いわゆる高クオリティ銘柄と踏んだからだ。
銘柄選定にあたっては、まず定量面で候補銘柄を絞り、さらにビジネスモデルや社長のリーダーシップなど定性的な面も加味して、最終選抜する。
4つの指標で、「お値打ち価格の高クオリティ銘柄」を抽出
定量面で注目するのは、次の4つの指標になる。
ROE(自己資本利益率)
BPS(1株当たり純資産)
自己資本比率
PBR(株価純資産倍率)
――だ。
これら4つの指標を重視するのは、
効率よく利益を稼ぎながら安定成長するクオリティーを持つ銘柄を、
それほど割高になっていない段階で仕入れ、
長期でホールドする
――ことを原則としているからだ。
それぞれの指標の具体的な基準は以下の通りになる。
① ROE20%前後が10年続いている
② BPSが過去9年で4倍以上に増加、且つ直近1年で10%以上の伸び
③ 自己資本比率が50%前後で推移
④ PBR3倍以下
バフェットの銘柄選択術を援用
この4つを採用するにあたっては、カリスマ投資家であるウォーレン・バフェットの銘柄選別について紹介した『バフェットの銘柄選択術』(日本経済新聞出版)を参考にした。
その中で書かれていた「高ROEの企業に投資することは、高い利回りの債券に投資するようなものだ」という考え方に、「これこそが、自分の求めている手法だ」と取り入れることにした。
もちろん、本で紹介されていることをそのまま踏襲して、成功を手にできるほど現実は甘くない。ベルさんは、米国株に比べて、日本株は平均ROEが低いことなど、様々な違いを考慮して、上の4つの基準を設けた。
これに加えて、数値では現しきれていない何かを見逃さない工夫を取り入れた。定量面で選抜した銘柄を、次の2つの定性面からのチェックを入れて、最終判断する。その2つとは、
⑤ ビジネスモデルが強固で安定的なのか
⑥ 社長のリーダーシップは信頼できるのか
――になる。
⑤と⑥は過去のIR(投資家向け広報)資料などを参考にしている。保有後も、できる限り株主総会や個人投資家向けの説明会などに出向いている。
その場でトップが発言する際の口調や身振りなど、五感を通じて得られる情報を駆使して、まだ保有を続けても大丈夫そうなのか、それとも少々警戒を強めるべきなのかといった判断などに採用している。
利確も基準を設けて断行
そして利確や手放す基準は以下の通り。
Ⅰ. ROE推移が10%に近づいている
Ⅱ. PBRが5倍を超えようとしている
これによって新スタイルで6000万円の運用資産を2億円にすることに成功した。
ただし上の2つはあくまで基準。仮に満たしていなくても、それを補完するプラス材料があれば保有するケースもある。
では、これから具体的な投資事例を見ていこう。
※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。
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