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【特集】山内俊哉氏【長期金利上昇で不透明感漂う市場を読み解く】(2) <相場観特集>

山内俊哉氏(上田ハーロー 執行役員)

―3月期末接近で思惑錯綜、日経平均と為替はどう動く?―

 週明け8日の東京株式市場は、朝方に日経平均は大きく買い優勢で始まったものの、その後は値を消す展開となり、後場はマイナス圏に沈んだ。引き続き米長期金利の動向などに神経質な動きとなっている。3月期末に向けて株式市場はどのような軌道を描くのか。また、金利動向と合わせ外国為替市場の動きも気にかかる場面だ。株式市場と為替動向についてそれぞれ業界第一線で活躍する市場関係者2人に意見を聞いた。

●「米景気回復期待で110円視野のドル高も」

山内俊哉氏(上田ハーロー 執行役員)

 足もとでドル高・円安が進行している。この基調は、当面は続く可能性があるとみている。ドル高に振れた要因として、1月に米長期金利が1%を超えて上昇してきたことがあるだろう。米国のバイデン新政権が安定し1.9兆ドルの追加経済対策への期待が膨らんだほか、新型コロナワクチンの接種拡大による景気回復観測が強まった。

 市場では、インフレに対する懸念も出ているが、1月の米消費者物価指数(CPIコア)は前年同月比で1.4%程度の上昇であり、米連邦準備理事会(FRB)が懸念する2%を超えて急激に上昇するような状況には至っていない。

 市場は、インフレ懸念に対して前のめりになっているように思える。しかし、その一方で、パウエルFRB議長をはじめとする金融当局の高官は、新型コロナによるパンデミック(世界的大流行)の先行きに対して不透明感が残るなか、慎重な発言を繰り返している。この点で、金融当局と市場との間にギャップが生まれているようだ。来週の16~17日の米連邦公開市場委員会(FOMC)でもパウエル議長などの基本的な姿勢は変わらないと思う。米長期金利上昇で、金融市場が不安定な状況となるような素地は残っているかもしれない。

 今月中旬にかけては、欧州中央銀行(ECB)理事会や日銀金融政策決定会合も開催される。日銀は緩和姿勢を続けるとみられ、日米金利差は拡大する傾向が予想される。ただ、米景気拡大の材料は織り込みつつあり、ドルは先行き徐々に上がりにくくなるかもしれない。

 こうしたなか、今後1ヵ月程度のドル円相場のレンジは1ドル=106円00~110円00銭を見込んでいる。相場の基調はドル高だろう。ユーロドルは1ユーロ=1.15~1.21ドルのユーロ安基調。ユーロ円は同127円00~131円00銭の若干の円安・ユーロ高を予想している。

(聞き手・岡里英幸)

<プロフィール>(やまうち・としや)
上田ハーロー、執行役員・マーケット企画部長。1985年 商品先物会社入社。コンプライアンス、企画・調査などを経て1998年4月の「外為法」改正をうけ外国為替証拠金取引の立ち上げを行う。2005年7月 上田ハーロー入社。前職の経験を生かし、個人投資家の視点でブログなどへ各種情報の発信やセミナー講師に従事。日経CNBC「朝エクスプレス」為替電話リポートに出演のほか、金融情報サイトなどへの情報提供などでも活躍している。

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