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【特集】冬の感染症対策に「加湿器」の出番、乾燥防止ニーズ取り込み潤う銘柄群 <株探トップ特集>

換気がしづらい冬の感染症対策として、加湿器の需要が一段と高まっている。今年は新型コロナの感染拡大があり、例年以上に乾燥防止に向けた取り組みが重要になる。

―飛沫拡散防ぐ加湿の効果が浸透、新型コロナ感染拡大で意識高まる―

 2020年も残すところわずかになった。寒さが日増しに厳しくなるこの季節は、例年であれば風邪やインフルエンザの流行が話題にのぼるところだが、今年は特別で、新型コロナウイルス感染拡大への警戒が強く呼びかけられ緊張感が高まっている。冬場は気温の低下によって体力が落ちるだけでなく、空気が乾燥することで喉や鼻の粘膜の働きが弱まり、体内にウイルスが侵入しやすくなる。そのため、マスクや除菌剤といったこれまでの感染症対策製品に加え、この時期ならではの商品として室内の乾燥を防ぐ加湿器の需要も一段と高まっていくことが見込まれる。

●乾燥により飛沫拡散しやすいとのシミュレーション結果も

 人がくしゃみや咳、会話をした際に飛ぶ飛沫は、比較的大きなものは短時間で地面に落ちる一方、エアロゾルのような非常に小さなものは空気中を数時間漂うこともあるという。空気が乾燥すると、飛沫に含まれる水分が失われることでより軽く、また細かくなることから、長い間空中にとどまり広範囲に拡散することにつながる。10月には理化学研究所が湿度の違いとウイルスの広がり方に関し、スーパーコンピューター「富岳」を使ったシミュレーション結果を公表し話題となった。なかで1.8メートル間隔で人と向かい合っている際に一方の人が咳をした場合、湿度が30%の状況だと、60~90%の時と比べて2倍以上、飛沫が相手に到達しやすくなったという。こうしたことからも、換気のしづらい冬の感染症対策として、加湿することの重要性が極めて高いことがわかる。

●まずは日立、パナソニック、三菱電をマーク、シャープや富士通ゼも

 関連銘柄としてまず押さえておきたいのが、電機セクター大手の日立製作所 <6501> 、パナソニック <6752> 、三菱電機 <6503> だ。日立は「次亜塩素酸加湿器」や暖房と加湿が一体となった「加湿セラミックファンヒーター」を、パナソニックは同社独自の微粒子イオン「ナノイー」技術を搭載した「ヒーターレス気化式加湿機」などを販売している。三菱電は、顔のまわりをピンポイントで保湿する「パーソナル保湿機」を手掛けており、特に注目しておきたい。同製品は、乾燥した喉や鼻、肌を寝ている間に効率よく潤すもので、独自のスチーム搬送技術により部屋全体ではなく、顔の周辺だけを湿度40~60%に保つことができるという。そのほか、独自技術「プラズマクラスター」を搭載した加湿器を販売しているシャープ <6753> 、脱臭や除菌、集じんなどの機能が備わった加湿除菌脱臭機「PLAZION(プラズィオン)」を手掛ける富士通ゼネラル <6755> もマークしておきたい。

●加湿器トップシェアのダイニチ工業

 加湿器で高シェアを誇るダイニチ工業 <5951> は22日、11月の加湿器の出荷金額が前年比約8割増となり、11月の出荷金額として03年の販売開始以来、最高の実績になったと発表した。これを受けて、新潟の工場では前年と比べ約5倍の人員で加湿器の増産にあたっているという。また、同社は11月下旬に加湿器に使われる「気化フィルター」の9~10月の出荷数が前年の同期間に比べ約7割増となったことも発表しており、加湿器への需要が高まっていることがうかがえる。業績面では、10月下旬に20年4-9月期決算を発表。例年、商品導入期にあたる第2四半期の売上高はわずかなものになるというが、今年は加湿器の販売増加が全体をけん引し前年同期比10.8%の増収となった。通期見通しは売上高190億円(前期比0.9%増)、営業利益5億2000万円(同2.9倍)を予想している。

●業績好調なドウシシャ、株価指標面で投資妙味

 ドウシシャ <7483> は、量販店向けを中心にブランド品の卸売りやプライベートブランド商品の販売などを行う。雑貨や衣料、家電など幅広く商品を取り扱っており、加湿器ではリビングや小部屋用の商品のほか、秋冬シーズンを前にした9月下旬からは卓上タイプのものも販売している。同社は10月下旬に21年3月期通期の連結業績予想を上方修正し、売上高を前期比4.9%増の1010億円(従来予想920億円)、営業利益を同43.4%増の86億円(同53億円)とした。同時に発表した上期決算は営業利益が前年同期比66.5%増の52億300万円となり、通期計画に対する進捗率も順調だ。株価はこの業績発表を受けた11月2日、目先の材料出尽くし感から一時1650円まで売り込まれる場面もあったが急速に切り返し、その後は1900~2000円ゾーンでもみ合う展開が続いている。PER11倍台、PBR1倍割れ水準と株価指標面から割安感があり、安定的な配当も魅力で、押し目があれば買いの好機となりそうだ。

インテリア雑貨など手掛けるイデアインタ

 インテリア・トラベル雑貨、バッグ、化粧品などの企画開発、販売を手掛けるイデアインターナショナル <3140> [JQG]は、11月12日に21年6月期第1四半期(7-9月)決算を発表。新型コロナ感染拡大による旅行需要の急激な落ち込みによりトラベル関連商品の販売は鈍かったものの、巣ごもり需要の高まりを追い風にキッチン家電が好調だったほか、「ふとんドライヤー」「フロア加湿器」などのインテリア家電の売り上げも伸びた。営業利益は利益率の高いeコマース販売の増加により、前年同期比4.8倍の2億7400万円と大幅増益を達成した。直近18日、同社の親会社であるRIZAPグループ <2928> [札証A]が、傘下のワンダーコーポレーション <3344> [JQ]、HAPiNS <7577> [JQ]、ジーンズメイト <7448> の3社の経営統合を行う方針を発表した。今後、イデアインタを含めたRIZAP上場子会社の動向にも目を配っておきたい。

●保冷庫で思惑向かうツインバード、直近IPOのバルミューダなどにも注目

 ツインバード工業 <6897> [東証2]は、ここ株式市場では新型コロナワクチンの輸送や保管に絡み、保冷庫需要が増加するとの思惑から脚光を浴びているが、主力は小物家電や健康機器などの企画販売で、加湿器も手掛けている。足もと業績は振るわなかったものの、21年2月期通期見通しの売上高122億円(前期比0.3%増)、営業利益2億5000万円(同39.9%増)は据え置いている。同社では、年末年始商戦や新生活商戦に向けた新製品導入などの取り組みを進めることで、下期は前年同期比10.6%の増収を見込む。また、保冷庫などを手掛けるFPSC(フリー・ピストン・スターリング・クーラー)事業に関しては、海外企業を中心に欧米、アジア、アフリカなど14ヵ国以上から受注しており、数多くの引き合いがあるとしている。

 バルミューダ <6612> [東証M]は、12月16日にマザーズ市場に新規上場した直近IPO銘柄。高級家電のファブレスメーカーで、スチームトースターやワイヤレススピーカーなどの家電製品を企画製造販売している。同社は、13年に加湿器「Rain」の販売を開始した。同製品は、自動運転によって人が快適だと感じられる約50%の湿度が維持でき、また溶菌酵素をコーティングしたプレフィルターにより、ホコリを取り除くと同時に空気中のウイルスや細菌を除去し、空気を清潔に保つことができるという。

 これら以外では、調理家電大手の象印マホービン <7965> 、機械・工具専門商社の大手である山善 <8051> のほか、グループ会社が加湿器を手掛けている事務用品大手のキングジム <7962> なども、関連銘柄として注目しておきたい。

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