【市況】国内株式市場見通し:日経平均は堅調地合いが継続へ
日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
■日経平均は6週ぶりに上げ一服
今週の日経平均は、小幅ながら6週ぶりに反落した。11月の米雇用統計は低調な内容だったものの、追加経済対策の進展が期待されて4日のNYダウは4日続伸し過去最高値を更新。週明け7日の日経平均はこれを好感して取引時間中のバブル崩壊後高値を更新して始まった。しかし、利益確定の売りが広範に出て日経平均は続落で大引けた。新型コロナウイルス感染拡大に伴う規制強化、追加経済対策を巡る協議の先行き不透明感から7日のNYダウが5日ぶりに反落した流れを受けて、8日の日経平均も3日続落した。ただ、朝方からの売りが一巡するとエムスリー<2413>が6日ぶりに反発するなど値がさグロース株を中心に買いが入り、日経平均は26500円を挟みもみ合う展開となった。個別では、政府が水素利用量の目標設定を検討との報道から岩谷産業<8088>の急騰が話題になった。FDA(米食品医薬品局)が、ファイザーが開発する新型コロナワクチンの有効性に良好な見解を示したことが報じられたことに加え、英国で同社開発のワクチン接種が始まったことも好感され8日のNYダウは反発、ナスダック総合指数とS&P500指数は史上最高値を更新した。これを受けた9日の日経平均は前日比350.86円高と4日ぶりに大幅反発。10月の機械受注統計が市場予想を大きく上回ったことも好感され、景気敏感株を中心に買いが広がり、日経平均はこの日のほぼ高値で大引けた。また、株式の非公開化の検討が報じられて思惑が高まったソフトバンクグループ<9984>の上げが目立った。追加経済対策を巡る与野党の対立を受けて年内の合意成立への期待が後退した9日のNYダウは反落、ナスダック総合指数も5日ぶりに大幅安に。この米国株安を受けて10日の日経平均も反落した。SOX指数(米フィラデルフィア半導体株指数)の下落を受けてSUMCO <3436>など半導体関連株の下げが目立った。しかし、前日に続いてソフトバンクグループが大きく買われ、日経平均は一時プラスに浮上する場面もあった。10日のNYダウは、週次の失業保険申請件数が大幅に増加したことを懸念して続落した一方、ナスダック総合指数は反発した。11日の日経平均はメジャーSQに絡んだ商いをこなした後、1ドル=103円台の円高傾向などを嫌気して一時下げ幅を広げた。方向感を欠く展開のなか3日ぶりに急反落したソフトバンクグループの下げが日経平均の下落に響いたものの、押し目買いは強く後場は下げ幅を縮小する展開に。個別では巣ごもり需要人気の復活で、任天堂<7964>が11月6日以来の6万円台に復帰した。大引けの日経平均は前日比103.72円安の26652.52円と小幅続落した。TOPIX(東証株価指数)は反発した。なお、この日の日経平均のメジャーSQ(特別清算指数)値は26713.47円だった。
■金融イベントなど睨みながら底堅さを試す展開
来週の日経平均は、新型コロナをめぐるニュースフローと、日米の金融イベント、主要経済指標の発表を睨んで底堅さを試す展開となりそうだ。新型コロナワクチンの承認と接種が始まった。米製薬大手ファイザーに続いて、17日には米バイオ製企業モデルナのコロナワクチンがFDA(米食品医薬品局)の第三者委員会を踏まえて承認される見通しだ。一方、日米ともに感染拡大は続いており、国内では「Go Toキャンペーン」運営の見直しも報じられ始めた。経済活動への影響とコロナワクチンに対する期待が交錯している。相場に影響の大きい発表も目白押しだ、国内では14日の寄り付き前に明らかとなる12月調査日銀短観、17日からは日銀金融政策決定会合、18日には日銀総裁会見を控える。海外では、15日にFOMC(米連邦公開市場委員会)、中国11月の工業生産と小売売上高、16日はFRB議長会見、米11月小売売上高の発表がある。東京市場は11日にメジャーSQを通過して海外機関投資家はクリスマス休暇に入り商いが減少しやすくなるなか、こうしたイベントと経済指標の発表を睨んで模様眺めムードが強まりやすくなる。また、米国では21日に電気自動車メーカーであるテスラのS&P500指数への組み入れが控えており、需給変動が生じやすくなる見込みだ。日本でも日経平均に対する寄与度が高いソフトバンクグループの株式非公開化の思惑から生じる株価の乱高下が、指数のかく乱要因になっている。ただ、日経平均は5日移動平均線から大きく乖離することなく底堅い展開が続いている。日経平均は心理的な節目の27000円手前では上値の重さが意識されるものの、堅調な地合いが継続しそうだ。
■IPOラッシュでテーマ株は絞り込み
メジャーSQを通過すると物色動向が変わることがある。ワクチン承認と接種の開始でその効果の見極めにはまだ時間が掛かるものの、経済指標の支援があると景気敏感株の買い戻しが強まる流れが生じやすい。また、11月30日から途絶えていたIPO(新規上場)が15日から再開される。15日から18日の4日間で12銘柄が登場するラッシュだ。IPOに個人投資家の関心がシフトすることで、11月から広く人気化していたEV(電気自動車)および水素関連の物色は対象が絞られてくることになりそうだ。また、IPO申し込みで滞留していた資金がマーケットに循環し始めることで、利益確定対象になってきた時価総額上位の新興市場銘柄のリバウンド狙いの動きが高まってくる期待も膨らむ。
■日銀短観、FOMC、米11月小売売上高
来週の主な国内経済関連スケジュールは、14日に12月調査日銀短観、10月第三次産業活動、16日に11月貿易統計、11月訪日外客数、17日に日銀金融政策決定会合(18日まで)、11月首都圏新規マンション発売、18日に黒田日銀総裁会見、11月全国消費者物価指数がそれぞれ予定されている。一方、米国など海外主要スケジュールは、14日に米大統領選挙の選挙人による投票、欧州議会本会議(17日まで)、15日にFOMC(米連邦公開市場委員会、16日まで)、米12月NY連銀製造業景気指数、米11月輸出入物価、米11月鉱工業生産・設備稼働率、中国11月工業生産・11月小売売上高、16日にパウエルFRB議長会見(経済見通し発表)、米11月小売売上高、米12月NAHB住宅市場指数、17日に米11月住宅着工件数、米11月建設許可件数、米12月フィラデルフィア連銀製造業景況感指数、18日に米7-9月期経常収支が発表予定にある。
《FA》
提供:フィスコ