【特集】本格普及期への転換点、CO2削減で色めき立つ「EV関連株」 <株探トップ特集>
脱炭素社会の実現に向け、世界で加速するEV化の潮流。今後は先行する欧米メーカーと巻き返しを図る日本メーカーがガチンコ勝負を繰り広げることになりそうだ。
―世界で広がるカーボンニュートラル宣言、今後は環境対応車が成長の主軸に―
地球温暖化が世界的な問題として認識されるなか、各国が温室効果ガス削減に向けた新しい環境目標を打ち出している。菅首相は10月26日の所信表明演説で2050年までに排出量を実質ゼロにすると宣言した。既に3月には欧州連合(EU)が50年までに二酸化炭素(CO2)の排出量と吸収量を等しくするカーボンニュートラル戦略の概要を公表しているほか、9月には中国が60年カーボンニュートラルを表明している。目標達成に向けて産業界は変革が迫られることになり、自動車業界では電気自動車(EV)へのシフトが一段と加速しそうだ。
●「脱ガソリン」の動き加速
脱炭素社会に向けた対応が急務となっていることを背景に、世界的な潮流として自動車からのCO2排出を削減するための規制強化が進んでいる。中国の自動車専門家組織「中国自動車エンジニア学会」は10月27日、工業情報化省の指導のもと作成した「省エネルギー・新エネルギー車技術ロードマップ2.0」を発表。35年をメドに新車販売に占める新エネルギー車(EVなど)の比率を50%まで高めることが望ましいとしており、同国政府はこの答申を受けて今後の政策を決定する見通しだ。
自動車業界に「脱ガソリン」を求める動きは欧米が先行し、英国が2月にガソリン車とディーゼル車の新規販売を35年に禁止すると表明しているほか、フランスも40年までに同様の規制を設ける方針。9月には米カリフォルニア州知事が35年までに州内で販売されるすべての新車を排ガスが出ないゼロエミッション車にするよう義務づけると発表している。
環境意識の高まりからEV化の流れは避けられず、独フォルクスワーゲンは24年までに電動モビリティー分野に330億ユーロを投資する計画を打ち出している。日本でもブランドイメージの高い米EVメーカーのテスラは一段と攻勢をかけており、10月下旬に発表した7-9月期決算は最終利益が前年同期比2.3倍の3億3100万ドルに拡大した。欧米勢に対してハイブリッド車(HV)展開を重視してきた日本メーカーは出遅れ感が否めないが、ここにきて巻き返しに向けた動きを強めている。
●国内メーカー巻き返しへ
10年にEV「リーフ」の初代モデルを発売した日産自動車 <7201> は、今年9月に開催された北京モーターショーで、21年に中国での販売を予定する新型クロスオーバーEV「アリア」を発表。同社は25年までにEVもしくはe-POWERで駆動する電動パワートレイン搭載車を9モデル投入する計画だ。トヨタ自動車 <7203> は今春に中国EV関連大手のBYDと研究開発に関する合弁会社を設立したほか、10月にはレクサスブランド初のEV市販モデル「UX300e」の商談申し込みの受け付けを開始している。
また、ホンダ <7267> は9月に米ゼネラルモーターズ(GM)と電動パワートレインを含めた北米での戦略的提携で合意したことを明らかにしているほか、10月には新型EV「Honda e(ホンダ イー)」の国内販売をスタート。三菱自動車工業 <7211> は11月、30年までに電動車比率を50%まで高めるなどとした新環境計画パッケージを発表した。
商用車の分野では日野自動車 <7205> が10月にBYDと商用EV開発の新会社設立に向けて合弁契約を締結したと発表。いすゞ自動車 <7202> も同月、スウェーデンのボルボ・グループと電動化など先端技術の開発を含めた戦略的提携に関する基本契約を結んだ。
このほか、今年1月に米ラスベガスで開催されたIT家電ショー「CES 2020」でコンセプトEVモデル「VISION-S(ビジョン エス)」を発表したソニー <6758> の動向にも注目しておきたい。
●電池、モーター関連に商機
EVの更なる普及が追い風となるのが、航続距離や安全性を左右する基幹部品であるリチウムイオン電池 及び駆動モーターを手掛ける企業だ。パナソニック <6752> は、ひとつの電池の中にどれだけの電気を詰められるかを表す「エネルギー密度」を飛躍的に向上させる新技術を導入することで、5年以内に従来比20%まで高める計画。デンソー <6902> はこのほど、EVの燃費向上につながる次期型「リチウムイオン電池監視IC」を開発した。
これ以外では、リチウムイオン電池向け正極材を扱う田中化学研究所 <4080> [JQ]や戸田工業 <4100> 、リチウムイオン電池向けセパレーター(絶縁体)を手掛けるニッポン高度紙工業 <3891> [JQ]やダブル・スコープ <6619> などのビジネス機会が拡大しそうだ。
モーターでは、日本電産 <6594> のトラクションモーターシステム(E-Axle)を採用した車種の販売台数が着実に増えているほか、明電舎 <6508> は10月にEV用モーターの新工場が本格稼働。モーター用巻線機大手の小田原エンジニアリング <6149> [JQ]、EVモーター用高速回転グリース潤滑玉軸受などを提供するジェイテクト <6473> 、モーターとギアボックスを一体化した製品を手掛けるユニバンス <7254> [東証2]などもマークしておきたい。
●普及のカギ握る充電インフラ
自動車業界の生命線を握るとみられるEVだが、国内市場が一段と拡大するためには充電インフラの整備が大きなテーマとなる。こうしたなか、出光興産 <5019> とデルタ電子(東京都港区)は8月から、サービスステーション跡地を活用した複合型EV充電サービス「Park & Charge」の実証を開始。東京電力ホールディングス <9501> と中部電力 <9502> が共同出資するe-Mobility Power(イーモビリティパワー)は11月初旬、充電インフラ整備でホームセンターを運営するカインズ(埼玉県本庄市)と提携すると発表した。
こうした流れは充電器を展開するモリテック スチール <5986> 、東光高岳 <6617> 、日東工業 <6651> 、新電元工業 <6844> 、ニチコン <6996> に好影響をもたらしそうで、ダイヤモンドエレクトリックホールディングス <6699> のグループ会社がこのほど開発した充電機能に複数機能を統合した3in1タイプの車載充電器への需要も期待できそうだ。
株探ニュース