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【市況】S&P500 月例レポート ― 9月は3.9%下落、新型コロナへの懸念高まる (2) ―


●トランプ大統領と政府高官

 ○トランプ大統領は米疾病対策センター(CDC)が有する感染対策の権限を活用し、低所得者層に対して2020年末まで家賃滞納による立ち退きを一時猶予する措置を実施すると発表しました。2021年には、今回猶予措置を受けた賃貸人は未払い家賃を支払う必要があります。

 ○国交正常化(と対イラン包囲網の強化)を模索していたイスラエル、バーレーン、アラブ首長国連邦(UAE)と米国はホワイトハウスで和平協定に署名しました。

 ○米下院は12月11日(2021会計年度は2020年10月1日にスタート)まで政府資金を手当てする暫定予算案を可決しました(賛成359、反対57)。

 ○トランプ大統領は先日死去したリベラル派の最高裁判事ギンズバーグ氏の後任に保守派のエイミー・コニー・バレット連邦控訴裁判事(48歳)を指名しました(バレット氏は2017年にトランプ大統領によって控訴裁判事に指名されています)。共和党が過半数を握る上院で最高裁判事団の構成(バレット氏が承認されれば最高裁判事の構成は保守派6名とリベラル派3名となります)を巡って共和党が過半数を握る上院で議論が紛糾すると予想されていました。

 ○政局は盛り上がりを見せています。全ての言動が11月3日の大統領選挙とその結果が議会の上下両院の構成に及ぼす影響を意識しているといえるかもしれません。

●新型コロナウイルス関連

 ○感染状況等:

  ⇒米国では新型コロナウイルスの累計感染者数が720万人を超え(8月は600万人、世界の感染者数は8月が2500万人で9月は3380万人)、死者数は20万6000人(同18万2000人)を上回りました(世界全体の死者数は8月の84万3000人から増加して9月は101万1000人)。

 ○CDCは各州に対して2020年11月1日までにワクチン接種の準備に入るように要請しました。現時点で複数の治療薬が臨床試験段階にありますが、現時点ではいずれの治療薬の臨床試験を終了していません。

 ○イスラエルでは感染拡大(感染者数と死者数)を受けて、(ユダヤ教の新年が始まるのに先立って)9月18日から国内全土で2回目のロックダウンを実施すると発表しました。

 ○英国政府は新型コロナウイルス関連の新たな制限措置を発表し、可能な場合には再び在宅勤務を行うように要請しました。

 ○新型コロナウイルス支援策第4段階を巡っては(「パンがないならケーキを食べればよい」的な議論に見えなくもありません)、交渉の決着が見通せなくなりました。というのも、最高裁判事の後任人事が与野党対立の俎上に新たに上がってきたからです。

 ○米国では経済活動の再開を巡り意見の対立が続いています。再開を目指す学校は増えたものの、多くは再開日を遅らせるかオンライン授業に戻ることを余儀なくされています。

 ○全米レストラン協会はコロナ禍の影響で10万件の飲食店が閉店(完全閉店もしくは長期休業)したと発表しました。

 ○感染拡大は続いており、ニューヨーク州では新規感染者数が6月以来の水準に逆戻りしました(1日の感染者数が1000人)。

 ○新型コロナウイルスの治療法と夢の万能薬

  ⇒米食品医薬品局(FDA)は新型コロナウイルスワクチンの審査プロセスを延長すると発表しました。

  ⇒世界156ヵ国が新型コロナウイルスワクチンへの平等なアクセスを担保する共同購入のために180億ドルを拠出しました。米国は世界保健機構(WHO)が主導していることを理由に、同枠組みへの参加を見送りました。米国では2021年7月にWHOを脱退する手続きが進められています(中国とロシアも同枠組みには参加していません)。

  ⇒新型コロナウイルス治療薬の研究も進んでいます(その動きは加速しており、少なくとも市場にとっては多少の支援材料となっています)。Pfizer(PFE)は有効性の評価で前進が見られたことを報告しています。Johnson & Johnson(JNJ)も最終段階の臨床試験に着手し、2021年の早い段階で終了する可能性があることを明らかにしました。Moderna(MRNA)とAstraZeneca(AZN)は、英国オックスフォード大学と共同開発中のワクチンの第3段階の臨床試験を継続中です。

●各国中央銀行の動き

 ○地区連銀経済報告(ベージュブック)によると、米国経済は大半の地区で拡大しているが、そのペースは緩慢となっています。また、一時帰休が解雇となるケースが発生していることが指摘されており、不透明感が強いことも示されました。

 ○イングランド銀行は政策金利の据え置き(0.1%)を決めましたが、マイナス金利導入の可能性があることを示唆しました(導入されれば326年の歴史の中で初めての出来事です)。

 ○米連邦準備制度理事会(FRB)は、大手銀行に課した配当と自社株買いの制限措置を年末まで延長する可能性を示唆しました(大手銀行は2020年第2四半期の自社株買いは実施せず、第3四半期も見送る方針を公表しています)。また銀行に対する新たなストレステストを準備していることを発表しました(また、これまでは銀行全体としての結果を公表してきましたが、次回は対象となる33行の個別の結果を公表することを明らかにしました)。

  ⇒パウエルFRB議長は上院での議会証言で、米国経済が完全に回復するまでには長い時間を要し、更なる支援策が必要だと述べました。

●企業業績

 ○第2四半期の利益予想は既に2019年末時点から(2020年第2四半期末までの間に)47.3%引き下げられていたため、全体の82.3%に上る企業の利益が予想を上回りました。「期待していなかった」第2四半期の業績は「失望感を伴わない」結果となりました。現時点での第2四半期の業績を見ると、502銘柄が決算発表を終え、82.3%に相当する413銘柄で利益が(下方修正済みの)予想を上回りました。売上高に関しては、501銘柄中313銘柄(62.5%)が(下方修正済みの)予想を上回りました。第2四半期は前期比で37.4%の増益となりましたが、前年同期比は33.3%の減益となりました。

  ⇒第3四半期が始まりましたが、決算時期がずれている16社が第3四半期結決算を発表し、そのうち14社が予想を上回り、1社は予想を下回り、1社は予想通りでした。また、15社のうち12社が売上高予想を上回りました。第3四半期の利益予想は6月末からほぼ横ばい(3.7%増)で、前期比19.6%の増益、前年同期比で19.5%の減益となっています。

  ⇒第4四半期の利益予想は、6月末から0.6%下方修正され、前期比10.8%の増益、前年同期比9.4%の減益が予想されています。

  ⇒その結果、2020年の予想EPSは27.5%の減益となり、それに基づく目下の予想PERは29.5倍となっています。

  ⇒2021年については、企業利益は大幅に増加して、過去最高を更新すると予想され、2020年から44.3%の増益(2019年から4.6%の増益)が見込まれています。それでも2021年の予想PERは20.5倍と引き続き高い水準になっています。

  ⇒2020年6月末時点で、17.8%の企業で2019年6月末と比較して4%以上株式数が減少しました(2019年6月末時点では24.2%)。

  ⇒企業が自社株買いを縮小しているため、2020年第3四半期に関しては、株式数による前年同期比での影響は弱まる見通しです。自社株買いの縮小は、四半期ベースで発行済み株式数が減少した企業を見ると明らかです。

※「9月は3.9%下落、新型コロナへの懸念高まる (3)」へ続く

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