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【特集】賃貸住宅の火災で自室が延焼被害、あなたの失った家財や部屋の原状回復義務は?

清水香の「それって常識? 人生100年マネーの作り方」-第12回

清水香(Kaori Shimizu)
FP&社会福祉士事務所OfficeShimizu代表
清水香1968年東京生まれ。中央大学在学中より生損保代理店業務に携わるかたわらファイナンシャルプランナー(FP)業務を開始。2001年に独立後、翌年に生活設計塾クルー取締役に就任。2019年よりOfficeShimizu代表。家計の危機管理の観点から、社会保障や福祉、民間資源を踏まえた生活設計アドバイスに取り組む。一般生活者向けの相談業務のほか執筆、企業・自治体・生活協同組合等での講演活動なども幅広く展開、テレビ出演も多数。 財務省の地震保険制度に関する委員を歴任、現在「地震保険制度等研究会」委員。日本災害復興学会会員。

前回記事「あなたの自治体の洪水ハザードマップは新基準? 浸水リスクに応じ火災保険料に格差も」を読む

先日、ふとしたことから賃貸住宅の火災保険の話になり、「あれって、入らないとだめなんですかね」と尋ねられました。

東京都では、住む人の半数以上が賃貸住宅に住んでいます。その入居者は多くの場合、賃貸借契約を結ぶたびに不動産会社などが勧める火災保険に加入しています。
いつも不動産会社の勧められるままに契約をしていたけど、「そもそも保険に入らなくてはダメなの?」と疑問を持つ人もいます。
人生100年マネーの作り方

結論から言えば、賃貸住宅であっても火災保険の加入は必要です。ただし、賃貸借契約と火災保険は別の契約なので、必ずしも不動産会社などが勧められるものに入らなくてもよいのです。
その補償内容はどれも同じように見えますが、見逃せない違いもあります。深刻な事態でこそ、その違いが大きな差となり、場合によっては人生100年マネーの形成も危ぶまれる可能性も。賃貸派も火災保険を選ぶ時代。これが「新常識」です。
隣家から出た火事で被害は、賠償を受けられない!?

まず基本的なことを確認すると、持ち家でも賃貸住宅でも、そもそも火災保険に加入が欠かせないのには、こんな理由があります。

わが国で、私人の生活関係のルールを定めているのは民法です。その709条には、故意または過失によって第三者に損害を与えたら、賠償しなくてはならないと定められています(「不法行為」)。だから自動車や自転車の運転で他人にケガを負わせたり、モノを壊したりすると、民法上の責任が生じて、被害者にその損失を賠償しなくてはならないわけです。

ところが、火災はその例外。「失火責任法」という民法の特別法があり、火元に重大な過失がない限り、この法律が民法709条の規定を打ち消すからです。つまり、自分が火元になり隣家に損害を与えても賠償請求されない一方、隣家の火災で延焼被害に遭い、住宅や財産を失っても、原則として火元に賠償を求められないのです。

この法律が設けられた明治時代は、木造家屋が多くいったん火が出れば延焼は不可避でした。誰でもどんなに気を付けていても、うっかりミスはつきものですし、自ら財産を失っている火元に、延焼の責任まですべて負わせるのは酷というもの。

こうした理由から失火責任法は設けられました。そのため、誰もが自ら火災保険に加入して、思わぬ事態に備えておかないと、突然、すべての財産を失うことにもなりかねません。

お隣の部屋が火元でも、自室の被害は補償されない

内閣府の調査によれば、火災保険の加入率は共済も含め約8割。いまだ不十分ですが、失火責任法を知らないが故の誤解もあるようです。
「オール電化だから」「タバコ吸わないから」と耳にすることもありますが、隣家の火災まで自分がコントロールできないことは言うまでもありません。
こうした理由から、持ち家世帯に限らず、賃貸住宅でも火災保険の加入は必須です。では賃貸借契約時に加入する火災保険とはどのようなものでしょうか。大きなポイントは、借りた住宅に持ち込んだ自分の家財が補償の対象で、「家財保険」とも言われます。
風水害や水濡れ損害などで被った家財の損害もカバーできます。床上浸水など水害リスクのある立地なら、水害を適切にカバーできる保険を選びたいところです。
設定する保険金額は、持っている家財をざっと積算するのがベストです。実際に損害が起きた時は、損害のあったものを一つ一つ書き出し申告するので、掛け過ぎてもムダになりますし、少なすぎれば役に立ちません。

ちなみに自然災害で被災借りている物件が全壊または大規模半壊となった場合、被災者生活再建支援法が適用されれば、入居者は100万円または50万円の支援金を受け取れます。その物件に住めなくなり、退去することになれば敷金も全額戻るので、支援金と敷金、保険金を受け取り、新たな生活を始めることになります。

これまでの住まいを失うことにはなりますが、持ち家世帯と異なり住宅再建の費用負担はありません。被災時の資金リスクが抑えられる点は賃貸住まいの大きなメリットです。

賃貸住まいの火災保険にはどんな補償がある

賃貸住まいの火災保険に話を戻します。

先に説明したように賃貸向けの火災保険は家財を補償します。これに加えて

「個人賠償責任保険」
「借家人賠償責任保険」


――という2つの特約が付帯されています。

最初に挙げた「個人賠償責任保険」は、過失により日常生活上で他人に損害を与え、民法上の損害賠償責任を負ったときを補償します。自宅で水漏れ事故を起こして階下の住宅に損害を与えた、ペットが他人にケガを負わせたなど、住まい関連のみならず、業務中を除く日常生活上で生じた賠償責任をカバーできます。

自分が将来、他人にどのような損害を及ぼすかを予測することはできません。よって保険金額は少なくとも1億円は欲しいところ。さらに被害者との間に入り示談を代行するサービスがついていれば心強いでしょう。ここもチェックポイントです。

入居者は原状回復義務から逃れられない

もう1つの「借家人賠償責任保険」は、入居者が火災や水濡れ損害等を起こした際、家主に対する損害賠償責任をカバーできるものです。

賃貸借契約上、入居者は借りている建物を原状回復して家主に戻す義務を負いますが、建物に損害を与えれば、それを果たせなくなります(「債務不履行」)。前述の失火責任法は、民法709条の規定は打ち消すものの、債務不履行については何ら規定していません。

このとき火元である入居者が家主に対して負う損害賠償責任を、この保険でカバーできます。ただ通常は、家主自身が所有する建物には火災保険をかけていますから、これを利用して修繕を図る場合もあるようです。



 

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