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【特集】“小池関連銘柄”再出馬へ、都知事選接近で“繚乱相場再び”の未来図 <株探トップ特集>

東京都知事選が近づいている。小池百合子都知事の再出馬と再選が有力視されるなか、株式市場でも小池氏の一挙手一投足が注目されている。関連有望株をクローズアップした。

―コロナ禍で再選は確実、全身全霊で打ち出す小池プランにマーケットの視線集中―

 東京都知事選挙(6月18日告示、7月5日投開票)が迫っている。小池百合子知事については、10日の都議会定例会最終日にも再出馬を表明するとの見方が強い。株式市場においては、小池知事の政策テーマを材料視する傾向があり、今回の選挙戦にも注目が集まりそうだ。ただ、 新型コロナウイルスの感染拡大という異例の状況のもとでは、まずは医療体制の拡充、そして懸念が深まる雇用と経済に向けた施策が争点になることが予想される。そうしたなかにおいても、甚大な被害となった昨年の自然災害を踏まえ、電線地中化をはじめとする災害対策についても選挙戦のなかで言及する可能性が高い。“小池関連”ともいわれる、関連銘柄の動向を追った。

●関心は、やはり新型コロナ対策

 非常事態ともいえるコロナ禍での今回の都知事選だが、小池知事が出馬を決めれば再選確実との見方が大勢だ。2016年の夏、「小池劇場」ともいわれた熾烈な選挙戦の末に、小池都知事が誕生した当初からの重要政策テーマである 電線地中化関連株をはじめ、さまざまな政策に絡む銘柄が動意するなど、株式市場での関心も非常に高い。最近でも、昨年9月に関東を襲った台風15号の被害からの復旧が遅れるなか、小池知事が会見で「無電柱化の加速」について言及し、更に「これはまさしく防災そのもの」としたことで、電線地中化関連株の一角が動意することになった。

 ただ、ここにきての都民の関心は、やはり新型コロナ対策に集中している。当然、小池知事も立候補を表明すれば、感染対策に絡む政策を有権者に向けて訴えることになる。株式市場でも、感染が拡大するなかでマスクや防護服、治療薬・ワクチン開発、検査に関する銘柄といったあらゆる対策関連株に物色の矛先が向かい、まさに“コロナ一色”の様相を続けていた。こうしたなか、2日には東京都が警戒を呼び掛ける「東京アラート」が発動し感染第2波への緊張が高まっているが、小池氏が選挙戦で不安定な医療体制や医療資材に言及した場合、関連銘柄への注目度が再び高まる可能性もある。

 5月27日に行われた都議会定例会の小池知事の所信表明でも「引き続き全身全霊で対策にまい進していく」と決意を述べている。また「5月13日には、医療機関・社会福祉施設などに提供するマスクや個人防護具などを緊急的に調達するため、約32億円の買い入れを行った」(専決処分により対応)と発言している。

●「N95」で興研、重松製

 一般の人が使う マスクに関しては、徐々にではあるが市中でも出回り始めており不足解消の気配が見え始めたが、医療用の高性能マスク「N95」に関してはけっして潤沢とはいえない。秋にも大規模感染の再拡大が懸念されるなかで備蓄も含め、今後も安定供給が求められている。興研 <7963> [JQ]、重松製作所 <7980> [JQ]といったN95マスクを手掛ける銘柄からは、今後も目が離せない状況だ。両銘柄とも業績は好調。興研は新型コロナ感染拡大による対策用マスク需要が急増、重松製もマスクに加え保護衣などの受注が大きく増加したことが業績を押し上げている。株価は、それぞれ1月に急騰し、同月31日に上場来高値を更新したあと感染状況に応じ時折急動意を見せながら次第に調整し、現在は高値圏の半値水準で推移している。

 また、ユニ・チャーム <8113> をはじめとするマスク関連、アゼアス <3161> [東証2]など防護服関連株への注目も怠れない。ユニ・チャームは5月14日に連結決算を発表。20年12月期第1四半期(1-3月)の税引き前利益は前年同期比33.3%増となる279億1000万円に拡大。マスクやアルコールウェットティッシュなどの感染症対策商品を中心に特需が発生したことが業績を押し上げた。アゼアスも5月27日の取引終了後、集計中の20年4月期連結業績予想について、営業利益が3億2600万円から4億6900万円(前の期比65.1%増)へ上振れて着地したようだと発表。主力の防護服・環境資機材事業でタイベック防護服のシェア拡大と新規防護服分野の市場創造に注力したことに加えて、断続的に発生する豚熱の封じ込め作業に伴う需要や、新型コロナに絡む需要に対応したことが奏功した。

●松屋R&Dは大口案件受注

 こうしたなか、松屋アールアンドディ <7317> [東証M]が1日取引時間中に、防護服(アイソレーションガウン)の大口案件を受注したと発表している。新型コロナの感染拡大に伴う防護服不足の解消を目的に、事業会社及び商社から国内向けに供給するものとして約50万着の生産依頼を受けたという。受注金額は非開示で、子会社タカハターが専用のラインを設置して生産するとしており、21年3月期の売上高、利益に相当程度寄与する見込みだ。同社は4月6日にマザーズ市場に上場したばかりのニューフェースで、これを受けて同日にはストップ高となった。株価は、4月21日に3175円まで買われ高値を付けた後は調整し、2200円近辺で推移している。

●みらかHD、迅速診断キットで新たな生産拠点

 また、小池知事は所信表明でPCR検査に加え抗原検査強化の姿勢を見せており、みらかホールディングス <4544> 、医学生物学研究所 <4557> [JQ]、栄研化学 <4549> など「臨床検査」に関連する銘柄にも目を配りたい。とりわけ、みらかHDは5日に子会社富士レビオの迅速診断キット「エスプライン」シリーズの新たな生産拠点として、北海道旭川市に「富士レビオ旭川工場」(仮称)を新設すると発表し、東芝 <6502> [東証2]グループと日立製作所 <6501> グループの参画で早期の稼働を目指すとしている。株価は動意含みで、上値指向を強めそうな気配だ。

●テレワークでサーバワクス、チャットW

  テレワークについては、中小企業などにおける導入を強力に後押ししてきたとし、「引き続き、新たな働き方、新しい日常の定着を力強く推進していく」と所信表明で述べており、選挙戦においても重要政策テーマのひとつとなりそうだ。ブイキューブ <3681> をはじめとする従来の関連株を再び刺激する可能性もあるが、ここにきて新たにテレワークに関するソリューションを提供する企業も急増しており、こうした銘柄の動きも注視しておきたい。3月に、仮想デスクトップサービス「Amazon WorkSpaces」の導入を支援する「リモートワーク導入支援」を提供開始したサーバーワークス <4434> [東証M]や、ビジネスチャットツール「Chatwork」事業を主力に、ESET社提供のセキュリティー対策ソフトウェア「ESET」の代理店販売を行うセキュリティー事業などを展開するChatwork <4448> [東証M]はテレワーク利用拡大で登録IDが増加しており注目だ。

 都内公立学校におけるオンライン教育については「この機会に一気に促進していく」と所信表明で発言。文部科学省も23年度までとしてきた小中学生に1人1台パソコンを配備するGIGAスクール構想を前倒しで進め、今年度末までに実現する方針を発表している。これを材料に、オンライン学習教材を手掛けるチエル <3933> [JQ]や、すららネット <3998> [東証M]など教育ICTに絡む銘柄の株価は上昇波動に乗っているが、選挙戦での小池知事の発言次第では、更なる活躍期待が膨らむことも考えられる。

●忘れちゃならない電線地中化

 もちろん、小池知事のライフワークともいえる電線地中化(無電柱化)からも目を離してはならない。コロナ禍とはいえ、もはや災害対策の一角となった電線地中化の推進は命題のひとつだ。昨年9月、台風15号は関東に上陸し、千葉県や神奈川県を中心とする大規模停電が発生したことで社会生活を大混乱に陥れたが、広範囲に及ぶ倒木が電線や電柱を壊滅的な状態に追いやり、復旧を遅らせることになったことで、改めて電線地中化の重要性を認識するようになった。共同溝などコンクリート2次製品を手掛けるイトーヨーギョー <5287> [東証2]、そしてベルテクスコーポレーション <5290> [東証2]は、株式市場の中でも“電線地中化感応度”が抜群な存在だけに、思惑買いを誘う可能性も少なくはない。そのほかでは、日本ヒューム <5262> 、日本コンクリート工業 <5269> 、また電線地中化に加え5G絡みでも注目される協和エクシオ <1951> などの株価動向にも注意を払いたい。小池知事が立候補を表明すれば、電線地中化関連株もまた“再出馬”の可能性がありそうだ。

 選挙の行方は「蓋を開けてみなければ分からない」といわれるが、自民党は党としての独自候補擁立を断念したことも相まって、今回は小池氏優位との見方が大勢だ。異例のコロナ禍での選挙戦となるが、小池知事の出馬表明が接近と伝わるなか、関連銘柄の動向から目が離せない状況が近づいている。

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