【特集】アフターコロナに照準! 年後半相場をリードする重要3テーマ大検証 その3 大統領選 <GW特集>
コロナショックでトランプ大統領の景気拡大と株高の実績は帳消しとなった。しかし、民主党のバイデン候補の支持も広がりに欠け選挙は混戦となりそうだ。
―米景気急降下で現職有利は後退、共和・民主ともに決定打に欠ける―
11月に行われる米大統領選挙が半年後に迫ってきた。現職のトランプ米大統領が掲げてきた景気拡大と株高の実績は、 新型コロナウイルスの感染拡大により激変。米景気は急降下しており、株価も急落した。ただ、民主党の大統領候補となる見込みのバイデン前副大統領も「カリスマ性に欠ける」との声もあり広範な支持を獲得するには至っていない。2020年後半のマーケットを大きく左右する米大統領選の行方を探った。
●サンダース氏撤退で民主党候補はバイデン前副大統領が確実に
米国の大統領選挙は11月3日に投開票が行われる。大統領選序盤の最大の焦点は、共和党のトランプ大統領の対抗馬となる民主党の候補が誰になるかだった。その民主党の候補者選定レースは、サンダース上院議員が4月上旬に撤退を表明したことでバイデン氏が選ばれることはほぼ確実となった。今後の米大統領選のスケジュールを確認すると、8月に共和党と民主党が党大会を開き、それぞれの党の正式な候補を指名。9~10月に3回のテレビ討論会が開かれ、11月の選挙へと向かうことになる。
過去の米大統領選の結果では、2期目を目指す現職大統領は圧倒的に強い。1期(4年間)のみの大統領となったのは、戦後では共和党のジェラルド・フォード、民主党のジミー・カーター、共和党のジョージ・H・W・ブッシュ(父)の3人のみだ。現職は実績を示しやすく、メディアへの露出度が高く、既に名前が浸透しているという強みがある。しかし、「現職の大統領が有利なのは経済が順調な時だけ」(アナリスト)ともいわれる。年初まで、米国経済は絶好調で失業率は約50年ぶりの低水準にあり、 NYダウも過去最高値を更新していた。ただ、新型コロナウイルスの感染拡大で状況は一変した。ニューヨーク州やカリフォルニア州など主要州がロックダウン(都市封鎖)を実施したことの影響で、米経済は急激な悪化となっている。
●新型コロナの感染拡大で米国経済はつるべ落としの悪化に
1~3月期の米国内総生産(GDP)は前期比年率で4.8%減と約11年ぶりの大幅なマイナス成長に転落した。また、3月の失業率は4.4%に悪化し、遠からず20%近辺に達するとの見方もある。トランプ政権下で急上昇していた株価も3月には一時、就任時を下回る水準まで落ち込んだ。トランプ大統領が経済面での実績を示すことは、もはや難しくなっている。
一方、新型コロナウイルスとの闘いは「戦争」にも例えられる危機的な状況となっている。このような情勢下では、米国においては大統領の支持率が上がることが少なくない。しかし、トランプ大統領は当初、新型コロナウイルスを軽視していたとみられており、最近でも「感染者の体内に消毒液を注射したりする治療はどうか」と述べ、物議を醸すなど危機をばねに支持率を伸ばすには至っていない。しかし、トランプ大統領の支持率は伸びてはいないが、大きく減らしてもいない。「トランプを支えている岩盤層は、何があっても支持の姿勢は変えていない」(市場関係者)からだ。
●バイデン氏は「カリスマ性に欠ける」との声、環境関連株には追い風に
足もとでは、トランプ氏とバイデン氏のどちらが米大統領選に勝つかという調査では、バイデン氏が勝利するという結果が出ている。では、米国の経済情勢が厳しくなるなか、民主党のバイデン氏がこのまま優勢に立ちそうかというと、そうとも言い切れない。オバマ政権時代の副大統領を務めたバイデン氏は、知名度はあるが「カリスマ性に欠けている面は否めない」(アナリスト)という。就任時に78歳という高齢もネックだ。政策は中道で幅広い層の支持を獲得できる点では有利な面はある。しかし、民主党の大統領候補戦で最後まで競い合ったサンダース氏の支持層をどこまで取り込めるかにも不透明感が強い。
バイデン氏が大統領に当選した場合、パリ協定への復帰が予想される。このため、環境関連政策は推進されるとみられており、米国では電気自動車メーカーのテスラなどに追い風になるとみられている。また、サンダース氏の支持層を取り込むために左派寄りの政策が打ち出される可能性がある。そのひとつが「オバマケア(医療保険制度改革法)」の拡充だ。不法移民を含む全ての米国民に開かれた公的保険制度の創設が目指されている。この動きは米国の医療保険大手ユナイテッドヘルス・グループや製薬のジョンソン・エンド・ジョンソンなどのヘルスケア株には逆風となる可能性がある。日本の武田薬品工業 <4502> などの銘柄の上値を抑えることになるかもしれない。
●新型コロナ収束の有無が選挙戦を左右する展開に
一方、現職のトランプ陣営はコロナ危機をいかに抑え込むかに全力を注ぐことになる。経済のV字型回復を果たすことができれば、再選の可能性は大きく高まるほか、2期目の支持率を上げることにも直結する。トランプ氏が再選に成功した場合、米国経済の再興に向けインフラ投資を積極化させるとの見方がある。民主党のバイデン氏が当選した場合も、インフラ投資には注力するとみられている。米国ではキャタピラーやスリーエムのような資本財株、日本株では太平洋セメント <5233> や三菱マテリアル <5711> のようなセメント株や塩ビ大手の信越化学工業 <4063> などの銘柄に追い風となることが予想される。
いまのところ、トランプ大統領は岩盤層の支持は確保しているにとどまり、16年の選挙戦のような熱気には欠けている。また、民主党のバイデン氏もアンチトランプ層の受け皿となることが期待されるが、積極的なサポートを得るには至っていない。結局は、「11月までにコロナ危機が収束の方向に向かうのか、危機的な状態が続いたままなのかで、大統領選の結果も左右される」(アナリスト)との見方が多い。危機が収束方向に向かえば、株価も上昇しトランプ再選の公算が高まってくる。NYダウも11月に向け2万6000ドル超えも見込めるだろう。一方、コロナ危機が収束しない場合、NYダウは再度、2万ドル割れも意識されるなかバイデン氏が優勢となる展開も予想されている。
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