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【経済】「金正恩委員長の重体説」の現状把握


4月21日午前中、CNNはじめ複数のメディアが「金正恩委員長重体」を報じた。一方、韓国は、「韓国軍は、北朝鮮軍や警察の無線を常時傍受しているが、平壌は正常であり、南北軍事境界線(DMZ)なども異常がないことを確認している」と発表している。

ここ数週間の北朝鮮に関する動きを振り返ると、2月11日、フランスの医師団が平壌入りし、政府高官の治療に当たったとの報道がなされた。4月11日、金正恩委員長は、「朝鮮労働党政治局会議」に参加したが、4月12日、2020年度における予算や人事を決定する「最高人民会議」を欠席し、以後公の場に現れていない。その後の4月14日、今年に入って5度目となる文川周辺からのミサイル発射を行っているが、金委員長の視察は報じられていない。重病説の大きな要因として、翌4月15日、北朝鮮最大の祝日、建国指導者・金日成主席の誕生日を祝う「太陽節」に現れなかったことが指摘されている。太陽節に金委員長は高官らを率いて太陽宮殿に並んで参拝し、「白頭血統」の偉大さを内外に誇示するのが恒例行事となっていた。2014年10月、手首足首の手術により40日間姿を現さないこともあったが、この重要行事の欠席は異例中の異例といえるだろう。

その後、4月18日、トランプ大統領は、「金正恩委員長から素敵な手紙をもらった。金正恩氏とはとても良好な関係を維持できている。もし、私が大統領でなければ、今頃北朝鮮と戦争になっていたかもしれない」と自らの業績を強調した。ところが翌4月19日、北朝鮮の外務省対外報道室長は談話を発表し、「北朝鮮最高指導部は米大統領にいかなる手紙も送っていない」とトランプ大統領の談話を真っ向から否定している。金正恩委員長の消息についてトランプ大統領が虚偽のコメントを発表する動機があるとは考えづらく、また、北朝鮮外務省の意図も不明確であり、現時点で真偽のほどは定かではない。

北朝鮮での指導者の交代があるとすれば、金正恩委員長の時のように円滑に推移するとは思われない。金正恩委員長の場合には、幼少期より後継者と目され、枢要なポストに就き、2011年、権限を継承するまで周到な準備がなされてきている。しかしながら、金与正氏の場合、昨年10月、突如として金正恩委員長の白頭山登山に際して口頭で指名されたに過ぎず、当時のポストも党宣伝扇動部第一副部長であり、軍部や政治指導部を完全に掌握しているとはいいがたい状況であった。果たして、人心を掌握できるかが疑問視されている。軍事クーデター、民衆蜂起など北朝鮮国内で大きな混乱が生じた際には、多数の難民が押し寄せるものと見積もられている。

これらの状況に鑑み、我が国としては、北朝鮮の動きや各種報道について、しっかり情報収集や警戒監視を継続しなければならない。
《SI》

 提供:フィスコ

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