【市況】国内株式市場見通し:買い戻し一巡感、資金の逃げ足の速さに注意
日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
■19000円台を回復
先週の日経平均は週初から意外な底堅さをみせ、週を通してみれば上下に2000円もの値幅が生じる値動きの激しい1週間となった。米政権による大規模経済対策における与野党間の合意に難航が生じているとの報道が伝わったことで、週初月曜日には、寄り付き前のシカゴ日経225先物が一時15060円まで急落する局面もみられたが、直後の日経平均は予想外に上昇して始まり、結局300円を超す上昇で取引を終えた。個別どころで、自己株式取得と負債削減のために最大4.5兆円の保有資産売却・資金化を決定したソフトバンクG<9984>の急伸が寄与したところもあった。週半ばには、FRBが量的緩和を無制限に実施する意向を表明したことや週初の日経平均の底堅さが意識されたことで、それまで大きく売られていた半導体関連などを中心に急速なショートカバーの動きが続いた。また、難航しているとの報道もあった2兆ドル規模の米国の大規模経済対策が最終合意に至ったと伝わったこともこうした動きに拍車をかけた。こうした背景から、前週末19日には16000円台半ばにあった日経平均は1000円を超す急騰を2日続ける格好となり、節目の19000円をも一気に回復した。ただ、急ピッチな戻りに対する警戒感が浮上したことに加え、東京都などが週末の外出自粛を要請したことが消費鈍化を意識させる重し要素となり、週後半木曜日には利益確定売りが優勢となる形で日経平均は再び19000円台を割り込んだ。それでも、最終金曜日には、米経済対策の早期成立を期待した米国市場の大幅高のほか、配当再投資に伴う買い需要やファンドによる期末のドレッシング買いなども寄与して、再度19000円台を回復して週を終えた。
■発表される経済指標を一つ一つじっくりと確認
今週は、いよいよ新型コロナウイルスの影響を織り込み始めた経済指標の発表が相次いでくる。前週末に先んじて発表された週間の米新規失業保険申請件数は過去最大の300万件程度と市場予想を大きく上回る急増ぶりをみせ、雇用情勢の不透明感が強まったものの、米国市場も日本市場も経済対策への期待の方が勝る格好となっていた。予想を超える程度の悪い指標が出ても、相場は既にそこまで織り込んでいるということなのか、まだ見極めがつかない状況だ。しかし、今週は4月1日(水)に日銀短観、米ADP民間雇用統計、米ISM製造業景気指数、3日(金)には米雇用統計、米ISM非製造業景気指数など主要な経済指標が相次いで発表される。日銀短観については、事前の市場予想では、大企業製造業の業況判断指数(DI)が7年ぶりにマイナスに転じるとの見方が広がっており、国内景気の先行きに対する強い警戒感が浮上している。また、その他の米雇用統計や米ISM製造業・非製造業景気指数などは、上述の米新規失業保険申請件数よりも相当に重要な指標である。それ故、さすがにこの辺りの各経済指標が軒並み予想値を大きく下回るということがあれば、市場も反応せざるを得ないのではないかという懸念がある。2008年のリーマンショック時には二番底があったが、今回もこれが警戒されている。時間軸を重ねれば、今回の二番底がくるのは7月、8月あたりだ。実体経済への影響度合いを確認するまでは相場の方向性には確信が持てないため、安易な押し目買いは控え、発表される経済指標を一つ一つじっくりと確認していくことが大事となろう。
■買い戻し相場は一巡か
また、売り方による信用評価損益率も徐々にプラス幅が縮小しており、足元の売り方による急速な買い戻し相場への期待感は既に乏しいといっていいだろう。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、日経平均が本格的な下げを見せ始めた2月下旬以降における価格帯別売買動向において商いが最も集中している水準は21000円の水準となっており、今後は強い戻り売りに押される地合いも想定しておく必要がありそうだ。買い戻し相場の一巡が意識されるタイミングのなか、首都圏では相次いで週末の外出自粛要請が出されており、連日で感染者の急増が確認されている。海外勢含め新規の買いポジションを積み上げにくい状況は目先的には続きそうである。市場では、今後の東京都の都市封鎖(ロックダウン)への警戒も増しており、日経平均は節目の19000円レベルを回復しているが、資金の逃げ足の速さには十分に注意しておく必要がありそうだ。物色としても、引き続きテレワークや巣ごもり消費関連のほか、相対的に業績懸念の少ない食品などのディフェンシブ優位の地合いを想定しておきたい。一方で、サウジアラビアは先週末に原油価格・生産に関してロシアと協議を行っていないことを表明。このため、価格戦争の長期化が懸念され、原油価格は20ドル割れ寸前までの下落をみせており、東京市場の資源関連銘柄の動向には引き続き注意が必要だろう。
■有効求人倍率や製造業PMIなど
主な国内経済関連スケジュールは、3月31日に2月分有効求人倍率、失業率、鉱工業生産指数、小売売上高、建設工事受注、4月1日に日銀短観(1-3月)、3月分製造業PMI、自動車販売台数、4月2日に対外・対内証券投資、3月分マネタリーベース、4月3日に3月分サービス業PMI・総合PMIなどが予定されている。
《FA》
提供:フィスコ