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【特集】鈴木英之氏【新春特別編・ずばり20年相場はこう動く】(1) <相場観特集>

鈴木英之氏(SBI証券 投資調査部長)

―米国発「超強気相場」の行方は? 上値の可能性と下値リスクを読む―

 2020年相場はどういう軌跡を描くのか。昨年は日経平均株価がバブル崩壊後の高値奪回にあと一歩というところまで迫った。米中貿易交渉の第1段階合意の署名を控え、両国の対立の構図は和らいでいる。ただ、日経平均は年明けの大発会で中東情勢の緊迫化を受けて波乱含みのスタートを余儀なくされた。果たしてこの先にはどういった相場シナリオが待っているのか。今回は相場観特集のスペシャル版として、市場第一線で活躍する識者2人にずばり年間の相場見通しを聞いた。

●「2万8000円台への上昇も」「昭和・平成2年暴落の経験則に警戒」

鈴木英之氏(SBI証券 投資調査部長)

 2020年の日経平均は、年末にかけ2万8000円近辺まで上昇する可能性があると見ている。新年早々、米軍によるイラン革命防衛隊司令官の殺害という両国間の緊張が高まる事態が発生した。今後の情勢を確かめる必要があり、株価は短期的には値の荒い展開もあり得るだろう。しかし、長期的にはマーケットを根本的に崩す要因になるとはみていない。イラン情勢は米中問題と同様に市場の懸念材料として織り込まれていくとみている。

 日経平均の足もとの予想EPS(1株利益)は1650円近辺の水準にある。これが20年に5%増え1730円前後となったとして、過去5年間の高値ベースの平均PER16.3倍を掛けると2万8000円台となる。下値メドは2万1200円前後。下げてもPBR1倍近辺だろう。日経平均は年央に安値をつけ、米大統領選の結果を受け、年末に高値を取りにいくパターンを見込む。21年も視野に入れれば日経平均の3万円が見えてくることも期待できると思う。

 新年の株式市場をみるうえでは、「米国の大統領選挙」と「東京五輪後の景気動向」がポイントとなる。また、「米中問題」の行方からも依然、目が離せない。11月の米大統領選挙では、現職のトランプ氏が再選されることを前提としている。ただ、もしサンダース氏のような社会主義的な政策を掲げる候補が民主党から選出され、大統領選で当選すれば、株価の急落もあり得るかもしれない。

 国内では8月の東京五輪後の景気動向が焦点となる。前回の1964年の東京五輪後には景気の落ち込みがあったことが警戒されている。しかし、今回の五輪後に前回のような大きな景気の落ち込みはないのではないか。64年の東京五輪では、戦後の復興の意味も含め首都高速の建設など大量のインフラ投資が行われた。今回の五輪は、経済規模も異なり、当時ほどの投資が行われたとは思えない。新年の秋には消費税引き上げから1年が経ち、影響の一巡感が予想されることも安心材料となる。米中摩擦の背景には、覇権争いの側面があるだけに簡単には収まらないだろう。ただ、新年は米大統領選が意識されるなか、米中摩擦も経済への影響が出ない程度にとどまることが予想される。

 気になるのは昭和2年には「金融恐慌」があり、平成2年には「バブル崩壊」による株価急落が起こったことだ。改元2年目の株価急落とも言えるアノマリー(経験則)があるだけに、令和2年に再現がないかは注意してみておきたい。

 個別のテーマや銘柄では、春から商用サービスが始まる次世代通信規格「5G」や半導体関連が人気を集めるとみられアンリツ <6754> や東京エレクトロン <8035> などは依然、注目できる。また、新年は7月の都知事選に加え衆議院の解散があるかもしれない。それだけに、選挙関連銘柄の動向も気になる。更に、例えばJT <2914> のような配当利回りが5%を超えるような高配当利回り銘柄には投資妙味があるだろう。

(聞き手・岡里英幸)

<プロフィール>(すずき・ひでゆき)
早稲田大学卒。リテール営業、調査部、株式部等を経て、SBI証券投資調査部長に。モーニングスター株式会社(投資調査部ゼネラル・マネジャー)へ転籍を経て2009年5月より現職。ラジオ日経、ストックボイス等で相場解説を行っている。


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