【特集】揺らぐ事業承継、開かれたM&Aの扉「商機到来で輝き放つ株」精選 <株探トップ特集>
中小企業庁は今年度末をメドに、事業承継を円滑に促進するための「事業引き継ぎガイドライン」の改定版をとりまとめる。M&A仲介を手掛ける企業の収益機会が一段と高まりそうだ。
―依然として多い後継者不在の企業、第三者承継の流れが加速する日本の近未来―
中小企業庁は今年度末をメドに、 事業承継を円滑に促進するための「事業引き継ぎガイドライン」の改訂版をとりまとめる予定だ。背景には経営者の高齢化が進む一方、考え方の違いなどから身内への承継が難しくなり、中堅・中小企業の事業承継を取り巻く環境が大きく変化していることが挙げられる。改訂版は解決策のひとつとしてM&A(企業合併・買収)を視野に入れている経営者の背中を押すような内容となる見通しで、関連企業のビジネス機会が一段と広がりそうだ。
●「事業引き継ぎガイドライン」改訂へ
中小企業庁は11月初旬に「事業引き継ぎガイドライン」改訂検討委員会を立ち上げた。約20人のメンバーには有識者のほか、山田コンサルティンググループ <4792> やM&Aキャピタルパートナーズ <6080> 、ストライク <6196> といったM&A関連企業が名を連ねており、月1回のペースで議論を重ね、第三者承継の利用拡大につながるツールづくりに取り組む。
具体的には、M&Aの知見・経験がない後継者不在の事業者や譲受けを希望する事業者の手引きとなるような中小・小規模M&Aに特化した内容、及び留意すべき点を事業者の視点に立った記載に改訂するほか、民間M&A専門業者のビジネスモデルの説明(ファイナンシャル・アドバイザーや仲介の違いなど)、それぞれの標準的な業務内容・適正水準(契約内容、料金体系など)を提示し、事業者や支援機関がM&A専門業者を活用する際に参照すべきチェック項目などが盛り込まれる見込みだ。
●約22兆円のGDPが失われる恐れも
経営者の交代は企業に必ず生じる経営上の課題のひとつであるが、特に中堅・中小企業の場合、会社の運営全体が経営者本人に大きく依存していることが多く、このような会社で経営者が倒れたり、引退前に死亡したりすると経営が立ち行かなくなり、大きな混乱が起きる可能性がある。中小企業庁の資料によれば、平均引退年齢である70歳を超える中小企業経営者は2025年時点で約245万人に上り、うち約半数の127万社(国内企業全体の3分の1)は後継者が決まっていないという。現状を放置すると、中小企業の廃業が急増し、25年までの累計で約650万人の雇用、約22兆円の国内総生産(GDP)が失われる恐れがあり、事業承継問題は官民が一丸となって解決しなければならない喫緊の課題となっている。
M&Aキャピタルパートナーズのグループ会社であるレコフデータの調査によると、18年のM&A件数は公表ベースで3850件と過去最高となり、事業承継型M&Aも増加傾向にあるが、後継者不在の事業者が127万社あることを考えれば潜在的なニーズは非常に大きいといえる。第三者承継が必要となる経営者は今後一気に増大するとみられ、M&Aの仲介を手掛ける企業から目が離せない。
●日本M&Aの「Batonz」ユーザー数拡大
日本M&Aセンター <2127> は中堅・中小企業の友好的M&A支援で豊富な実績を持つ仲介会社で、事業承継診断や戦略立案、企業マッチングなどのサービスを提供。グループ会社が手掛けるM&A、事業承継、事業譲渡のプラットフォーム・マッチングサイト「Batonz(バトンズ)」の累計ユーザー登録数は20年3月期第2四半期末時点で3万3000人と19年3月期末に比べて35.0%増となっている。
●M&Aキャピは成約件数19%増を見込む
M&Aキャピタルパートナーズは16年に、M&A仲介やアドバイザー業を手掛けるレコフ及びM&Aデータベースの提供・出版業を展開するレコフデータと経営統合。これを機に事業承継に加え、成長戦略、業界再編などの問題を解決するためのM&Aを普及させ、さまざまな需要に対応する総合型M&Aグループを目指しており、20年9月期通期の成約件数は172件(前期比19.4%増)を見込む。
●ストライクはネットM&Aサービスを運営
ストライクは、公認会計士が主体となって設立されたM&A専門会社だ。あらゆる情報網を活用したM&Aサービス「SMART」ではオンライン上からマッチしそうな買い手を探すことが可能で、後継者不在の解決策である友好的M&Aの実績多数。また、M&Aに関する情報発信サイト「M&A Online」なども運営している。
●青山財産のコンサル収益は順調に増加
青山財産ネットワークス <8929> [東証2]は、事業承継診断サービスや後継者決定支援プログラム、セカンドライフの安定収入確保と相続対策などを手掛けている。19年12月期第3四半期累計(1-9月)の事業承継コンサルティング収益は9億6100万円(前年同期比23.1%増)と、順調に増加している。
●山田コンサルは子会社ファンドへの出資増額
山田コンサルティンググループは経営コンサルが主力で、事業領域は事業再生や不動産など多岐にわたる。事業承継ではプランの策定や実行支援、非上場企業オーナーの自社株承継対策などを手掛けており、今年8月にはニーズの更なる増加を背景に子会社のキャピタルソリューションが運営管理する事業承継ファンドに対する出資約束金額を10億円から50億円に増額した。
●専門子会社を設立したGCAなどにも注目
このほかの関連銘柄としては、弁護士ドットコム <6027> [東証M]、フロンティア・マネジメント <7038> [東証M]、名南M&A <7076> [名証C]、フォーバル <8275> 、船井総研ホールディングス <9757> 、ミロク情報サービス <9928> など。また、GCA <2174> は今夏に、事業承継案件に特化した専門子会社「GCAサクセション」を設立している。
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