【特集】SOU Research Memo(6):着々とグローバルプラットフォームを構築中
SOU <日足> 「株探」多機能チャートより
■SOU<9270>の2020年8月期以降の成長戦略
3. 販売面における事業展開
グローバルプラットフォームとは、現在行っている国内「STAR BUYERS AUCTION」の仕組みをベースに、グローバルに活用できるオンラインオークションシステムに進化させたものである。現状、自社で仕入れた商品を国内業者向けにリアルなスペースを使ってオークション販売しているが、グローバルプラットフォームでは多数の海外業者の参加とリアルオークションの完全オンライン化を想定している。特に完全オンライン化は、非常に大きな変革といえる。
(1) 海外業者向け販売力の強化
海外業者向けの販売については、先行的に指値専用オンラインサイトを構築する。これまでエクセルなどを使用したアナログでの指値入札を行っており好評価を得ているが、ジャパンユーズド(日本人は丁寧にものを扱う)や同社経験・ノウハウに対する信頼感が、業者の移動コストに勝ったためと考えられる。既に60社程度の海外販売業者を開拓しているが、現在も業者開拓の真っただ中で、中期的に200社の参加を目指している。併せて、得られた買取・販売・家庭内在庫といったラグジュアリーデータを蓄積することで、「SOU Brain」のグローバル化も同時に進めていく考えと思われる。その際、世界を見渡しても同社同様のビジネスモデルが見当たらないこと、同社であること及びオークションであることによって担保される正確・公正な査定、「Checked In Japan」という言葉が示す良質な商品に対する信頼が世界で広がりつつあることから、オークションを重ねるごとに、世界中からヒト・モノ・カネが同社に集中するようになると思われる。
(2) オークションのオンライン化
オークションのオンライン化により、同社は開催日数を容易に増やすことができ、また自社商品だけでなく委託商品も容易に扱えるようになるため、出品料収入の増加や規模のメリットが期待される。さらに参加者も、海外からはもちろん、日本全国、特に現在同社の取り扱いが相対的に少ない地方の業者を集客することが容易になると思われる。1オークションの参加者が増えればビット価格が上がりやすくなり、同社のマージンも増えると考えられる。また、リアルで必要だったスペースや設営、運営のコストが圧縮でき、買い取ってからオークションで販売するまでのリードタイムも現在の45日から数日へと短縮される見込みである。一方業者にとっては、移動のコストが削減される他、日程や時間に縛られないオークション参加が可能となる。また一般消費者にとっても、在庫回転が早まるため、商品を売る場合にはより精度の高い価格が提示されるため納得しやすくなるだろう。このように、同社にも業者にも一般消費者にもメリットがあることから三者三得ということになり、同社の企ては、リユースの入口や出口ばかりでなく、リユース流通全体を抑えてしまう可能性があると考えている。なお、グローバルプラットフォームのシステム開発と国内オークションの完全オンライン化は、2020年8月期中に進め、2020年9月には本格稼働させる計画である。
海外での仕入能力向上も図る
4. 仕入面での事業展開
成長戦略に合わせ、内外で仕入能力の向上を図る。国内では引き続き買取専門店を主要都市や商業施設を中心に、年10店~15店のペースで増加させていく計画である。業容拡大のため、立地やノウハウ、ジャンル、客層など狙いを絞ったM&Aも想定される。本来シナジーが見込める百貨店への出店も目立ってきた。これだけでも十分に中期利益成長を引っ張ると思われるが、国内の買取拠点数は約200店舗が上限と言われていることから、現状のままでは早晩限界が見えてくる。第2創業期の成長戦略はそうしたことへの対策にもなっており、海外拠点では販売業者を探すだけでなく、買取拠点の市場調査も強化する計画である。海外拠点については、現在オークションを開催している香港に次いで米国に現地法人を設立しているが、その後も主要国に拠点を開設し、現地企業などとのローカルネットワークを構築して、各国で商品の買取を行っていくことを検討している。
次世代の成長ドライバー「Miney」
5. LTV向上へ向けた事業展開
LTV(Life Time Value)向上に向けて、資産管理アプリ「Miney」の登録ジャンルを拡充する計画である。「Miney」はITリテラシーの高い同社らしいアプリで、商品の現在価値や過去から現在までの価格推移、登録商品の総額などの確認ができる資産管理アプリである。「Miney」を通じて同社が日々変動するモノの価値をユーザーに提示することで、ユーザーは所持品を実物資産として利用しつつ、最適な時期に気軽に売却することができる。一方、同社にとって顧客層の拡大や顧客の囲い込みにつながるマーケティングツールでもある。現在、時計やブランドジュエリー、バッグ、財布を管理することができるが、今後は不動産や骨董品、酒など同社ビジネスとシナジーの大きいジャンルへと管理対象を広げて顧客とのつながりを強化し、LTV向上を図る考えである。そうしたジャンルの2次流通企業と提携すれば、消費者にとってより便利なツールになるが、同社にとっては新たなビジネスチャンスになるかもしれない。2017年10月にスタートし、2019年8月には登録商品数5.7万点、登録資産数89億円に達している。そのうちの5%が既に実際の買取につながっている。このため、同社は次世代の成長ドライバーとして「Miney」を育成する考えである。すべての財に関して「モノを買って使って捨てる」から「買って使って資産に変える」というライフスタイルが広まれば、「Miney」も単なるラグジュアリーリユースのツールから個人資産のパーソナルマネジメントツールへと進化していくことが予想される。そのとき「Miney」は、同社の成長をけん引しているかもしれない。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
《YM》
提供:フィスコ