【特集】老朽化団地10倍へ! 「団地再生」で復活のベル鳴らす気鋭の上昇期待株 <株探トップ特集>
国土交通省主導で老朽化が目立つ団地の再生が進む可能性が高まってきた。再生流通事業を展開する企業に商機が膨らんでいる。動き出した同業界の最前線を追った。
―新制度を背景に分割売却を促進、巨大ビジネスチャンス創出で注目の銘柄とは―
8月19日の日本経済新聞朝刊で、「国土交通省は複数の棟で構成された団地型の分譲マンションの老朽化に対応するため、敷地を分割して売却しやすくする新制度を設ける方針だ」と報じられた。記事によると、現在は1棟だけを切り出して売却する場合でも団地の所有者全員の同意が必要だが、この要件を緩めるという。
これに関する法案は、2020年の通常国会に提出を目指すとあることから、成立・施行されるとしてもまだ先のことになるが、老朽化が目立つ団地の再生が進む可能性が高く、そこには大きなビジネスチャンスが生まれることになる。今後、こうした「団地再生」が話題になることが増えることも予想され、関連銘柄には注目が必要だ。
●老朽化団地は20年後10倍へ
国交省の調査によると、13年末時点で、同一敷地内に2棟以上の共同住宅を有し、50戸以上ある住宅団地は全国に約5000団地存在している。戸数では約195万戸にのぼり、総マンションストック約600万戸のうち、約3分の1を住宅団地が占めていることになる。
こうした住宅団地のうち、高度成長期に建てられ、築後45年を超す団地は15年時点で291団地ある。これは全体の6%弱にすぎないものの、20年後には2769団地と10倍近くに拡大する見通し。その一方、建て替えは15年時点で114団地約1万2700戸にとどまり、多くは建設当時のままの建物が多い。
団地の多くは、同一時期に大量の供給が行われたことによる住民の高齢化や建物の老朽化、バリアフリー化の遅れなどの問題が顕在化し、空き家も増えている。一方で、住宅団地は高い公共施設整備率を誇る優良なストックであり、次世代に残すべき資産であるとの見方があり、再生が求められている。
●障壁が多い団地の建て替え
ただ、団地再生にはさまざまな障壁がある。例えば全棟を一括で建て替えるとなると、全所有者の5分の4以上、かつ各棟の所有者の3分の2以上の賛成が必要となる。また、団地の一部を建て替える場合には建て替える棟の5分の4以上の賛成と団地全体の4分の3以上の賛成が必要となる。
このため国交省では、数年前から団地再生のための団地再生事業法(仮)の創設を検討。敷地の一部を売却しやすくするなどの制度整備を進めようとしている。
敷地の一部を売却しやすくなれば、老朽化が激しい棟の敷地を売り、跡地に保育施設や商業施設を設ければ子育て世代の転入促進にもつながる。また、部屋を相続したものの入居の予定がないといった所有者の売却もしやすくなり、空き家対策にもなる。更に、バリアフリーなど高齢者が暮らしやすい集合住宅を跡地に建て、団地に住む高齢者が移り住むといったことも考えられる。建て替えの同意要件などは今後煮詰められるもようだが、新制度への期待は大きい。
●スターマイカやリコーリースなどに注目
国交省が新制度を設けることで、国策として進められることになる可能性が高い団地再生だが、既に取り組みを行っている企業も多い。先行する企業はノウハウを蓄積し、将来的なシェア獲得につながるだけに、今から注目が必要だ。
関連銘柄の代表格といえるのがインテリックス <8940> だろう。同社は中古マンションを仕入れ、内装工事などを施して価値を高めて販売する中古マンション再生流通事業(リノヴェックスマンション事業)が主力で、団地のリノベーションの実績も多い。20年5月期は人員増や先行開発投資などが利益を圧迫し営業利益11億6400万円(前期比30.4%減)と減益を見込むものの、リノヴェックスマンションは前期比163件増の1350件の販売を見込む。
スター・マイカ・ホールディングス <2975> は、賃貸中の中古マンションを取得し、ポートフォリオとして賃貸運用しながら、退去した空室物件にリノベーションを施し、居住物件として販売するリノベマンション事業が主力。上期(18年12月~19年5月)業績は、前年同期に計上したインベストメント事業の物件売却の反動減の影響を受けて営業利益20億9400万円(前年同期比29.7%減)となったが、リノベマンション事業は好調で、会社側によると期初の計画は上回って推移しているもよう。また、7月26日には、リノベマンション事業における消費税額から控除する仕入控除税額の計算方法の変更を行うことについて、税務当局の承認を受けたと発表し、租税公課(販管費)の減少を織り込み、19年11月期通期では営業利益を29億5600万円から38億5500万円(同0.4%増)へ上方修正した。
リコーリース <8566> は、17年9月に都市再生機構(UR都市機構)子会社で団地の管理や修繕を手がける日本総合住生活(東京都千代田)と提携。老朽化した団地を再生するため、建て替えや修繕費用などを融資する「団地再生ローン」を手掛けている。また、19年3月期から住宅賃貸事業を本格始動したが、日本総合住生活とは賃貸住宅の共同取得・運営も行っており、保有戸数を19年3月期の272戸から20年3月期は500戸まで拡大させる予定だ。なお、7月25日に発表した第1四半期営業利益は45億5900万円(前年同期比5.1%増)で、通期では同177億円(前期比2.5%増)を見込んでいる。
エヌ・シー・エヌ <7057> [JQ]は、木造建築の耐震性を確保するための構造計算を事業化するとともに、同社独自の木造用建築システムである「SE構法」に基づき、構造計算から建築資材の供給、性能保証まで一貫して提供している。注目は良品計画 <7453> と合弁で設立したグループ会社のMUJI HOUSEで、UR都市機構と組んで「MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト」を展開している点で、既に多くのUR物件のリノベーションを行っているほか、インテリア家具の共同開発なども行っている。なお、8月14日に発表した第1四半期(4-6月)は営業利益7200万円(前年同期は四半期非開示)で、20年3月期通期は同2億8500万円(前年同期比9.3%増)を見込む。
このほか、団地再生とは直接的な関連性は低いものの、ITを活用したリノベーション ・中古住宅の流通プラットフォーム「cowcamo(カウカモ)」を運営するツクルバ <2978> [東証M]や、空き家となった一戸建てを中心に中古住宅を仕入れ、リフォームし販売するカチタス <8919> なども関連銘柄として物色される可能性があり注目したい。
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