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【特集】真夏の波乱相場、「米中貿易戦争」脱出シナリオを探る <株探トップ特集>

米中貿易戦争に揺れる世界の金融市場。為替動向を絡め東京株式市場もリスクオフのムードに包まれている。市場関係者への取材をもとにここからの相場を展望した。

―「チャイナショック」再来を懸念、ジャクソンホールで潮目が変わる可能性も―

 世界の金融市場が「米中貿易戦争」に揺れている。トランプ米大統領は1日、中国に第4弾の制裁関税を課すと発表した。これを契機に、相場にはリスクオフムードが台頭。中国の米国に向けた対抗措置もあり、市場には警戒感が膨らみ、世界同時株安の連鎖が続く状態にある。果たして、この「真夏の波乱相場」の背景には何があるのか。また、この波乱相場からの脱出シナリオとは何か。今後の相場展開を探った。

●米中間の報復合戦に警戒感高まる、米「恐怖指数」は30%強上昇

 世界の株式市場の連鎖安が続いている。米政府が、中国に対する第4弾の制裁関税を課すと発表したことがキッカケとなり、特にNYダウは5日に前日比767ドル安の2万5717ドルと今年最大の急落を演じた。 中国・人民元が下落していることに加え、中国は国営企業に米国産農産物の輸入停止を要請したと報じられたことが、「中国からの反撃」と受け止められ、警戒感を呼んだ。これを受け「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数は5日、前日から30%強上昇し24.59と急伸した。

 米国株安は日本に波及。前日まで2日連続で大幅安を演じていた 日経平均株価は、きょうも一時600円強下落する場面があった。中国・上海総合指数も5日続落している。特に、足もとで高い関心を集めているのが中国・人民元の動向だ。人民元は5日には1ドル=7元台と11年ぶりの安値に売られた。このリスクオフ姿勢の高まりで、円は一時、1ドル=105円50銭台まで急速なドル安・円高が進んだ。

●中国の人民元政策に関心が集中、「為替操作国」認定の影響は限定的

 人民元安が注目を集めるのは「輸出増に向けた中国当局の意向があるのではないか」(市場関係者)との疑念があるからだ。意図的な人民元の下落は、世界の通貨安競争を生むとの懸念が、世界同時株安をもたらした。特に、中国が米国の農産物の購入を一時停止したと発表すると、米国は返す刀で中国を「為替操作国」に認定した。

 この一連の流れが15年に発生した「チャイナショック」再来の警戒感を呼び、市場には緊張感が一気に高まった。そんななか、この日の市場関係者の関心は、朝方に公表される中国・人民元の基準レートに集まった。毎朝午前10時15分に発表される同レートは1ドル=6.96元とややドル安・人民元高水準に置かれた。「中国当局は、明白な人民元安誘導の姿勢は見せていない」(アナリスト)との声が上がるなか、これを受け、この日の日経平均株価も急速に下げ渋り、為替市場でドルは対円で一時1ドル=107円00銭台まで急速に値を戻した。日経平均株価も、結局134円安で取引を終えた。

 中国金融当局の姿勢に関して、上田ハーローの山内俊哉執行役員は「人民元安は中国からの資本流出にもつながる危険性があるだけに、意図的な誘導策は打たれないのではないか」と見ている。また、中国が為替操作国に認定されたことに関しても「為替操作国に認定されてから経済制裁を受けるのが一般的だが、中国の場合、すでに制裁を受けている。こちらの影響も限定的だろう」と見る。もっとも、中国が為替操作国に認定されたことで、日本が為替介入などを行うことのハードルは一段と高まったとみられている。

●今月下旬のジャクソンホール会議が潮目変えるとの期待も

 一方、キャピタル・パートナーズ証券チーフマーケットアナリストの倉持宏朗氏は「今夏に1ドル=100円近辺に一段の円高が進む可能性も考えられるだけに、その場合、日経平均株価は今年1月につけた1万9561円の年初来安値(終値ベース)を意識する展開となることもあり得る」とみている。特に、これから8月下旬にかけ、夏休みを取る市場関係者も多く、出来高が細るなか、依然として、値の荒い相場が続く可能性はある。

 そんななか、今月下旬に向けて再度、市場は米金融政策に目を向けるとの見方が出ている。とりわけ、22~24日に開催されるカンザスシティ連銀経済シンポジウム(ジャクソンホール)への関心は高い。「ジャクソンホール会議で米利下げ方針が明確に打ち出されれば、米株式は上昇基調を取り戻す可能性がある。米株高は金利低下によるドル安基調を打ち消すことも予想される」(山内氏)という。今月中盤まで神経質な展開が続くが、下旬のジャクソンホールを機に潮目は変わる可能性があるというわけだ。

 とは言え、米中貿易戦争への警戒感は簡単に収まることはなさそうだ。今後の注目ポイントは9月に再協議が予定されている米中貿易協議の動向であり、特に9月1日に対中制裁関税「第4弾」が実際に発動されるかどうかがポイントだ。更に、第4弾の制裁関税が発動された場合、年末にかけて10%の関税が25%に引き上げられないかどうかも注目されている。来年の再選を狙うトランプ米大統領は、NYダウなどの株価の浮揚を図りながら、中国に圧力をかけ続ける政策を続けることが予想される。このため、市場関係者からは「株価の底割れはない」との見方が多いものの、依然、米中動向には慎重な姿勢は求められそうだ。

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