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【特集】米中摩擦で“漁夫の利”、「ベトナム関連」に押し寄せるビッグウェーブに乗れ <株探トップ特集>

米中摩擦問題で中国から米国への輸出が急減する一方、ベトナムから米国への輸出は増加傾向にある。「チャイナプラスワン」の筆頭候補がいよいよそのベールを脱ぐ、ベトナム関連株は注目必至だ。

―ベトナムの経済発展で恩恵大、ここから株高の宴が始まる有力銘柄を絞り込む―

 ベトナム関連への関心が高まっている。米中貿易摩擦問題で、中国から米国への輸出が急激に減速する一方、ベトナムから米国への輸出は増加傾向にあるためだ。6月29日の米中首脳会談で、中断していた通商協議を再開することで合意し、第4弾の制裁関税の発動はひとまず見送られてはいるが、いつ問題が再燃するかは不透明な状況にある。当面、この傾向は続きそうだ。

 もともとベトナムは、中国の人件費上昇から生産拠点として代替となる「チャイナプラスワン」の筆頭候補だったが、米中貿易摩擦の影響でそれが加速している。生産拠点としてだけではなく、経済成長を背景にした消費地としての注目度も高まっており、関連銘柄には注目が必要だろう。

●上半期経済は6.8%と高成長

 ベトナムの人口は9370万人(2017年時点)。17年の1人あたりGDPは約2385ドルで中国の07年ごろに相当する。2000年以降の実質GDP成長率の平均は年6.5%で、6月28日に統計総局が発表した上半期の推計値も前年同期比6.8%だった。上半期の成長率としては、前年の7.1%を下回るものの、11年以降では2番目に高い成長率で、前述のように米国との貿易摩擦が続く中国の代替として、ベトナムからの対米輸出が膨らんでいることが背景の一つとしてあり“漁夫の利”を得ている状況といえる。

 日本企業もこれまで、四輪車・二輪車メーカー各社が生産・販売拠点を設け、関連する部品メーカーなども拠点があるほか、ファーストリテイリング <9983> などアパレル企業などの製造拠点も多くあるが、ここにきて電機・電子部品業界なども生産移管に舵を切り始めている。ベトナムには韓国サムスン電子のスマートフォン生産拠点があることから、電子産業の集積が進んでいるうえ、中国と地続きという物流面の強みもある。任天堂 <7974> の「ニンテンドースイッチ」やシャープ <6753> のノートパソコン、京セラ <6971> の複合機などが生産の一部について、中国からベトナムへの移管を検討していると伝えられている。

 またソフト面でも、ベトナムにはオフショア開発の拠点としてさまざまな企業が進出している。ただ、外国企業の進出などを背景に、ハノイやホーチミン、ダナンなど都市部では人件費の上昇が問題となり始めている。一方で、給与水準が上がれば消費の拡大が期待できることから、今後は生産拠点を設け外需向けを手掛ける企業だけではなく、同国の経済成長による恩恵を受ける内需型企業への注目も高まりそうだ。関連銘柄のうち、5銘柄をピックアップした。

●経済発展で恩恵を受ける企業に注目

 共英製鋼 <5440> は、合弁で現地に本格的な電炉工場を展開しているが、競合環境が激化し、足もとでは収益が悪化していた。ただ、引き続き条鋼需要は増加が見込まれることから、同社ではベトナム事業の収益力強化を20年3月期の重要課題として取り組んでおり、北部のベトナム・イタリー・スチール社でOEMによる数量増やシェアアップに取り組むほか、南部のビナ・キョウエイ・スチール社で製鋼フル生産によるコスト削減効果などで数量増と業績改善を狙っている。

 荒川化学工業 <4968> は、段ボール などに使う紙力増強剤の工場をバリアブンタウ省に新設する計画だ。ベトナムをはじめとする東南アジアでは経済発展や通販市場の成長を受けて段ボール需要が増えており、王子ホールディングス <3861> やレンゴー <3941> などが段ボール生産拠点を設置。また、丸紅 <8002> も100%出資で20年度下期の商業稼働を目指し、段ボール原紙の製造拠点を建設する予定で、段ボールを破れにくくするのに使われる紙力増強剤の需要拡大が見込まれる。

 JUKI <6440> はベトナムに2つの工業用ミシンの生産拠点を展開しているが、国内外のアパレルメーカーが中国からベトナムに生産拠点をシフトさせるなか、事業の拡大が期待できる。ファーストリテが19年3月に公開した主要な取引先縫製工場のリストによると、ベトナムの工場数は44ヵ所でこの1年で5ヵ所増えた。また、アダストリア <2685> も中国生産の依存度が大きかったが、ベトナム、タイ、インドネシアで糸も調達し現地で衣料品の一貫生産を開始している。こうした動きが加速すれば、JUKIのビジネスチャンスの拡大につながろう。

 メイコー <6787> [JQ]は今月、ハノイ市にプリント基板の新工場を建設し生産を開始した。同社の売上高の大半はスマートフォン向け及び車載機器向けだが、前述のようにベトナムにはサムスンのスマホの中核生産拠点などがあり、需要増に対応する。新工場はロボットや人工知能(AI)を活用し少人化を図っており、次世代のマザー工場となることも注目されている。

 ピーエイ <4766> [東証2]は、ベトナムで求人分野に特化した広告代理店を展開しており、日本企業がベトナム向けの求人広告出稿を増やせば、ビジネスチャンスの拡大につながる。また7月22日には、ベトナム連結子会社を通じて、日本からベトナムに商品を輸出したい企業のために、通関手続きに必須である同国審査機関に対する手続きを代行して行う商品登録手続きサービスを開始したと発表。同サービスの開始により、キレイコム(東京都千代田区)などと共同出資したピーエイ連結子会社PAエンタープライズが、ベトナム進出におけるマーケティングや販路拡大などのサービス展開を開始したことと合わせ、ベトナム向け商品輸出のワンストップサービスの提供ができるようになり、注目される。

 ただ、留意しなければならないのはアメリカの動向だ。問題となっていた中国製品の迂回輸出についてはベトナム国内で取り締まりが強化される傾向にあるが、米国の対越赤字の拡大が顕在化するようならば、米当局がベトナムの為替政策などを非難し始める可能性もある。それを踏まえたとしても、中長期視点からベトナム経済の成長性への関心と、それに伴い関連銘柄への注目は高まることになろう。

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