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【特集】物言う株主の時代に勝つ「ROE × 配当性向」の賢い使い方

大川智宏の「日本株・数字で徹底診断!」 第21回

大川智宏大川智宏(Tomohiro Okawa)
智剣・Oskarグループ CEO兼主席ストラテジスト
2005年に野村総合研究所へ入社後、JPモルガン・アセットマネジメントにてトレーダー、クレディ・スイス証券にてクオンツ・アナリスト、UBS証券にて日本株ストラテジストを経て、16年に独立系リサーチ会社の智剣・Oskarグループを設立し現在に至る。専門は計量分析に基づいた株式市場の予測、投資戦略の立案、ファンドの設計など。日経CNBCのコメンテーターなどを務めている。

 米国株は史上最高値を更新し続ける中で、日本株はパッとしない動きとなっています。日替わりで業種や銘柄の強弱が入れ替わり、一貫した投資効果を得にくい状況です。

 その要因は、世界景気の先行きと米国の金融政策の不透明感によるもの。雇用統計の強さと米サプライマネジメント協会(ISM)の非製造業景況感指数の弱さはどちらが正しいのか、そしてFRB(米連邦準備理事会)が利下げ姿勢にどの程度傾くのかなどの見通しで、取るべき戦略や選択する銘柄およびセクターは180度変わってしまいます。

 この混沌とした状況の中で、安定的なリターンを得る戦略はあるのでしょうか。1つあるのは、マクロが激しく変化して見通しを立てにくいならば、マクロを切り離して、投資家に好まれる銘柄を抽出することです。つまりファンダメンタルズではなく、需給要因で動く銘柄に注目する戦略です。

 今、投資家の関心を集めやすいのが、「アクティビズム」いわゆる「物言う株主」の行動です。株主が企業に事業戦略や資本政策などで改革を迫るアクティビズムは、日本では、2007年前後の米スティールパートナーズや村上ファンド(当時)によるプロキシーファイト(委任状争奪戦)で注目が高まりました。その村上ファンドは現在、レノやストラテジック・キャピタルなどに形を変えて、企業に対して株主提案などを行っています。

 彼らの存在感が増しているのは、14年にスチュワードシップ・コード(機関投資家の行動指針)が策定されたこともあります。同コードによって、上場企業は物言う株主と真摯に対話する必要性が生じ、良くも悪くも「株主にとっての最適な企業」の在り方が意識されるようになっています。

55円増配発表後、株価が6割近く急騰した淺沼組 <1852>

 物言う株主の要求を大きく分けると、「収益性の向上」と「株主還元の強化」の2つがあります。株主還元の強化を求められた典型が、旧村上ファンド系のストラテジック・キャピタルが大株主である淺沼組 <1852> です。

 同社は、ストラテジック側から「配当性向を100%にせよ」という要求を受け、今年5月10日に20年3月期の配当を前期比55円増の208円に大幅増配を発表しました。発表後、淺沼組の株価は6割近くに急騰しました。

■淺沼組 <1852> の日足チャート
淺沼組の日足チャート
注:出来高・売買代金の棒グラフの色は当該株価が前期間の株価に比べプラスの時は「赤」、マイナスは「青」、同値は「グレー」。以下同

 同社の業績は横ばい傾向が続いていますが、市況の変化や事業内容の見通しそのものよりも純資産の圧縮、つまり還元の積極化が株価を大きく左右することになったのです。この一連の動きは極端な例かもしれませんが、アクティビズムに沿うように尽力する企業は、株価として報われる可能性が高いことを示しています。

 これらを踏まえた上で考えられる投資戦略は、数多存在する銘柄の中から収益性の向上と株主還元強化を適切に遂行している「優良アクティビズム銘柄」を抽出する方法です。

※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。



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