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【特集】エーバランス Research Memo(6):グリーンエネルギー事業の拡大に向けた布石を国内外で打ち始める


■今後の見通し

2. 2019年以降のトピックス
2019年以降のトピックスには以下の点が挙げられる。

(1) ベトナムでの太陽光発電プロジェクトが始動
2019年1月23日付で、WWBにおけるベトナムでの太陽光発電所プロジェクトが始動したことを公表している。ベトナム南部にあたるNha Trang(ニャチャン)で現地パートナー企業等と共同で起工式を行った。同プロジェクトでは自社ソーラーパネルの「MaxarR」を使用するほか、設置工事にはAbalance<3856>のソーラードリラーの採用が決まっている。現地プロジェクトコンサルティングとして同社関連企業であるVNREEへの発注も決まっており、グループ一体でプロジェクトを進めていく予定となっている。

また、1月24日付でベトナム中部地方の電力会社(Khan Hoa Power Company(以下、KHPC))と太陽光発電所の共同開発に関してMOU(覚書)を締結したことを公表した。屋根設置型の太陽光発電所をKHPCの各社屋に設置していくプロジェクトとなる。同プロジェクトではソーラーパネルに「MaxarR」またはグループのVSUNのソーラーパネルを使用することが決定しており、設置工事についてVNREEへの発注を優先的に行う予定となっている。

海外プロジェクトとしては、日本からベトナムなどへ人材を送り対応に当たっている。個別プロジェクトは順次進行中であり、業績への貢献は2020年6月期以降になると見られるが、東南アジアでの需要は旺盛で、今後の成長ドライバーの1つとして育成していく考えだ。O&Mの管理実績がある同社グループでは、ストックビジネスの実現を図るべく同手法を海外事業にも展開する方針である。

(2) 角田市太陽光発電事業を始動
2019年2月6日付で、宮城県角田市に発電能力18.3MW規模となる太陽光発電所の開発を開始することを発表した。一般家庭の約4,310世帯分の消費電力に相当する規模となる。2019年3月に着工し、2021年3月に完成予定となっている。売電開始後の初年度売電収入見込みは約7.5億円で、FIT価格36円/kWh案件となる。設備投資予定額の約52億円ついては、WWBが基金を拠出する(一社)角田ソーラーエナジーが設立した(同)角田電燃開発と金融機関の間で融資関連契約を締結し、プロジェクトファイナンス※を組成する手法で調達した。WWBは角田電燃開発に対する匿名組合出資を行うことで、同事業に参画する。

※プロジェクトファイナンス:特定事業に対して融資を行い、そこから生み出されるキャッシュフローを返済の原資とし、債権保全のための担保も対象事業の資産に限定するファイナンス手法を指し、インフラ投資を行う際に用いられることが多い。


同社は現在、FIT価格で30円/kWh以上の案件に係る権利を保有している。開発後の運営状況や収益性等を勘案して、自社運営する案件と、売却する案件とを見極めていく。九州エリアでは九州電力による出力制限が、また東北エリアでは送電線の供給能力の問題が指摘されており、こうした外部環境の変化も睨みながらプロジェクトを進めていくことになる。最近では出力制限による売電収入のロスを補償する保険商品なども出ており、これらも含めて総合的に判断していくものと考えられる。

(3) 光触媒酸化チタンコーティング企業を子会社化
2019年1月25日付でWWBが光触媒酸化チタンコーティング剤とそれを利用した製品の製造販売等を行う鯤コーポレーション(日本光触媒センター株式会社へ社名変更)の株式を23百万円で取得(取得比率68.4%)し、連結子会社化したことを発表した。子会社化の目的は、光触媒酸化チタンコーティングによってソーラーパネルの性能を向上させ、同社製品の競争力向上を図ることにある。

光触媒とは酸化チタンなどの金属に紫外線が当たることで、周囲の有機物を水や二酸化炭素などの単純な構造の物質に分解する作用のことで、防汚機能や抗菌・抗カビ・抗ウイルス機能、脱臭機能、空気浄化機能などがあり、これら機能を生かした製品が開発されたり、コーティング剤として活用されたりしている。鯤コーポレーションは佐賀県に本社を置く企業だが、技術力の高さで知られている。特徴は、酸化チタンの粒子を極限まで細かくすることで透明度の高さとガラスへの密着性の高さを実現していること、不純物がほとんどなく中性であること、バインダーを含まないため被覆面に均等に酸化チタンをコーティングできることなどが挙げられる。

用途例には建物の外壁、住設機器、太陽光パネル、空気清浄機などがあり、スーパー、コンビニエンスストアのほか、手術室等の高度に衛生管理が求められる医療機関等に広く利用されている。同社は鯤コーポレーションの技術力の高さに着目、自社製品にコーティングすることで発電効率を3~5%程度改善できると見ている。ソーラーパネルは屋外で風雨にさらされるため、表面の汚れから発電効率が低下するケースが見られるが、光触媒機能を用いることで表面の汚れを分解し、発電効率の低下を防ぐ効果が期待される。

なお、同社業績は、2018年3月期で売上高186百万円、営業利益18百万円となっている。現在は主に建材向けのコーティング施工が売上の大半を占めているが、ソーラーパネルへの適用により業績の拡大が期待される。

(4) VSUNの国内販売子会社を設立
2019年3月8日付で、WWBがVSUNのソーラーパネルの国内販売子会社としてVSUN JAPANを設立したと発表した。設立の目的は、国内におけるソーラーパネルの価格競争力強化、品質・サービス体制の向上を図るためとしている。現在、自社ブランドとして「MaxarR」を製造販売しているが、中国大手メーカーからのOEM供給となっている。品質・性能面で同等レベルにあるVSUNの商品をラインナップすることで、仕入先との価格交渉力も強まる効果が期待される。ワンストップサービスを特徴とする同社グループにおいて、パネルメーカー機能がより強化されたと言える。

VSUNに関しては直近3年間で急成長した格好となっている模様であり、主にドイツを中心とした欧州市場でシェアを拡大したようだが、今後は同社グループとの協業も図りながら、東南アジア市場での売上拡大も目指して行くものと予想される。

(5) 新たな事業機会
国内で風力発電所の開発も進めていく予定になっているほか、バイオマス事業にも順次着手していく予定となっている。マレーシア等の東南アジア圏において、ソーラーシェアリングを展開するなどの海外事業計画もあり、これらの個別計画についても総じて今後の事業による収益貢献が期待される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《MH》

 提供:フィスコ

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