【特集】雨宮京子氏【下値模索続く東京マーケット、転機と戦略を探る】(1) <相場観特集>
雨宮京子氏(SBI証券 投資情報部 シニア・マーケットアドバイザー)
―米中摩擦の余波、反転の可能性と注目すべき個別株―
週明け13日の東京株式市場はリスク回避ムードが継続し、日経平均株価は引き続き下値模索の展開を余儀なくされた。トランプ米政権が中国製品に対する関税を引き上げたことで米中貿易摩擦問題に対する警戒感が高まっている。ただ、目先は思惑先行で売られ過ぎとのムードも漂い始めた。ここは、ディスカウントされた銘柄を拾うチャンスとなるのかどうか。当面の全体相場の見通しと上値が期待される個別株について、先読みに定評のある市場関係者2人に意見を聞いた。
●「悲観に流されず2万1000円近辺は買い対処」
雨宮京子氏(SBI証券 投資情報部 シニア・マーケットアドバイザー)
東京株式市場は投資家の不安心理につけ込むように仕掛け的な売りが顕在化し、深い押し目を形成するに至った。トランプ米政権の対中製品への制裁関税引き上げの動きは、確かに売り材料としてインパクトがあったが、“目先波乱を受けて総撤退”では投資家として芸がない。ここは下値メドをある程度想定したうえで、戦略的に買い下がるチャンスとみたい。
日経平均は昨年12月25日のクリスマス暴落でつけた安値1万9155円(終値ベース)を下に抜ける可能性は低い。そして、目先的には3月25日の安値2万977円がフシとして機能するだろう。つまり時価2万1000円近辺の攻防は“買い下がり第1弾”の資金を投下してよいタイミングと考える。
本格化している企業の決算発表だが、一部報道などで19年3月期は小幅ながら減益となる可能性が意識されている。ただ、企業は次期予想については横並びで慎重になりやすい傾向がある。投資する側としては企業のガイダンスリスクを逆手にとるしたたかさが求められる。今の環境は20年3月期に伸びる企業を発掘するうえで「(前期業績の)発射台が低くなった分だけ有利となる」と前向きに構えたい。
日本固有のネガティブ材料としては10月の消費税引き上げがあるが、米国では利下げがFRBの選択肢として浮上するなか、果たして日本が増税を実施するなどということができるのかどうか。衆参ダブル選挙を絡め、消費増税についても見送りムードが次第に高まるはず。そうなれば、売り方は一気に買い戻さざるを得なくなる。米中摩擦についても、トランプ米大統領は来年の大統領選を前に米国経済や米株式市場に影響が及ぶことは避けたいはずで、これもどこで手打ちするかの問題だと思う。投資家はメディア報道に一喜一憂して自らの立ち位置を見失わないようにしたい。
物色対象としては、まず、デジタル・インフォメーション・テクノロジー <3916> に着目。情報セキュリティー分野に展開するが、自社開発パッケージが拡大し、19年6月期業績は計画比上振れが期待される。また、文書作成ソフトで高シェアを有するジャストシステム <4686> も面白い。業績は連続最高益基調でチャート的にも大勢2段上げの様相で目先の押し目は強気対処したい。不動産管理ソフトを手掛けるプロパティデータバンク <4389> [東証M]も動意含みで要マーク。企業のコンサルティングや営業支援を行うブリッジインターナショナル <7039> [東証M]は株価底値圏で狙い目となる。最後にバイオ関連株でメディシノバ・インク <4875> [JQ]を継続マークしておきたい。進行性多発性硬化症の開発品「MN-166」の導出契約が実現すれば改めて脚光を浴び、株高を後押しすることになるだろう。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(あめみや・きょうこ)
SBI証券 投資情報部 シニア・マーケットアドバイザー。元カリスマ証券レディ。日興証券時代は全国トップの営業実績を持つ。ラジオ短波(現ラジオNIKKEI)、長野FM放送アナウンサー、『週刊エコノミスト』(毎日新聞社)記者、日経CNBCキャスター、テレビ東京マーケットレポーター、ストックボイスキャスターなどを経て現在に至る。
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