【特集】今そこにある危機、空き家レスキュー「マンション再生関連」は株価も緊急発進へ <株探トップ特集>
国土交通省では、築40年を超える物件は17年末の約73万戸から10年後には185万戸まで拡大すると予測。欧米は住宅流通の7~9割が中古住宅だが、日本は15%に過ぎず、それだけに関連企業にはビジネスチャンスがあるとみられている。
―深刻視されるマンションの空き家問題、これを商機と捉える銘柄群をクローズアップ―
マンションの空き家問題が深刻化している。日本では1970年代からマンションの供給が増加し、今後は耐用年数といわれる築40年を超える物件が一段と増える見通し。戸建てでは所有者が通常1人のため建物を解体して土地を売却するといった選択肢もあるが、他人と共有するマンションではこうした方法はほぼ不可能で、空き家につながる要因となっている。少子高齢化に伴う人口減少も問題に拍車をかけており、 マンション再生が社会的課題として浮上している。
●築40年超の物件は今後拡大の一途
空き家がもたらす悪影響は、建物の老朽化による景観の悪化や不法侵入のリスクなど多岐にわたるが、マンションではこれらに加えて区分所有者の高齢化が進み、空き家率が高まると管理組合が維持できなくなることが大きな問題となる。マンションは通常10~15年に一度、全体の不具合や劣化を点検・補修・修理する大規模修繕を行うが、空き家が増えると必要な経費を積み立てることができず、修繕が先延ばしになるか局所的になることで劣化が早くなるとともに資産価値が低下し、賃貸であっても厳しい物件に転じやすい。
こうした問題は都市部でより深刻で、東京都は現在開かれている議会に「マンションの適正な管理の促進に関する条例」を上程。これは管理組合や関係事業者などの責務・役割を明確化することや管理状況の届け出を義務化することなどが主な内容で、これにより負のスパイラルに歯止めをかけたい考えだ。このほかの自治体でも、大阪府が2017年にマンション管理適正化推進制度を創設したり、横浜市が18年から建て替え合意形成支援に乗り出したりといった取り組みが実施されている。
国土交通省では、築40年を超える物件は17年末の約73万戸から22年末は約129万戸、27年末には約185万戸、37年末には約352万戸まで拡大すると予測している。欧米では住宅流通の70~90%が中古住宅(戸建てを含む)だが、日本はわずか15%。世界的にみて拡大の余地は大きく、マンション再生を手掛ける企業はビジネス機会が広がりそうだ。
●GAテクノ、ラ・アトレなどに注目
これまでの日本の住宅市場では新築志向が強かったものの、最近では内装をリフォームすれば新築と変わらない住み心地を得られるうえ、新築を買うより安く済むといった中古マンションの利点に関心を寄せる人が増えてきている。新築志向から脱却するには中古住宅の流通市場を整備することが不可欠となるが、その一環として老朽化した建物を建築当初の性能に戻す比較的小規模な改修を意味する「リフォーム」や、建物の持つもともとの性能以上に新たな付加価値を加える「リノベーション」への需要が拡大することが予想される。
GA technologies <3491> [東証M]は3月13日、19年10月期の連結売上高見通しを従来の326億6300万円から366億500万円(今期から連結財務諸表を作成しているため前期との比較なし)に引き上げた。主な要因は中古マンション流通プラットフォーム「RENOSY(リノシー)」の新規会員数が当初見込みに比べて拡大したことに伴い、販売件数が増加したこと。なお、営業利益や純利益は従来計画を据え置いており、広告宣伝費や事業拡大のための人件費を先行投資するとしている。
ラ・アトレ <8885> [JQG]は2月14日、19年12月期通期の連結営業利益が13億6400万円(前期比14.0%増)になる見込みだと発表した。従来の戸別リノベーションマンション販売業務に加え、販売価格帯別にシリーズ化した1戸1億円を超える「100Million-Renovation」や2億円を超える「200Million-Renovation」の販売拡大に注力する方針。同日に公表した中期経営計画では最終年度となる21年12月期の営業利益目標18億5400万円を掲げた。
プロパスト <3236> [JQ]は1月15日、19年5月期第2四半期累計(18年6-11月)の単独営業利益が7億4000万円(前年同期比5.6%増)となったと発表。賃貸開発事業が大きく伸びたことが業績を押し上げたほか、中古の収益ビルをバリューアップしたうえで売却するバリューアップ事業が堅調に推移したことが寄与。同社のバリューアップ事業は少額のバリューアップで効果的に付加価値を高めることで、短期間での売却及び資金回収を図っている。
外装リフォームを手掛けるエムビーエス <1401> [東証M]は1月11日、19年5月期第2四半期累計(18年6-11月)の単独営業利益が1億6000万円(前年同期比3.9%減)にとどまったと発表した。ただ、これは西日本豪雨や度重なる台風の影響による災害への対応に伴う費用などが発生したため。劣化した建物の外壁の美観を再現し環境への耐性を強化するサービス「ホームメイキャップ」の売り上げは堅調に推移しており、通期の営業利益見通しは従来の4億500万円(前期比30.1%増)を据え置いた。
このほか、「リノベーションで日本の住宅を変える」との目標を掲げるスター・マイカ <3230> 、中古マンション再生事業(リノヴェックスマンション事業)を展開するインテリックス <8940> などの動向にも注目しておきたい。
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