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【特集】KLab Research Memo(4):「キャプ翼」の通年寄与等により海外売上高が大きく拡大

KLab <日足> 「株探」多機能チャートより

■決算動向

1. 2018年12月期の業績
KLab <3656>の2018年12月期の業績は、売上高が前期比22.0%増の32,673百万円、営業利益が同2.1%増の4,995百万円、経常利益が同3.0%増の4,997百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同17.8%減の2,570百万円と増収及び営業・経常増益を実現し、過去最高の売上高、営業・経常利益を更新した。また、修正予想(2018年11月8日付)に対してもすべて上回る着地となっている。

売上高は、「スクフェス」が期間経過に伴って減収(自然減)となったものの、2017年にリリースした「キャプ翼」※1及び「シャニライ」※2が通年寄与したことに加え、「ブレソル」が好調に推移した。特に、「キャプ翼」が国内版及びグローバル版ともに大きく拡大。FIFAワールドカップロシア大会の開催が追い風となるなかで、多言語化※3や積極的なプロモーション展開、効果的な運営施策(各国代表の最新公式ユニフォームを着用した選手たちを配信)などが奏功した。海外売上高が11,508百万円(前期比129.3%増)と大きく拡大し、海外売上比率が35.2%(前期は18.7%)に高まったのも、「キャプ翼」グローバル版によるところが大きい。また、3周年を迎えた「ブレソル」についても、国内版及びグローバル版ともに過去最高の売上高を更新しており、リリースから一定期間経過後も成長を持続できているところは、運用力に長けた同社ならではと言える。

※1 国内版は2017年6月配信開始、グローバル版は2017年12月配信開始。
※2 「うたの☆プリンスさまっ♪ Shining Live」の略。国内版は2017年8月配信開始、グローバル版は2018年1月配信開始。
※3 配信開始時の6言語対応(英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語、繁体字中国語)に加えて、2018年6月からはアラビア語、ブラジルポルトガル語を追加。


一方、新作タイトルについては、開発スケジュールの変更により、2本の共同開発タイトル「ガルパン」※1及び「マジバト」※2をリリースするにとどまった(当初計画では3本~5本を想定)。厳しい市場環境(ヒット作を出すのが難しい状況)を鑑み、より完成度を高める必要があるとの判断から、ブラッシュアップのための開発工数を追加したことが理由である。

※1 「ガールズ&パンツァー あつまれ!みんなの戦車道!!」(2018年8月3日リリース)。(株)バンダイナムコエンターテインメントとの共同開発。
※2 「幽☆遊☆白書100%本気(マジ)バトル」(2018年8月28日リリース)。アクセルゲームスタジオ(2018年12月にアクセルマーク<3624>に吸収合併)との共同開発。


損益面では、「労務費」や「外注費及び業務委託費」、「使用料及び支払手数料」※1の拡大等により売上原価率が67.7%(前期は64.3%)に上昇※2。販管費も「人件費」※3や「広告宣伝費」※4の増加等により拡大したものの、増収により営業増益を確保した。営業利益率は15.3%(前期は18.3%)に低下したが、積極的なプロモーションやイベント出展による「広告宣伝費」の増加、外部リソースの活用に伴う「外注費及び業務委託費」の拡大は計画どおりであり、利益率の低下も想定の範囲内と言える。

※1 キャラクターや楽曲等にかかる版権使用料及びアプリプラットフォーム手数料など。
※2 原価率の上昇は、業績悪化時を想定した外注比率の向上や有力な他社IPの活用などに伴うものであり、同社の戦略的な意図(事業としての安定性と成長性の確保)を反映したものと捉えることができる。
※3 2018年12月末の従業員数は597名(前期末は514名)に増加。2017年12月期第3四半期より人員増強フェーズに移行した成果と言える。
※4 「キャプ翼」のプロモーション費用のほか、「東京ゲームショウ2018」、「Anime Expo2018」(アメリカ ロサンゼルスで開催)及び「JapanExpo2018」(フランス パリで開催)への出展費用など。


一方、親会社株主に帰属する当期純利益が減益となったのは、特別損失(合計958百万円)を計上したことが理由である。その内訳は、1)当初予定していた収益を見込めなくなった一部ゲームタイトル(ソフトウェア資産)の減損損失178百万円、2)開発中タイトル「ラピスリライツ」の開発方針変更※に伴う固定資産の除去による損失568百万円、3)同社が保有する投資有価証券の株価下落に伴う評価損失211百万円となっている。

※ 日本及び中国大陸への展開を予定するに当たって、今後使用する見込みのない固定資産(ソフトウェア仮勘定を含む)を除去したもの。


財務面では、「現金及び預金」が前期末比29.1%減の4,749百万円に減少したものの、ゲーム開発の進行等に伴って無形固定資産(ソフトウェア仮勘定等)が同46.6%増の5,116百万円に増加したことから、総資産は同3.4%増の19,245百万円に拡大。一方、自己資本は内部留保の積み増しにより前期末比15.1%増の14,450百万円に大きく拡大したことから、自己資本比率は75.1%(前期末は67.4%)に上昇している。

2. 四半期業績の推移
四半期業績の推移を見ても、「キャプ翼」の国内版(2017年6月)及びグローバル版(2017年12月)のリリースにより、2017年12月期の第3四半期から第4四半期にかけて売上高は大きく拡大。2018年12月期に入ってからも高い水準を維持してきた。特に、第3四半期には過去最高の売上高(四半期ベース)を達成。前述のとおり、「ブレソル」(国内版及びグローバル版)が3周年施策及び「千年血戦篇」のキャラクター販売により好調に推移したことが理由である。第4四半期は、その反動により、前四半期比で減収になったものの、その他の既存タイトルが想定以上に好調であったことや新作タイトル「マジバト」の四半期寄与、中国大陸・繁体字圏向け「BLEACH」のリリース等により、計画を上回る着地となった。

海外売上高の四半期推移を見ると、「キャプ翼」グローバル版が想定以上に拡大したことにより、2018年12月期の第3四半期には30億円を超える水準に到達した。第4四半期も「ブレソル」及び「キャプ翼」の反動減を、中国大陸・繁体字圏向け「BLEACH」がカバーしたことで、高い水準を維持している。

一方、費用面では、「労務費及び人件費」がやや増えているものの、営業利益率は高い水準で推移してきた。ただ、第4四半期の営業利益率が若干低下しているのは、第4四半期の売上が減少する一方で「労務費及び人件費」が固定的に計上されていたことが主因であり、これは2017年第3四半期からの人員増強フェーズを反映したものとして捉えることができる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)

《SF》

 提供:フィスコ

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