【特集】富田隆弥のチャート倶楽部2019スペシャル <新春特別企画 第1弾>
株式評論家 富田隆弥
「波動に亀裂、気を引き締める2019、2万2000円~1万4000円」
ここではチャート面から2019年相場を予測するが、2018年末に厳しい調整を入れたマーケット。日経平均株価のほかNYダウ 、NASDAQ 、ドイツDAXなど主要国の株価は軒並み上昇波動に亀裂を入れた。これは2年間のトランプ相場に亀裂が入ったことを意味し、10年間の過剰流動性相場の亀裂につながりかねないものである。2019新年はそうした見方を念頭に、気を引き締めて臨むことになりそうだ。
「猪突猛進」の亥年ではあるが、「戌亥の借金、辰巳で返せ」という格言もある。無闇に攻めず、タイミングを見計らうことがポイントになるだろう。
●トランプ相場、アベノミクス相場に赤信号
1年前の当欄(チャート倶楽部2018)で、日経平均は「新春に調整2万1000円、5月に高値2万5000円、年後半に調整1万9000円、場合によっては1万7500円模索」と乱高下を想定した。結果は、高値の時期が後ズレしたものの、新春と年末は想定したような動きとなり、特に年末の急調整はチャートで“懸念”を募らせるものになった。
どのような懸念か。チャートには10年間の上昇相場で週足や月足に過熱信号が多く出ており、10年目の天井示現とそこからの崩れである。
日経平均は10月に2万4448円高値をつけたあと、12月26日に1万8948円まで22.5%の調整を入れ、週足は2万2000円台に集まる13週、26週、52週の各移動平均線を割り込み、16年6月の1万4864円安値から引く下値抵抗線も割り込んだ。つまり、週足は「陰転」を明確にし、16年11月から始まった2年間のトランプ相場に終止符を打ったことを意味する。
月足では、12月26日の1万8948円安値が60ヵ月移動平均線や2012年10月安値から引く下値抵抗線に差し掛かり、かろうじて下げ止まった。ただ、リーマンショックから10年、月足チャートはホップ・ステップ・ジャンプと三段上げを描き、三段目で大きく腰を伸ばしている。そんな状況で12ヵ月移動平均線(2万2289円)や24ヵ月移動平均線(2万1285円)を明確に割り込んでいる。これでは「陰転懸念」は拭えず、2万2000円ラインを突破するまでその懸念は付きまとうことになる。逆に、12月26日安値1万8948円をこの先割り込むことがあれば、月足の「陰転」が明確となり、6年間のアベノミクス相場と10年間の過剰流動性相場の終焉リスクが台頭する。新年相場では「1万8948円」が重要な下値ポイントとなろう。
●流れに従う
チャートの「陰転」をまず取り上げたが、相場で最大の材料は「需給」であり、下げ相場では「売り方優位」の地合いであるということ。裁定買い残が5578億円(12月21日現在)と9月末の2兆5628億円から大きく減少しているほか、日経225ベースのPERが10.7倍、PBRが0.99倍まで低下するなど底値信号も出てきているが、それらを注目材料にできるのは日経平均が好転の兆しを見せる2万2000円台を回復してからだ。「材料はあとから付いてくる」と言われるように、下げ相場になると良くない材料が次々に出てくるもので、売り方有利の地合いが続いてしまう。
いまマーケットには多くの懸念要因がくすぶっている。トランプの自国第一主義、米中貿易摩擦、世界景気の減速観測(FRB利上げ打ち止め)、中国の経済&金融懸念、ブレグジット問題、欧州政治リスク、ファーウェイ製品排除、IT企業への課税(デジタル課税)、米国長短金利の逆転、ドル安(円高)懸念などは言うまでもなく、さらに株価、債券、商品市場の下落に伴う運用損失拡大(ヘッジファンド、年金機構等)、そして、信用リスク増大(住宅ローン、消費者ローン、自動車ローン等)など、相場下落に伴う不安の連鎖も懸念される。
上昇相場のときは「イイとこ取り」で懸念要因も買い材料にしてしまうが、逆に下落相場では好材料が出て株価が上げても戻り売りのポイントにするし、損失拡大に伴う良からぬ材料が次々と出てきて「売るから下がる、下がるから売る」という悪循環に陥りかねない。それが相場の常である。だからこそチャートでは「流れ(トレンド)に従う」ことが基本であり優先される。
もう一つ懸念を付け加えておく。日銀、FRB、ECBという中央銀行の政策カードが乏しいことだ。10年前のサブプライムショック、リーマンショックから復調させるために、世界の中央銀行は未曾有の金融緩和と資産購入を実施してきた。FRBは利上げに踏み切り「利下げ余地」を有するものの、そのカードの枚数はわずかでしかなく、ECBはまだ資産買い取り終了を打ち出した段階で、日銀に至ってはいまだに金利ゼロで資産買い取り(ETF、国債)をジャブジャブに行っている。
10年前と中央銀行の内情は大きく異なっており、このような状況下でもし「世界同時株安」を強めたらどうするのだろうか。大きなお世話かもしれないが、月足チャートはそういった懸念を示唆しながら新年を迎えることになる。
●タイムスケジュールと季節要因
2019新年は注目スケジュールが多くある。前半だけをみても1月は米国ねじれ議会開幕、日米物品貿易協定(TAG)の交渉、英国EU離脱法案の採決、ダボス会議、FOMC、2月は米国の対中関税90日間猶予期日、3月は29日が英国EU離脱期日で、日本は年度末を迎える。4月は統一地方選、4~5月に皇室行事(10連休)、7月は参院選(衆参同時?)と続く。そして、10月に消費税10%が始まる。
マーケットがなかでも一番注目しているのは米中貿易戦争の行方だろう。米中が合意決着するなら相場は好転に向かうこと可能だが、自国第一主義のトランプと習近平がスンナリ合意するかは疑問だけに、貿易交渉の結果とチャートの好転(2万2000円回復)を見極めねばならない。合意に至らなければマーケットの“懸念”は延長される。
季節的な株価習性としては、新春の1~2月に先物売りが出やすく、年度末(期末)の3月と新年度入りの4月に株価は上昇しやすく、ボーナス月の6月に高値をつけ、7~8月は夏休みとなり、秋の9~10月に調整安値をつけ、そして年末にかけて戻すというパターンがアノマリー(経験則)で知られている。
こういったタイムスケジュールとアノマリーを重ねながら、今回も日経平均の予測をしてみたい。
●軟調地合い、1万4000円も
2019年はやはり乱高下すると見ているが、日経平均の流れとしては右肩下がりで下値1万4000円模索もあり得ると見る。
まず新春の1~2月は、18年終盤の余韻もあって発会当初は2万円接近もあり得るが、亀裂を入れた地合いを覆すには至らず再び安値1万9000円を試すだろう(本稿は12月27日執筆)。その後、3月、4月と1万8000円~2万円ゾーンでもみ合う。一時的に安値を更新するものの、しばらくは落ち着きを取り戻すように往来相場を見せるだろう。
だが、5月、6月は再び下値模索となり1万7000円近辺に沈み、参院選を控えた7月に1万8000円台へ上昇するが、戻りは選挙のところまで。
その後は消費税10%を懸念し8月、9月と軟調になり、10月に1万5000円~1万4000円への突っ込みを想定する。
11月、12月に反発して2019年を終えるが、翌2020年に不安を持ち越すことになる。2019年はこのように厳しい展開を想定しておく。
●大きいFANGプラス陰転の影響
何はともあれ世界の屋台骨である米国市場がカギを握るのは間違いなく、NYダウとNASDAQのチャートも日経平均同様に陰転を示唆し、新年は「世界同時株安」を牽引する可能性がある。
なかでも懸念されるのは世界のマネーを吸収している「FANGプラス」の崩れだ。運用難に苦慮するヘッジファンドや各国年金などがこぞってマネーを委ねているが、アップル、グーグル(アルファベット)、アマゾン、フェイスブック、エヌビディアなど軒並みチャートは下値抵抗線を割り込み調整入りを示唆している。商品は異なれど、マネーの一極集中はサブプライム債に集中した11年前の状況と似ている。
原油価格(WTI)の急落や、債券市場の軟調もあって運用機関によっては「破綻」するところが出てきてもおかしくなく、新年はそういったニュースが出る度に不安が助長されかねない。
●ヘッジETFも有効
本来なら元気に新年展望を語るべきでところだが、慎重なものを並べてしまい誠に申し訳ないと思っている。だが、チャートの流れに逆らうことなく、時として「休むも相場」のスタンスを申し上げるのも自分の役目だと心得ている。
注目株としては、株価が大きく下げ、低PER、低PBRになっている宮地エンジニアリンググループ <3431> 、日本板硝子 <5202> 、星和電機 <6748> などをマークしている。ただ、日経平均など全体が下落する時は全面安になりやすく、買いはタイミングが大事になってくる。新年は春先と年後半の突っ込み局面が狙い目になるだろう。そして、欲をかかずに見切りを含めて売却は機敏に行動することも必要になる。
上場しているETFには日経平均の動きに連動するものやNEXT FUNDS 日経平均ダブルインバース・インデックス連動型上場投信 <1357> [東証E]のように、日経平均が下げると逆に上昇するものもある。空売りや先物、オプションなど下げ相場に対応できるものあるが、このインバースも十分にヘッジとして使えよう。上場ETFは小口で売買でき、返済期日もなく、普通株と同じように売買できるので個人投資家には最適と考える。先安懸念漂う地合いではこのようなETFの活用も有効だろう。
(追記:チャートの基本感) チャート分析にもさまざまな方法があり、私の持論はまずトレンド(流れ)に従うこと。それが基本。なぜなら相場の最大の材料が「需給」であり、景気や業績などファンダメンタルズは同じでも、上昇基調なら買い方有利、下げ基調なら売り方有利となるからだ。そのうえでテクニカル指標や季節要因を加味して転換点などのタイミングを計り、そこにファンダメンタルズ(外部要因)がどのように影響するかを想定していく。チャートとテクニカルをどのように活用するかは人それぞれだが、トレンドに沿った対応を心がけてほしいと願っている。
(2018年12月27 記)
情報提供:富田隆弥のチャートクラブ
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