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【特集】馬渕治好氏【日経平均の上昇加速、年末ラリー突入の確度】(1) <相場観特集>

馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)

―米中貿易摩擦への懸念後退、強気相場に死角はあるか―

 3日の東京株式市場はリスクオンの流れが継続、日経平均株価は7連騰と気を吐いた。一時2万2700円近くまで上昇、10月18日以来1ヵ月半ぶりの高値圏まで水準を切り上げている。米中貿易摩擦問題の足かせが外れたわけではないが、これまで緊張に途切れのなかった両国の通商交渉が久しぶりに緩和する方向に動いたことで、マーケット心理は一段と強気に傾いた。果たしてこれは年末ラリーの入り口となるのか。物色の方向性も含め先読みに定評のある市場関係者に意見を聞いた。

●「2万3000円超え視野も中期下値リスク」

馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)

 米中首脳会談では米国側から対中国追加関税の発動猶予が出たことで、両国間の通商摩擦問題に対する行き過ぎた警戒感が後退、日経平均はリスクオンの流れの中で一段と上値を追う形となった。ただ、米中首脳会談については事前に何らかの形で合意がなされるとの見方が支配的だったこともあり、きょうのザラ場の高値形成(2万2698円)でいったんは織り込んだ公算は小さくない。

 もっとも、日米とも企業収益と照らし合わせた場合はまだ割安圏に位置する。したがって、日経平均は上昇一服後に再上昇に転じ、2万3000円大台に歩を進める場面もありそうだ。米中貿易摩擦問題の緩和以上に株価に貢献したのは前週のパウエルFRB議長の発言だ。利上げ停止が前倒しされるという観測がアナウンスされたことは、投資家心理に強いプラスのインパクトを与えた。しかし、パウエル氏にすれば本来の意思とは違う形でハト派寄りに行き過ぎた解釈だった可能性もあり、今週5日に予定される同氏の上院での議会証言でその修正がなされた場合は、全体相場に下落圧力が働く可能性も念頭に置いておく必要がありそうだ。

 全体相場を中長期視野で見た場合はまた景色は異なる。リスク選好の流れに乗ったとしても10月2日の年初来高値2万4448円(ザラ場ベース)を抜くほどの力はない。つまり、2番天井形成から再び下値を探る展開が想定され、来年前半までに日経平均は2万円大台を割り込むような深押しもあり得るとみている。

 外国為替市場では1ドル=113円台を中心とするボックスゾーン往来が続きそうだ。先週を振り返ってドルはオーストラリアドルやニュージーランドドルなど多くの通貨に対し弱い動きをみせたが、円はそのドルに対しても弱かった。目先は日米の金利動向よりもリスクオンの流れがそのまま円売りを促している状況といってよい。逆に言えば今後、米長期金利が再び上昇に転じても、円安は進行しにくいというパターンが顕在化する可能性もある。ドル円相場の東京株式市場への影響は中立的なものとなろう。

 なお、当面の物色対象としては、国土強靱化など政策に乗る建設セクターで大林組 <1802> や大成建設 <1801> などゼネコン株に見直しの流れが来る可能性もある。また、米中摩擦問題への警戒感が緩和されたことなどを背景に、コマツ <6301> などの建機やファナック <6954> など工作機械株が買い直される余地がある。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(まぶち・はるよし)
1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米MIT修士課程修了。米国CFA(証券アナリスト)。マスコミ出演は多数。最新の書籍は「投資の鉄人」(共著、日本経済新聞出版社)。日本経済新聞夕刊のコラム「十字路」の執筆陣のひとり。

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