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【特集】原油安が止まらない――50ドル割れ目前“WTI”、近づく分水嶺その先 <株探トップ特集>

10月初旬76.90ドルの高値を付けたWTIは、11月28日には一時50.06ドルまで下落。景気減速懸念や原油安を望むトランプ米大統領の発言などが背後にある。

―10月以降3割下落も12月OPEC総会転機に、トランプ発言不透明要因に―

 29日の東京株式市場は日経平均株価が前日比85円高の2万2262円と5日続伸した。前日のNYダウが大幅高となったことが好感された。しかし、10月以降の急落が市場の関心を集めている原油相場 は、依然下げ止まらず軟調地合いが続く。米原油の在庫増など需給悪化や世界景気の減速などが懸念されている。そんななか、12月6日開催の石油輸出国機構(OPEC)総会が近づいてきた。市場では同総会が原油相場の転機となるとの見方も出ている。

●WTI価格は50ドル割れへ、ヘッジファンドなど投機筋が売る

 原油相場の軟調地合いが続いている。原油価格の指標であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)は春先以降、上昇基調を強め10月初旬に76.90ドルの高値を付けた。しかし、10月以降は一転急落しこの日の時間外取引で50ドルを割り込む動きを見せている。10月高値から30%を超す急落を演じている。夏場以降、需給引き締まり観測から強含みで推移していた原油が大幅安となった要因としては、「中国を含む世界的な景気減速懸念が原油需要の見直しを迫った」、「米中貿易摩擦への懸念もマイナス要因に働いた」などの見方が出ている。ヘッジファンドなど投機筋の売りも指摘されている。

●「イラン制裁の適用除外」、「カショギ氏殺害事件」が原油安促す

 とりわけ、原油相場の強気派にとって誤算となったのは、11月に予定されていた米国によるイラン制裁の再発動が、日本を含む8ヵ国・地域に対して180日間の適用除外が認められたことだ。これに伴い、原油市場の供給不安が後退した。

 また、10月初旬に発生したサウジアラビアによる著名ジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏の殺害事件も原油価格下落の一因となったとみられている。「サウジアラビアとロシアは秋口以降、減産を摸索している。しかし、この減産にサウジが踏み切れない要因として米国のトランプ大統領の影響がある」(市場関係者)という。カショギ氏の殺害事件で、米国にはサウジアラビアとの関係を見直すべきだとの論調が共和党の内部からも浮上した。しかし、サウジアラビアとの関係をトランプ大統領は維持しようとしている。その一方、トランプ大統領は「原油価格は安くあるべきだ」とツイッターに投稿し原油高を強く牽制している。「もしサウジが減産を表明すれば原油価格の上昇を促すことになる。その場合、トランプ氏はサウジ擁護の姿勢を転換しかねない。このため、米国との関係を考慮すればサウジは減産に踏み切れない」(同)との見方が原油価格の下落に拍車をかけたとみられている。

●米シェール企業の経営も厳しさ増す、トランプ政権も減産容認か

 しかし、「WTI価格が50ドルを割り込む水準になれば米国のシェールオイル企業にも経営が厳しいところが出てきかねない。トランプ氏も、原油価格の下げ止まりを容認する水準に入りつつあるとみていいだろう」とフィリップ証券の庵原浩樹リサーチ部長は指摘する。また、原油価格はサウジを含む中東産油国の財政状況も懸念する水域に入りつつある。このため、「来月6日のOPEC総会で減産が決まるかどうかが焦点となる」(庵原氏)との見方が浮上している。

 また、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの芥田知至主任研究員は「OPEC総会では100万~140万バレルの減産が決定されるとの観測が出ている。100万バレルの減産が決まれば原油安に歯止めがかかることが期待できる。もし140万バレルの減産なら反発基調を強める展開が見込めるかもしれない」という。

●来春以降はイラン制裁が再度、焦点に浮上

 100万バレルの減産を基準に原油価格は上下に振れる可能性があるというわけだ。芥田氏は、「来年2月末頃までの原油相場のレンジは40~60ドル」と予想しているが、相場は目先弱含みの基調にあるとみる。一方、庵原氏は米中首脳会談の行方などに左右される面はあるものの、「世界景気の減速懸念などの織り込みを経て原油価格はここから反発に転じる」とみている。

 当面、原油相場は神経質な展開も想定されるが、来年の春先以降は再び強含むとの見方は少なくない。来年5月頃には「延期されたイラン経済制裁の猶予期間が切れ、需給の引き締まりが再び意識されることになる」(芥田氏)からだ。

●原油反発なら国際帝石など、軟調続けば原油安メリット株に妙味

 いずれにせよ、原油相場はこの年末から年始にかけて転換点を迎えそうだ。来月のOPEC総会を契機に原油価格が下げ止まり反転するようなら、国際石油開発帝石 <1605> や石油資源開発 <1662> 、JXTGホールディングス <5020> など石油関連株や三菱商事 <8058> など商社株、日揮 <1963> などプラント株が反発に転じそうだ。

 原油価格の低迷が続く場合は、JAL <9201> など空運株、日本通運 <9062> など陸運株、東京電力ホールディングス <9501> など電力株といった原油安メリット株 が引き続き注目を浴びることが予想される。

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