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【特集】すかいらーく“プラ製ストロー卒業宣言”で開く扉、脱プラ加速で関連株脚光 <株探トップ特集>

すかいらーくのプラスチック製ストロー廃止宣言をきっかけに、株式市場では“脱プラ”が脚光を浴び始めている。

―動き出した製紙・化学メーカー、環境省「プラスチック資源循環戦略」後押し―

 ■「脱プラ」加速、動き出した製紙・化学メーカー

 “脱プラスチック”に向けての動きが、ここにきて急速に進展している。環境省は19日、「プラスチック資源循環戦略(素案)」を示し、脱プラ政策を一気に進める姿勢をみせている。企業の取り組みも一段と加速してきた。8月17日、すかいらーくホールディングス <3197> は2020年までに全業態でプラスチック製ストローの使用を順次廃止することを発表、これを受けて株式市場でも「脱プラ」関連銘柄が動意したことは記憶に新しい。本格的に動き出した脱プラスチックへの動き、現状と関連株の動向を追った。

●すかいらーくHD廃止発表でインパクト

 すかいらーくHDは、まず全国に約1370店を展開するガストにおいて、プラスチック製ストローの使用を今年12月までに廃止すると発表。株式市場では脱プラスチックによる「紙ストロー導入拡大」の思惑から大手製紙メーカー株などに注目が集まった。ただ、環境に重大な負荷をかけているのは、当然のことながらプラスチック製のストローだけではない。自動車の部品をはじめ、さまざまな工業製品でもプラスチックが使用されており、ストローのように紙で代替できないものが多いのが実情だ。とは言え、日常で使用する身近な製品を廃止するという発表は、脱プラの象徴として十分なインパクトを与えた。

●30年までに6割リサイクルまたはリユース

 環境省の「プラスチック資源循環戦略」の素案によれば、「2030年までにプラスチック容器包装の6割をリサイクルまたはリユース」することを目指すとしており、脱プラスチックへむけた動きが加速しそうだ。同素案によると、プラスチックの有効利用は日本においては一定の水準にあるとしつつ、世界全体でみると「このままでは2050年までに魚の重量を上回るプラスチックが海洋環境に流出することが予想される」としており、地球規模での環境汚染に懸念を示している。

 ただ、この素案については、6月に開催されたG7サミット(主要7ヵ国首脳会議)において、日本が海洋プラスチック憲章に署名を行わず、批判を受けたことが背景にあるとみる向きも少なくはない。これについて、環境省では「この戦略を作ろうというのは既に6月以前から進めていた。6月に第四次循環型社会形成推進基本計画を閣議決定しており、その計画に基づいてたんたんと進めている」と答える。

●積極姿勢の王子HD、日本紙

 脱プラの象徴になった紙ストローに関しては、すかいらーくHDの発表に対し株式市場でも製紙メーカー株を中心に反応し、その関心度の高さを示した。また、プラスチック同様の機能をもち、廃棄後に土や海水中などの微生物に分解、最終的には水や二酸化炭素になる「生分解性プラスチック」の開発も製紙や化学メーカーなどで進展しており、こうした動きも注目される。

 王子ホールディングス <3861> の株価は、8月後半には700円近辺だったものが10月9日に861円まで買われ年初来高値を更新。その後は、全体相場の急落につられる形で調整を強いられるが、現在も700円台中盤で頑強な動きをみせている。同社は、9月20日に「地球環境に配慮した生分解性プラスチックの開発および更なる機能を加えた開発を加速させる」と発表し、時流を捉えた方針を示した。

 また日本製紙 <3863> は8月1日付で、循環経済の実現に貢献する素材である「紙」の利用シーン拡大へむけて、グループ販売戦略本部に「紙化ソリューション推進室」を新たに設置。「紙でできることは紙で。」を合言葉に新製品の開発を推進する。こうしたなか、9月19日には四国化工機と共同で、固形物・長繊維・高粘度充填に対応しつつ、常温保存のできる新コンセプト紙容器無菌充填システム「NSATOM」を開発、19年度より投入すると発表した。脱プラスチックという潮流のなか、樹脂製に代わる容器として今後注目を集めそうだ。

 ここにきて、国際的な原料高などから値上げを発表している製紙メーカーだが、暗雲漂う世界経済を背景にした円高傾向も味方となる。大手製紙3強の一角・大王製紙 <3880> に加え、6月に東証1部に直接上場した国際紙パルプ商事 <9274> にも注目したい。同社は紙専門商社だが、ストローなど紙加工業にも進出したいとの意向が一部報道で伝わっている。株価は、7月11日に478円まで買われ上場来高値を更新するものの、その後は調整局面が続き、上場来安値圏の300円台で推移している状況だが、全体相場の落ち着きとともに見直し買いも期待できそうだ。

 生分解性プラスチックの利用については、前述のすかいらーくHDの発表においても、必要性がある人や、ストローがないと飲みにくい一部商品に対して「自然分解するプラスチックの素材や食材を使用した代替ストローなどの導入を検討」するとしており、今後更に関心が集まりそうだ。ある業界関係者は「(脱プラスチックという)ご時世もあり、ここにきて非常に問い合わせが多い」と語り、注目の高さをうかがわせる。

●三菱ケミHD、BioPBSで攻勢

 化学メーカーの動きからも目が離せない。三菱ケミカルホールディングス <4188> では、取材に応じ「クループの三菱ケミカルは、タイ石油公社グループとストローにも使用できる環境負荷の極めて少ない新素材を共同開発した。弊社がストローそのものを作っているわけではなく、その原料となる生分解性プラスチック・バイオPBSを製造、提供している」(広報・IR室)としたうえで、「ストローをサンプルにしたことで、一般的に使用されているプラスチックのものと、まったく遜色がないことが実際に分かっていただけると考えている。環境にやさしいうえに、用途が広く機能性が非常に高いプラスチックの開発を、今後も進めていく」(同)と話す。更に、同社は9月27日にはBioPBSを使用した紙コップを日本紙パルプ商事 <8032> から販売することも発表しており攻勢を強めている。

●カネカが生産能力増強、GSIクレオスは本格参入

 カネカ <4118> は8月7日、生分解性プラスチックの生産能力増強を発表した。「カネカ生分解性ポリマーPHBH 」の製造設備(高砂工業所)を大型化することを決定。生産能力は年間約5000トン、投資金額は約25億円で19年12月の稼働を予定しており、海洋資材や食品包装など幅広い用途での需要増に応える構えだ。また10月2日には、化学品などを扱う専門商社のGSIクレオス <8101> が生分解性プラスチック市場に本格参入すると発表。欧州大手と代理店契約を締結することで合意、輸入販売を行うとしており、同社の動向に目を配っておきたいところだ。

 化学メーカーのなかには、株価が年初来安値圏で推移する銘柄も少なくない。また、製紙株も底堅い展開をみせているとは言え、株価は全般相場の地合い悪に押され冴えない展開が続く。しかし、もはや環境負荷の大きいプラスチックからの脱却は世界的命題で、「脱プラ」へ向けた動きはスピードを増しており、関連銘柄の動向からは目が離せない状況が続きそうだ。

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