【市況】国内株式市場見通し:先物主導で戻りを試す展開
日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
■南欧政治リスク後退、米雇用統計好感
先週の日経平均は下落した。週間ベースで続落ながら下げは小幅にとどまった。週初28日は米国株式市場がメモリアルデーによる休場だったことから様子見ムードが強く、東証1部出来高は4月2日に次ぐ今年2番目の薄商いとなる10億株台に低迷するなか、北朝鮮情勢に対する警戒感が和らいだことから日経平均は小幅続伸のスタートとなった。しかし、イタリアやスペインの政局懸念などを背景に欧州株が全面安となったことから、日経平均も29日に反落した。その後、1ドル108円台後半まで進んだ円高と米国株安を受けて日経平均は30日も大幅続落し、一時心理的な節目となっていた22000円を割り込んだ。取引時間中での22000円割れは4月18日以来。31日は南欧政治リスクが一服し、買戻しが先行して日経平均は3日ぶりに反発、TOPIXも9営業日ぶりの反発となった。月替わりとなった6月1日の日経平均は一時切り返しに転じたものの、5月の米雇用統計発表を控えて、買いが続かず小反落で大引けた。米ロス商務長官によるEU、カナダ、メキシコ製鉄鋼等の輸入関税発動の発表が貿易摩擦への懸念となっていることも戻りを鈍くさせた。なお、1日の米国市場は南欧の政治リスク後退による欧州株の全面高を受けて、NYダウ、ナスダック総合、S&P500の主要3指数はそろって上昇した。注目された米5月雇用統計は失業率が約50年ぶりの低水準となったほか、非農業部門雇用者数と平均時給の伸びが予想を上振れたことから買いが先行した。
■8日メジャーSQに向けて好条件そろう
今週の日経平均は8日のメジャーSQを控えて先物に影響を受けやすい展開のなか、短期的な戻りを試す展開ともなりそうだ。5月の雇用統計とISM製造業PMIの内容が米国景気の先行きに楽観的な見方を示したことから先週末のNYダウは急反発しており、東京株式市場も買いが先行して始まりそうだ。日経平均は5月30日に75日移動平均線と200日移動平均線が位置していた節目の22000円までの調整を見たところで、目先の調整一巡感が台頭している。南欧政治リスクが後退し、6月12日で調整中の米朝首脳会談の開催に現実味が増してくる流れを受けて、先物主導でのインデックス買いが日経平均を押し上げる可能性がある。1日朝方の寄付前に財務省から発表された1-3月の法人企業統計では、設備投資増加率が前年同期比3.4%と高い伸びとなったことも好感材料として働いてこよう。ただし、休戦状態にあった米中通商協議が2日から4日にかけて控えている。トランプ政権が「15日までに関税対象となる中国製品を公表する」との報道が出るなど、米中貿易摩擦が再燃して、相場に影を落とすリスクを抱えていることには留意しておきたい。
■日経平均上昇確率が高い6月
6月は月間ベースで見ると1月に続いて日経平均の上昇確率が高い月でもある。月後半から活発化する3月期決算企業の株主総会の開催を控えて個別企業からはポジティブニュースが発信されやすい時期に入ってくる。物色面では、先週に続いて資生堂<4911>、アステラス<4503>といったディフェンシブ系大型株の強調展開が期待されるほか、先週末にかけて続伸し下げ止まり感を強めているトヨタ<7203>など輸出関連株の戻りも焦点となる。また、年初来安値更新中の日本郵政<6178>、三菱UFJフィナンシャル<8306>、SUBARU<7270>など金融、自動車の一角が下げ止まりから反発に転じてくるかもポイントだ。一方、今年に入って最大のIPO案件となるメルカリ<4385>のブックビルディングが4日から8日のスケジュールで始まる。仮条件価格が想定仮条件よりも大幅に引き上げられた結果、市場からの資金吸収額は最大で1306億円超となる。需給面での懸念もあるが、話題銘柄のIPOによる市場のセンチメント好転も期待される。
■政治イベントも相次ぐ
来週の主な経済関連スケジュールは、国内では、5日に4月家計調査、7日に4月景気動向指数、8日に1-3月期GDP改定値、4月国際収支、5月景気ウォッチャー調査の発表を控える。海外では、4日に米4月製造業受注、5日に米5月ISM非製造業景況指数、6日に米4月貿易収支、8日に中国5月貿易収支の発表がある。このほか、7日に日米首脳会談(ワシントン)、8日にメジャーSQ、8日から9日にかけてカナダでG7首脳会議が予定されている。ちなみに、5月のSQ値は22621.77円、1年前の6月SQ値は19997.63円だった。また、6月10日に行われるスイス国民投票では、スイス中央銀行にのみ通貨創造を認める金融システム改革案「ソブリンマネー・イニシアチブ」と、オンラインカジノも賭博法に適用する「新賭博法」の二つの案件の是非がスイス国民に問われる。世論調査で「ソブリンマネー」構想は否決される見通しだ。
《FA》
提供:フィスコ