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【市況】富田隆弥の【CHART CLUB】 「勢いに陰り」

株式評論家 富田隆弥

◆いったいIPO(新規公開株)のどこが堅調なのだ? 9日付の日経新聞夕刊の「日本株番付」にIPO銘柄の番付があった。今年のIPO銘柄は24社、うち公開価格に比べ時価が上昇している銘柄は22社あり、番付にはHEROZ <4382> [東証M]、RPAホールディングス <6572> [東証M]、ジェイテックコーポレーション <3446> [東証M]、アジャイルメディア・ネットワーク <6573> [東証M]…と並ぶ。見出しには「『働き方改革』関連が好調」とある。だが、上場初値と時価を比較すると、時価が初値を上回っているのはわずか5社だけ(19銘柄は初値を下回っている)。しかも、上場日天井という銘柄が5銘柄もある(SERIOホールディングス <6567> [東証M]、フェイスネットワーク <3489> [東証M]、共和コーポレーション <6570> [東証2]、HEROZ、エヌリンクス <6578> [JQ]。

◆投資家に向けて番付を出すなら「初値との比較」にすべきではないのか。上場させたら“お役御免”という業界や、“IPO好調”とやたら囃し立てるマスコミの醜態には呆れるばかり。しばらくIPOがお休み期間となるので、下げているIPO銘柄には見直し買いも入るだろうが、崩れたあとだけにアヤ戻りとの見方が必要だろう。いずれにせよ個人投資家を侮るような「IPO」には今後も注意必要だ。

◆さて、日経平均株価だが、5月2日に2万2568円高値をつけたあと動きが鈍ってきた(5月10日終値2万2497円)。為替が109円台に戻し、NYダウ平均が2万4500ドル台へ上昇していても反応が鈍い。3月安値2万0347円から一本調子で上げてきただけに調整がほしいこともあるだろう。また、今期(19年3月期)の増益率鈍化や原油価格上昇などが影響している可能性もある。

◆日足チャートは2月上旬に空けた二つの窓(2万2659円、2万3122円)を目指しているものの、「戻りは窓埋めまで」「セル・イン・メイ(5月に株を売って旅に出ろ)」などの格言もあるので、ここは少し様子見姿勢で構わないだろう。

◆カギを握るNYダウ(9日現在2万4542ドル)はドル高とWTI(原油)高にもかかわらず「イイとこ取り」で上昇基調にあるが、日足チャートは75日移動平均線(2万4731ドル)や4月高値2万4858ドルのまだ手前。好業績や好景気を背景に2万4800~2万5000ドルを目指す可能性はあるものの、昨年までのような勢いは見られない。1月高値2万6616ドルや2月高値2万5800ドルから崩れた相場で、いまはまだアヤ戻りの範疇である。リーマンショックから上昇相場10年となり、長期チャートが歴史的高値圏にあることも忘れる訳にはいかない。

(5月10日 記、毎週土曜日に更新)

情報提供:富田隆弥のチャートクラブ


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