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【特集】「大暴落」震源地アメリカ、そして日本株“下げ止まり”の時は? <株探トップ特集>

予想された調整、予想外だった下げ幅。ついに訪れた暴落が意味するものは? 市場からは「過去のショックとは異なる」の声――。

―急落でも盤石の企業業績、日経平均PERは13倍まで低下―

 史上最高値圏をまい進していたNY株式市場が乱気流に突入している。NYダウ平均は5日、史上最大の下げ幅を記録、1月末の最高値からの下落率もザラ場ベースで10%近くに達した。足もとのNYダウの波乱の背景には、米長期金利の上昇があり、その変調が世界の金融市場を揺り動かしている。株価上昇の原動力となった「適温相場」に変化はあるのか。NYダウ急落の背景と今後の見方を追った。

●「恐怖指数」は前日比2倍に急騰、先行き不透明感を嫌気

 NYダウが強烈な下落に見舞われている。6日には、前週末2日に比べ1175.21ドル(4.6%)安の2万4345.75ドルと過去最大の下げ幅を記録した。米1月雇用統計を受け米長期金利が急上昇したことで、2日のNYダウは665ドル下落。この2日間の合計では1800ドル超の下げ幅となり、下落率も10%を超え調整局面を迎えた。米国市場は年初から急激に上昇していた。それだけに「調整はいつあってもおかしくないと考えていたが、下げ幅は予想以上に大きい」と市場関係者は口を揃える。

 とりわけ、市場関係者の関心を集めたのが「恐怖指数」と呼ばれる米VIX指数の急騰だ。同指数は、ながく10前後の低迷状態が続いていた。その意味で、ゴルディロックスと呼ばれる「適温相場」を象徴する指数だったが、5日には前日に比べ2.1倍の37.32に急騰。チャイナ・ショックに揺れた15年8月以来の水準に跳ね上がった。このNYダウの下落は、日本市場に跳ね返り、6日の日経平均株価は前日に比べ一時7%安と連日の大幅安となった。

●ブラックマンデーとの類似懸念、パウエル新議長の手腕注視

 では、米株式市場急落の背景には何があるのだろうか――。足もとの米国の情勢は、「株安・債券安(金利上昇)・ドル安」のトリプル安の状況をみせている。また、米連邦準備理事会(FRB)の新議長には新たにパウエル氏が就任したばかりだ。「市場には、FRB議長がボルカーからグリーンスパンに代わった2ヵ月後の87年10月にブラックマンデーが起こったことを想起する向きもいるのだろう」と上田ハーローの山内俊哉執行役員は指摘する。そんななか、3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)に向け、パウエル新議長が市場をどうコントロールしていくかが、最大の関心事となっている。

 もっとも、「株式市場を襲っているのは、リーマン・ショックやブラックマンデーのような危機的な状況ではない。今回のNYダウ急落の背景にあるのは、株価上昇で膨らんだ持ち高調整の動きだろう」と日本アジア証券の清水三津雄ストラテジストはいう。

 米国は80年代のような貿易赤字と財政赤字の双子の赤字に苦しんでいる状況ではない。また、リーマン・ショックのように一夜にして世界経済が変調をきたす出来事が起こったわけでもない。世界的にみて、企業の業績は良くキャッシュも潤沢な状態にある。その意味で「過去のショックが襲った時と状況は異なる」と清水氏は強調する。

 足もとの金融市場の波乱は、金利上昇がショック安の契機となったところに投資家の持ち高調整が膨らみ、そこへさらにヘッジファンドなどの投機筋の売りが膨らみ相場全体の下げを加速させたとみられる。

●際立つ日本株の割安感、日米株価動向にはカイ離も

 そんななか、市場では、18年のFRBによる利上げ回数が3回か、あるいは4回になるかが関心を集めている。3月のFOMCでの利上げ見送りを期待する声も出ているが、いずれにせよ「次回FOMCを経て米国の金融政策の不透明感が薄らぐにつれ、市場は安定飛行に向かうのではないか」とフィリップ証券の庵原浩樹リサーチ部長はみる。

 同氏は、18年のニューヨーク株式市場は前半安・後半高を予想する。焦点となるのは、11月に予定されている米中間選挙だ。「トランプ政権にとって株高は中間選挙の勝利に向け欠かすことのできない要素。それだけに、株価上昇に向けて何でもやってくる可能性はある」という。こうしたなか、NYダウは「今秋の中間選挙に向け再度、最高値を更新することも見込める」と同氏はみている。

 もっとも直近では、日米の株価には差が出ることも予想される。日経平均株価の予想PERは13倍台にまで調整しており、下値不安は小さい。一方、NYダウは200日移動平均線とのカイ離が大きく、依然下げ余地はある。今後、NYダウに比べ日経平均の底堅さが目立つ展開となることもあり得る。

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