【通貨】為替週間見通し:もみ合いか、米インフレ指標やユーロの値動きを注視する展開
ドル円 <日足> 「株探」多機能チャートより
■日米株高を好感してリスク回避のドル売り縮小
先々週・先週のドル・円は下げ渋り。年初に112円台前半までドル安・円高が進行する場面があったが、日米株式は年明け後も堅調に推移したことから、ドルの下げ幅は縮小した。米税制改革法案は昨年12月22日までに成立し、法人税の大幅引き下げを含む約30年ぶりの抜本的な税制改革が実現した。しかしながら、減税効果に対する市場の過剰な期待は低下し、米長期金利は伸び悩んだことから、リスク回避的なドル売りが観測された。ドル・円は年末・年初の閑散時期にポジション調整的なドル売りが広がった関係で、一時112円06銭まで下落した。
ただ、年明け後も日米の株価は強い動きを見せており、リスク回避的なドル売りは1月3日までに一巡。4日の東京市場で日経平均株価は昨年末比700円超の大幅高となったことから、ドル・円相場は反転。5日のニューヨーク市場では米国の早期利上げ観測が広がり、ドルを買い戻す動きが広がった。5日発表された12月の米雇用統計は市場予想を下回る内容だったが、NYダウ平均は220ドル高、ナスダックは58ポイント高と強い動きとなり、米長期金利はやや上昇したことから、ドル・円は113円台前半で推移し、113円06銭でこの週の取引を終えた。取引レンジ:112円06銭-113円38銭。
■もみ合いか、米インフレ指標やユーロの値動きを注視する展開
今週のドル・円はもみあいか。米連邦準備制度理事会(FRB)による今年の利上げペースに思惑が交錯し、方向感の乏しい展開となりそうだ。また、ユーロ圏経済の回復を見込んだユーロ買いが継続するか注目される。昨年12月12-13日に開かれた連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨には、FRBによる利上げ継続方針堅持の姿勢が示されていた。反面、2月のイエレンFRB議長交代など人事刷新が予定されており、今後の金融政策に大きな影響を与えるとの見方も市場の一部にあるようだ。
このような状況下で、市場参加者は12月の米生産者物価指数と米消費者物価指数などのインフレ関連指標を点検し、FRBの金利正常化作業の進捗状況を慎重に見極めることになりそうだ。消費者物価指数は、改善基調が続いているが、今回の指標でインフレ加速の兆候が確認された場合、早期追加利上げへの期待は一層高まることが予想される。
一方、昨年末からトランプ政策への期待剥落でドルは伸び悩んでおり、対照的にユーロは金利先高観の台頭で買われるケースが目立つ。このため、ユーロ圏の11月小売売上高、11月失業率などの経済指標や欧州中央銀行(ECB)理事会議事要旨の内容次第では、ユーロ圏経済の回復基調の持続やECBによる早期利上げへの思惑がさらに広がる可能性がある。ユーロ・ドルは心理的な節目である1ユーロ=1.20ドル水準を上抜けているが、さらなる上昇(ユーロ高)が見込まれる展開となった場合、ドル高・円安が進行することは難しくなりそうだ。
【米・12月生産者物価コア指数】(11日発表予定)
11日発表の12月生産者物価コア指数は前年比+2.5%程度が市場コンセンサス。市場予想を上回った場合、成長持続を背景に早期追加利上げ期待が高まり、ドルを押し上げる見通し。
【米・12月消費者物価コア指数】(12日発表予定)
12日発表の12月消費者物価コア指数は、改善基調が続くか注目される。11月は前年比+1.7%となった。コア指数が市場予想を上回った場合、金利正常化方針を後押しする材料として好感されよう。
予想レンジ:111円50銭-114円50銭
《FA》
提供:フィスコ