【市況】【植木靖男の相場展望】 ─ 辛抱を強いられる段階か
株式評論家 植木靖男
「辛抱を強いられる段階か」
●“はなれ小島”に糧道つなぐ反発に期待
トランプ・ショックが起きた。昨年11月大統領選でトランプ氏が勝利した。あのときもトランプ・ショックだった。しかし、当時はよい意味でのショック。だが今回は悪い意味でのショックといえる。
ロシアへの情報漏洩疑惑、そしてコミーFBI長官更迭問題とキナ臭い材料がトランプ政権を覆う。こうした材料に無視を決め込み、連日ナスダック指数など高値を更新してきたが、さすがに問題の深刻化から刀折れ矢尽きたか、金融株を中心に急落した。
世界の株式市場は右へ倣えと同調し、わが国の株価も同じく急激な円高を伴って急落した。
そこで気づいたのは、この結果、日経平均株価がものの見事に罫線上、“はなれ小島”を形成したことだ。
かつて、羽柴秀吉が備中高松城を水攻めした。これは糧道を絶つためだ。ところで、いまの相場。5月8日に大きく窓を空けて450円高。その後8日間、2万円に乗せることなく高値でもみ合ったが、18日に今度は窓を空けて261円安と急落した。結果、“はなれ小島”となってしまった。この間の買い手は、このままでは全滅せざるを得ない。
このことは先行きの相場に少なからず影響を及ぼすとみておきたい。
今後、窓を埋めにいくとすれば、架橋ができて兵糧米を送ることも可能。よって反発力に期待したいところだ。
●下値はあっても1万9000円処か
さて、ショック安の背景となった米国の政治リスク。その内幕は闇であるが、これまで米国を支えてきた一大勢力と、保護主義を掲げてこれを打破しようとしたトランプ大統領との正面対決という構図にみえてしまう。
いずれが勝つか定かでないが、いずれにしても時間がかかる。この間この問題で株価が一喜一憂するのは賢いとはいえない。
税制改革、インフラ投資などが遅れるとの見方もあるが、現状、経済指標からみても景気は着実に改善しつつある感がある。むしろトランプ政策が早くに実現すれば景気は一気に過熱してしまうリスクもあろう。
政治リスクはさておいて、ここは景気の回復を評価する展開に期待したい。
為替が再び110円台に突入してきたが、一段と円高になるとしても、あと1~2円がせいぜいとみれば株価の下値も1万9000円前後がメドとなろう。金融株がどこで下げ止まるかに注目したい。
ともあれ、調整局面入りしているとすれば、まだ高値から10日と経っていない。暫くは辛抱を強いられそうだ。
2017年5月19日 記
株探ニュース